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異世界冒険は姉弟で!  作者: fuluri
第2章 サイトリー大陸
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ミゼへの旅

ソニアさんと話をしている間に、辺りが暗くなってきた。

すると、ソニアさんがイサさんに、「停めてくれ」と言った。

それに従ってイサさんが馬車を止めると、ソニアさんが立ち上がって馬車から降りた。

私たちもソニアさんに続いて馬車から降りる。



「今日はここまでにしよう。この辺で野宿するけれど、いいかな?サミ」

「あぁ、いいぜ、ソニアの旦那」

「……はぁ。じゃあ、野宿の準備をしてくれ」

「了解だ」



サミさんたちがテントをはったり、寝袋を出したりしている。

どうやらサミさんもアイテムボックス持ちだったらしい。

私たちもテントを張る。

何かあったときに離れ離れだと困るので、ふたりでひとつのテントを使うことにした。

枯れ木に火をつけて、たき火を作っていたサミさんたちが、夜も見張りをたてると言っていたので、「私たちもやりましょうか?」と言ったら、サミさんに「まだ冒険者にもなってないお嬢ちゃんたちにそんなことやらせるなんざ冒険者の恥だ」と言われた。

そこまで言われてはやるわけにもいかない。

サミさんの言葉に甘えて、しっかりと休むことにした。

……本当に、ソニアさんやサミさんたちには甘えてばかりだと思う。



「リツ、ユズカ、こちらで一緒に食事をしよう」

「あ、はい!」



ソニアさんにそう言われ、たき火の周りに座って、夜ご飯を食べる。

食べながら、サミさんたちから野宿の際に冒険者が気をつけるべきことを聞く。



「夜、自分たちだけで倒せない魔物が来た場合は、笛を吹くんだ。ピーーっ!この音だ、覚えておきな、お嬢ちゃんたち」

「この音が鳴ったら、すぐに起きて助っ人に行く。これは基本だ」

「そうでなくても、野宿の時は気を張りながら寝るといいわ。何かあった時、熟睡していては危ないから」



そう言われたとき、律が私の方をじとっとした目で見てきた。

うぅ、まぁ律の言いたいこともわかる。

私は寝るとき結構熟睡する人だ。

けど、さすがにこういう状況でそれはしないと思う。思いたい。しない、はず!

……言い切れないところが悲しい。視線が泳いでしまう。

律の目がさらにじとっとした気がする。



「くくっ、お嬢ちゃんは自信無さそうだな。まぁだんだん慣れていくさ」



サミさんは私と律の視線のやり取りを見ていたらしい。

おかしそうに笑われて、「仲が良いな」と言われた。

仲が良いのは本当だから良いけれど、このやり取りで言われるのはなんだか微妙な気持ちだ。



『大丈夫、ユズカは僕が守る』

(リト、ありがとうー!!)



リトの優しさが心に染みる。

そんな念話をリトとしていたら、みんな食事を終えたらしい。

サミさんたちはずっと歩いていたし、夜の見張りもあるので一人を残し早々に就寝する。

ソニアさんもすることもないのでもう寝るようだ。



私たちもテントに入る。

ここにお風呂はないので、洗浄の魔法をかけることにした。


《清らかなる水よ、汚れを落とし我を清めよ

―――――"清水(ライグング)"》


私の手から大きな水の球が現れ、私を包み込む。

体だけでなく、服の砂ぼこりなども落ちていく。

3秒ほどでそれは消え、私はとてもさっぱりした気分で律に笑顔を向けた。



「律もやる?」

「そうだな。柚華、お願い」

「りょーかい!」



律にも同じように魔法をかけ、律を水の球が包む。

律もさっぱりしたようで、「気持ちいいな、これ」と、笑顔になっていた。

体も服もきれいになったところで、寝袋を出して、寝る準備を整えていると、律が話し出した。



「柚華、ナルが明日には多分着くって。崖から飛び降りて馬車に乗ってるから1日以上短縮されたって言ってる」

「あ、そうなんだ!楽しみだな~」

「楽しみだけど、不安でもあるな。まさかあそこまで驚かれるほど精霊が珍しいとは思わなかった」

『ごめん、僕らもあそこまで反応されるとは思ってなかったんだ』

(ううん、リトたちのせいじゃないから、大丈夫だよ)

『ありがとう』

「でも、魔法を使うまでは何も言われなかったよね?」

「あぁ、魔法を使わなければ多分ただの動物とか、ペットだと思われるんだと思う」

『この世界には、普通の動物もいるからね。ペットもいる』

(そっか、じゃあ安心かな)

「そうだね!」

「積極的に魔法を使わなければ、多分大丈夫だ。それに隠しても、もしもの時はナルたちは力を使うだろうからあまり意味はないし」

『うん、僕もそう思うよ。それなら、最初から堂々として色々と恩恵を受け取った方がいい』

(そっか、分かった!)

