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異世界冒険は姉弟で!  作者: fuluri
第2章 サイトリー大陸
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ソニアからの忠告

本日2回目の更新です。

ソニアさん達の好意により、私たちは馬車に揺られながら、ソニアさんから精霊についての話を色々と聞いていた。



「それにしても、可愛らしい動物だな、とは思っていたけれど、まさか精霊だったなんてね」

「さっき、みなさん精霊が守護についていること、すごく驚いていましたけど、そこまで珍しいんですね。俺は数は少なくてもそれなりにいるし、けっこう珍しい、くらいの感じだと思ってたので正直驚きました」

「あぁ、その認識であってるよ。けど、あの3人は精霊を見たのが初めてだからあそこまで驚いたんだろう。私もだけどね。

それにしても、双子でそろってなんてね」

「あぁ、なるほど」

「でも、何故かは分からないがここ20~30年程は、精霊を見ることが少なくなっているんだ。だから、今は精霊は……いや、"アメリア"はあまり見かけない。だから、"アメリア"はどこへ行っても目立つし、厚待遇されることも多い。そんな中、ふたりそろって精霊を連れて街を歩けば、どうなると思う?」

「すごく目立ちそう……」

「その通りだよ。いいこともあるけれど、色々と面倒も多くなるだろう。もしかしたら人さらいや盗賊、違法な人身売買なんかに目をつけられるかもしれない。それでなくとも君たちはふたりとも目立つ整った容姿をしているから目をつけられやすいだろうし、正直、とても心配だ」

「分かりました、出来るだけ気をつけます」

『そんなに心配しなくても大丈夫だ、ユズカ。僕たちはユズカとリツを護るためについているんだから』

(うん、ありがとうリト)

「暗い道とか、路地とかにはできるだけ入らないようにすること。入る場合には、周囲を警戒しながら、なるべく早くそこから出るんだ」

「分かりました!」

「気をつけます」


ソニアさんは、本当に真摯に忠告をしてくれる。

この世界の精霊や"アメリア"に対する認識も、気を付けるべきことも教えてくれた。

私は、最初に出会った人がこの人で良かったと心から思う。

いくら律がしっかりしていても、この世界の常識がないのでは限度があるのだ。

当たり前に知っているはずのことを聞く私たちに、嫌な顔ひとつしないで丁寧に教えてくれるソニアさんは、とても親切だと思う。

ソニアさんになら、シェリからの頼みのことを話してみても良いかもしれない。

……まぁ、話すかどうかは律に任せるけれど。



「それで、リトとナル……だったかな。君たちの精霊は、どんなことができるんだい?」

「うーん、まだ力のすべては見たことがありませんね……」

(リト、精霊って何ができるの?)

『そうだね、闇の精霊なら闇属性が無詠唱で自由自在に使えるんだ。精霊しか使えない魔法もある』

(普通は使えないの?)

『人間は、魔力量や適性の強さによって、使える魔法の威力や効果が限られるんだ。ユズカやリツは女神様に適性をもらったから使うのは自由自在だけれど、無詠唱だと少し威力が落ちる』

(そうなんだ……)

『それと得意属性は、普通は最初から使い方がわかる、なんてことはないんだ。ユズカとリツが特別だし、人間たちは勉強して覚えた魔法を訓練して使う。あくまで、他の属性と比べて使いやすい、というレベルなんだ』

(イメージ次第でどんな魔法でも使えるんだよね?)

『本来はそうだ。でも、人間たちは魔法を伝えていく過程で、イメージすることの大切さを徐々に忘れ、自分で考えるのではなく、本などによって伝えられている魔法とその制御を覚えて使うのが当たり前になってしまった。ユズカたちは得意属性は制御の訓練をしなくても使えてしまうから、まだピンと来ないかもしれないけれど』

(そうたんだ……なんだかもったいないね)