「リトもそう思うって!」

「そうか、それは良かった」

「うん!せっかく異世界に来たんだから、楽しもうね!」

「じゃ、楽しむ前にしっかり休まないとな。柚華、寝坊しそうだけど」

「もう、律!私だってちゃんと起きれるよ!たぶん!」

「ははっ、そのたぶんってのがな」

「うぅっ!」



笑う律に文句をいいながら、私はだんだんと眠たくなってきて、気がついたら寝ていた。

いつ寝たのかさっぱり記憶にないが、起きたら朝だったので、おそらく熟睡していたのだろう。

私が起きたときには律はもう起きていて、朝食を食べていた。



「おはよう律」

「あれ、おはよう柚華。意外と早かったな」

「そう?」

「いつももう少し遅いから」

「そうだっけ……」



律とそんな会話をしながら、髪を手櫛ですいて、魔法で手の上に水の球を出し、顔を洗う。

化粧とかはしない派なので、朝の準備は終わる。

だって、高校生だよ?

せっかく化粧しなくても許される時期なのに、化粧するなんてもったいないでしょ?

大人になったら化粧しないと失礼になったりするって誰かに聞いたような気がするし。

……化粧する派だったら、異世界の化粧品を使ってたのかな。

どんな感じなんだろう。

そんなことを考えながら、朝食のパンとドライフルーツを取り出して食べる。



「柚華、ソニアさんがあと少ししたら行くって」

「分かった!」



朝食を食べ終わり、お水を飲む。

その後で寝袋をしまい、テントもたたんでしまって、出発する準備は完了だ。

リトとナルはどこに行ったのかと思っていたら、それぞれ私と律のポーチに入っていた。

入ってみたら居心地が良かったらしく、くーくーと寝ていた。

精霊は寝る必要はないけど、寝ないわけではないらしい。

それに律とふたりで苦笑しながら、ソニアさんのところへ行く。



「あ、おはようユズカ」

「おはようございます!」

「じゃあ、そろそろ出発しようか」

「はい!今日もよろしくお願いします、みなさん!」

「よろしくお願いします」

「はは、こちらこそ」

「今日中に着くはずだ。この辺は手こずるような魔物もそう出てこねぇし、寝ててもいいぞ、お嬢ちゃん」

「う、寝ませんよ、さすがに……」



そんなやり取りをしながら、馬車に乗り込む。

馬車が動きだし、ソニアさんが不思議そうに私たちのことを見ていたので、どうしたのか聞いてみた。



「あの、ソニアさん、どうしたんですか?」

「あぁ、ごめんね、じろじろ見て」

「いえ、それは別に大丈夫ですけど……」

「いや、君たちの守護精霊……リトとナルはどこに行ったんだろうと思ってね」

「あぁ、そういうことですか!」

「ポーチで寝ているんですよ」



ソニアさんにポーチの中を見せる。

リトが丸まってくーくーと寝ていた。

律のポーチに入っているナルも寝ていて、なんだか暖かい気持ちになって、3人で微笑みながらその様子をしばらく眺めていた。



「ふふ、かわいい」

「本当だな。なんだか和む」

「ずっと眺めていられそうだね、これは」



起こしてしまったら悪いので、眺めるのをやめて、ポーチを閉めた。

すると、ソニアさんが「そういえば」と言った。



「通貨の話をするのを忘れていたね」

「あ、そうですね。教えてください!」

「通貨は小銅貨、銅貨、小銀貨、銀貨、小金貨、金貨、大金貨、白金貨があるんだ。

銅貨は小銅貨10枚分、小銀貨は銅貨10枚分、銀貨は小銀貨10枚分、小金貨は銀貨10枚分、金貨は小金貨10枚分、大金貨は金貨10枚分、白金貨は大金貨10枚分。

でも、大金貨と白金貨はあまり使わないかな」



つまり、日本円に直すとだいたい小銅貨が1円、銅貨が10円、小銀貨が100円、銀貨は1000円、小金貨は1万円、金貨は10万円、大金貨は100万円、白金貨は1000万円くらい、ってことだね。

……はい、例のごとく後で律に聞きました。

聞いてるうちに頭がこんがらがってきちゃって……。

アイテムボックスには金貨10枚と銀貨10枚、銅貨10枚が入っていた。

……結構な大金だったみたい。

その後、ソニアさんと律が話をしているのを聞きながら、たまに私も口を挟む。



「そうか、リツは―――――なんだね」

「はい、――――――です」



そんな風に聞いていると、だんだんと眠たくなってきた。

それでもなんとか会話に参加していたのだが、暖かい日差しまで加わってくると、もうダメだ。

サミさんに、「寝ない」と言っておきながら、馬車にのって2時間もしないうちに、律の肩にもたれて寝てしまった私は、サミさんの「もうすぐ着くぞー!」という声に、やっと目を覚ましたのだった。



「……ん…?」

「おはよう柚華」

「え…?おはよう……あれ、ここどこ?」

「馬車」

「馬車……」

「ふふ、おはよう、ユズカ。よく寝てたね」

「ソニアさん……?あっ、ソニアさん!おはようございます!」

「リツにもたれて熟睡だったね」

「え、本当ですか?!ごめん律!」

「いいけどサミさんに言われた通りだったな」

「うっ!」



何故か律に頬をびよーんとつねられながら起きた。

馬車が揺れるせいで、律の肩からずり落ち、膝枕状態になっていたみたいだけど、そのせいでつねられているのだろうか。

律に理由を聞くと、どうやら頬をつねられていたのは律の八つ当たりらしい。

しかも2回目。1回目は全く起きなかったらしい。

私が寝てから休憩も1度はさんだのに、全く起きる気配もなく、律とソニアさんに暖かく見守られながら、私は熟睡していたそうだ。

さっきのリトとナルと一緒じゃないか……!

多少乱暴にでも起こしたり、馬車においていったりしても良かったのに、律は「仕方ないな」と言って、休憩中もそこから動かずに昼食を食べたらしい。

律、ごめん、ありがとう。私は優しい弟を持てて幸せだよ。



「あぁ、柚華、シェリのことも話してソニアさんが協力してくれることになったから」

「えぇっ?!いつ?!」

「さっき。柚華が熟睡してるとき」

「うん、ユズカ、よろしくね」

「よ、よろしくお願いします!」

「あと、ミゼではソニアさんの家に泊まらせてもらうことになった」

「えっ、本当?!」

「本当だよ、ユズカ」

「か、重ね重ねよろしくお願いします……!」



そんな大事な話をしているときに私は寝ていたのか……!

起こしてくれたら良かったのに!

いや、律の優しさなんだから感謝はしてるけど!

……あ、でも、私は基本聞いてるだけだから、起きていてもいなくてもあんまり変わらないかもしれない。

それなら、まぁいいのかな。うん。



そんな話をしていると、街に近づいたらしい。

小さく人の声が聞こえる。

街に入るための大きな門に人や馬車が並んでいたので、それに並ぶのかと思いきや、少し離れた小さめの門の方へ向かう。



「あっちには並ばないんですか?」

「あぁ、私はこちらの小さい門から入る許可を得ているからね。あちらには並ばずに中に入れるんだ」

「そうなんですか」



小さい方の門についた。

門番さんが、許可証と身分証の提示を求めてきた。



「ソニアさん、許可証と身分証の提示をお願いします」

「はい、どうぞ」

「はい、確かに。……ソニアさん、そのふたりは?」

「あぁ、ユズカとリツだ。こちらに来る途中で出会ってね。話しているうちに仲良くなってしまったんだ。身分証を落としてしまったみたいだから、一緒に入ろうと思ってね」

「そうでしたか。ソニアさんが言うのなら問題ないでしょう」

「ありがとうございます!」

「ありがとうございます」



ソニアさんは門番さんに信頼されているらしい。

すんなりと通してもらえることになった。

ソニアさんに出会ってなかったらもっと大変だったんだろうな、と簡単に予想がつく。

身分証がないので通行料の小銀貨2枚を払い、中に入る。

ソニアさんが払うと言ってくれたけれど、さすがにそれは申し訳ないので自分達で払った。



「じゃあ、中にお入りください」

「あぁ、ありがとう」

「門番さん、さようなら!」

「ありがとうございました」

「いえ、良い思い出ができることを祈っています」



こうして、私たちはこの世界―――サナトクリアに来てから最初の街である、ミゼヘと到着したのだった。



やっとミゼにたどり着きました。

柚華は馬車でお昼寝です。

そんな柚華を見守りながら大事な話をするソニアと律。

柚華には決まったことを分かりやすくして話せばそれで良いのです。



次は、水瀬律です。

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