どうやら精霊は自分の得意属性なら自由自在にノータイムで魔法を発動できる、らしい。

しかも私たちは威力が落ちるらしいが、精霊はそんなこともない、とのことだ。

それに比べ、この世界の人間たちはイメージを意識していないからイメージするより威力が落ちるし、魔法の種類も限られる。

"アメリア"が厚待遇されるわけだ。



「ソニアさん、精霊は自分の得意属性なら無詠唱で威力が落ちることもなく、自由自在に魔法が使えて、精霊しか使えない魔法もあるそうです」

「……うん、伝承の通りだね。とにかく、気を付けるんだよ」

「色々と忠告してくださって、ありがとうございます」

「あぁ、気にしなくていいんだよ、ただのお節介だから」

「それでも、知らなかったら大変だった可能性が高いですし」

「本当にありがとうございます!」



お礼を言う私たちに苦笑しながら、ソニアさんはそれにしても、と話を変えた。

ソニアさんの雰囲気が柔らかくなった。

どうやら真剣な話はここまでらしい。



「君たちは双子だと言っていたけれど、あまり似ていないね?髪や瞳の色彩は同じだけれど」

「よく言われます。顔の雰囲気が全然違うって」



そうなのだ。私たちは色彩は同じなのに、パッと見で似ているという印象はあまりもたれない。

よく見ると似ている部分もあるのだけど、雰囲気が全然違うらしい。

律は透き通るような白い肌に切れ長の瞳、整えなくても美しい眉、形の整った口……と、全体的に秀麗な美人といった雰囲気だ。

それに対して私は、くりっとしたアーモンドのような大きな瞳、口は小振りでぷっくりとした桜色の唇。

肌と眉は律と似ているが、私の方が柔らかい印象らしい。

律がユリの花なら私はカスミソウか桜っぽい、と言われたことがある。



「でも、似ているパーツもあるんですよ!眉とか」

「あぁ、本当だね。でも、言われないと分からないな。そうやってふたり並んでいると、仲のいい友達や恋人みたいだ」

「はは、それもよく言われます。俺たちは気のおけない親友みたいに思っているので、あながち間違いではないですね。恋人はないですけど」



地球ではふたりで街とかを歩いていると、「美男美女カップルですね!モデルとか興味ない?」と声をかけられることもあったな、と思い出す。

まぁそれは良いとして、さっきリトが魔法は本などによって伝えられている、と言っていた。

商人と言っていたソニアさんなら、持っているかもしれない。

でも、荷物が見当たらないな。



「あの、ソニアさん、魔法の使い方が乗っている本とかってありますか?」

「うん?魔法書のことかな?これなんだけど……」

「わ!あ、多分それです!見せてもらっても良いですか?」

「もちろんだよ」



いきなりソニアさんの手の上に本が現れた。ファンタジー!

ソニアさんから手渡された魔法書をパラパラとめくっていると、律が横から覗きこんできたので見やすいように少し律の方に本をずらしてあげた。

初級編と書かれているので、ここに載っているのは簡単な魔法ばかりなのだろう。

目次には、第1章:火属性、第2章:~などと書かれていて、全ての属性が載っている。

次のページには、技術書などの最初によくある『はじめに』という言葉が書かれていた。

そこには、初級の魔法を三度やっても発動できなければ、適性がないと思うといいでしょう、と書かれていた。

この初級編に全属性が載っているのは、適性の判断も兼ねているのかもしれない。



「適性って、調べる方法はないんですか?」

「いや、あるよ。冒険者になるときは、ギルドというところで必ず調べるんだ。適性があっても使えない、使ったことがない属性がある場合は、ギルドで使い方を教わるんだよ」

「なるほど」

「冒険者になると、カードがもらえるんだ。ランクごとに色が違って、A~Fランクまである。Aの上にSランクもあるけれど、Sランクなんてそうそう生まれないからね。幻のような存在だよ。今は、Sランクはこの大陸にふたりだったかな?他の大陸はちょっと分からないけれど」

「じゃあ、実質1番上はAランクなんですね」

「そういうことだね。それから、そのカードは身分証にもなる。世界共通らしいから、持っておくと便利だよ。どこかの街に入るときには身分証を提示しなければいけないから。まぁ、大陸を渡る者なんてそういないけれど」

「じゃあ、俺たちはミゼに着いたらまず、ギルドにいけばいいんですね」

「冒険者になるのかい?」

「えぇ、色々なところに行きたいので、冒険者のカードがあると便利かなと」



この世界にはギルドがあるらしい。

冒険者になれば、大陸間の移動も少しはしやすいだろう。

……でも、ミゼに入るときはどうしよう?

身分証明を持っていない場合は、どうしたらいいんだろう?

……まぁ、なんとかなるかな!



「冒険者って、具体的に何をするんですか?」

「うーん、ユズカはどんなのを想像する?」

「魔物を倒したりとか、薬草を採ってきたりとか?」

「うん、そんな感じだよ。他には、雑用をやったりとか、護衛をしたりとかだね」

「あ、サミさん達みたいにですね!」

「その通り!冒険者でも依頼を出すことはできるよ」



魔物を倒すのはいいけど、薬草をとるのは無理かもしれない。

私には、薬草なのか雑草なのか判別ができない。

律なら出来るかもしれないけれど、その依頼をこなすよりも違う依頼をこなした方が効率がいいと思う。

……薬草とか、見分けられる人ってすごいよね。



「そろそろ森を抜ける頃かな」



ソニアさんがそう言って、馬車の外を見る。

進む先を見たら、出口が見えてきていた。

ソニアさん、すごい。感覚で分かるものなのだろうか。



「サミ、森を出たら、1度休憩をしようか」

「あぁ、そうしてくれ、ソニアの旦那。そろそろこいつらも疲れてるだろうからな」

「分かったよ。イサ、森を出て少ししたら、馬車を止めてくれ」

「分かりました」



休憩をするらしい。

そういえば、私たちはまだお昼ご飯を食べていなかった。

休憩中に食べちゃわないと。

あ、アイテムボックスからポーチと水袋を出しておこう。

ポーチと水袋をベルトにつけて、ポーチの中にお昼ご飯をしまっておく。

お昼ご飯はサンドイッチとドライフルーツだ。美味しそう!



「おや、ユズカはアイテムボックス持ちなんだね」

「あ、はい!」

「あ、俺もです」

「リツもかい?私もそうなんだ。冒険者になるならあった方がいい能力だね。商人にとっても是非ともほしい能力だけど」

「そうですね、とても便利です」

「律、私たちお昼ご飯食べてないから、休憩中に食べちゃおう」

「あぁ、そういえば」



あ、さっきソニアさんの手に本がいきなり現れたのはアイテムボックスだったのか、と納得した。

そうこうしている間に、森を抜けたらしい。

馬車が止まったので、私たちは外に出て伸びをした。

馬車は結構ガタガタ揺れるし、ずっと座っていたので体が固まっている。

そうすると、サミさんたちが座って休憩していた。

まぁ、休憩しながらも警戒は怠っていなかったけれど。

私たちも座ってお昼ご飯を食べる。

食べ終わってもまだ休憩は続きそうだったので、律と私は食後の運動として軽く剣の練習をすることにした。

まずは素振りから、と上から下に剣を降り下ろす。

それが終わったら、今度は横。斜め。突き。

どんどん精度が上がっていくのがわかる。

剣を初めて握ったさっきとは大違いだ。

最初は剣に振り回されている感じだったのが、今は多少自分のものになってきている。

軽い動きでだんだんとスピードをあげていき、限界だと感じたところでやめる。

ふぅ。体を動かすのは、やっぱり気持ちがいい。

律も、ちょうど終わったらしい。



「律、体を動かすのはやっぱり楽しいね!」

「あぁ、すっきりした」

「お嬢ちゃんたち、さっきよりも動きが少しよくなってねぇか?」

「リツは弱点を一撃で仕留めるって気迫があるな!ユズカちゃんは舞ってるみたいに見えるし……なんか、リツは静でユズカちゃんは動って感じがする」

「魔法も使えるみたいだし……高ランク冒険者になるかもしれないわね」

「ほんとですか?ありがとうございます!」



サミさんたちがからかうように軽く声をかけてくれる。

ニケさんとカイさんはリトとナルを撫でながら。

ふたりともリトとナルにでれでれだ。動物好きなのかな。

その後私たちは、サミさんたちの冒険者話を楽しんだ。



「そろそろ休憩を終わろうか」

「そうだな、十分休んだし、大丈夫だろう」



休憩が終わり、私たちはまた馬車に乗り込む。

そういえば、ソニアさんにミゼの街のことはあまり聞いていなかったと思いだし、聞いてみることにした。



「ソニアさん、ミゼの街ってどんなところですか?」

「そうだね……。ミゼはこの辺では比較的治安のいい街だよ。

ミゼはセイタル王国の領地でね、レスト侯爵家が治めているはずだ」

「レスト侯爵家ですか?」

「善政をしていると評判の貴族だ。まぁそれよりも、ミゼの周りはあんまり強い魔物がいないからね。ミゼは冒険者達に初心者の街とも呼ばれているんだ」

「初心者ですか。なら、俺たちにぴったりですね」

「そうだね。冒険者を始める者が多いだけあって、ギルドの指導も丁寧だし、冒険者を始めるにはとてもいい街だと思うよ」

「わぁ、ミゼに着くのが楽しみですね!」



"初心者の街"か。

私たちには、この世界の基本とか、常識とかが分からないから、丁寧に教えてくれるのは嬉しい。

それに、ギルドなら、精霊樹についても、何か分かるかもしれない。

ナルは、火の精霊なのに場所とか分からないのかな、と思ったけど、聖域から出たことがないからどこなのか分からないらしい。

じゃあなんで外のことを知っているのか、と聞くと、精霊樹から世界のこと……特にサイトリー大陸のことを知ることができたとのことだ。

精霊樹が世界を見守っているというのは本当らしい。

……ミゼで、少しでも手がかりが見つかるといいな。



ソニアさんからの忠告でした。

何も聞かずに聞いたことは答えてくれるソニアさん。

冒険者についての知識も教えてくれました。

それと、律と柚華の雰囲気と戦い方。

このふたりは正反対です。

律はユリ、柚華はカスミソウや桜。

律は重い一撃で一撃必殺、武士みたいな戦い方が武器、柚華は軽い一撃でスピードが武器。

静と動ですね。

今後が楽しみです。



次は、ミゼヘの旅です。

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