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異世界冒険は姉弟で!  作者: fuluri
第2章 サイトリー大陸
22/23

初依頼

さぁさぁ街の門を潜りましたよ!

ここから1番近い森まで歩いていきます。

ちなみに、1番近くても歩きだと片道1時間半かかるんだから地味に遠いよね。



「ねぇ律、これ歩くんじゃなくて飛んで行くのはダメなの?歩くと時間かかりそうだし……」



森へ続く道のりを見て、ふと『飛んだら早く着くかも?』と思い、律に言ってみた。ぴゅーんって飛んでいけたら、速度によるけど10分~20分くらいで到着できるんじゃないかな?



「うーん……飛ぶ魔法は珍しいのか、リン?」

「そうだね。少なくとも僕は見たことがないかな。……っていうか飛べるんだね?」



リンに少しじとっとした目で見られてそっと視線を逸らす私と律。……何でナナまで視線を逸らしてるのかな?何もしてないよね?!とナナにつっこんだら、返ってきた答えに私は納得せざるを得なかった。



「何かリンがあーいう目をしてると視線を逸らしたくなるっていうか、反射的に謝りたくなるというか……」

「あ~……」



私もリンを律として考えると非常に共感できる。私だって律にじと目で見られたら特に何もしてなくても絶対に視線を逸らす。うんうん分かる分かるという気持ちを込め、ナナの肩をぽんぽんと軽く叩いていると、こちらのことは完全にスルーすることにしたらしい律が考え込むように顎に手をやった。



「飛翔系の魔法が珍しいとなると、飛んでるのが見つかると面倒だし危険だな。ただの魔法の天才なら他にもいるだろうから良いけど、変なやつに他にはない稀少性を俺たちに見出だされたら困る。まだ俺たちは自衛できるとは言いきれないからな。見られるのは避けたい」



ふむ、確かに。他にも魔法の天才はいるだろうし、そうである以上なりふり構わず血眼になって求められる、なんて物騒なことは起こりづらいだろう。

でも、この世界の人から見て新しい魔法を創り出したように見られてしまったら、きっとそういう人も現れるはず。

うーー、用心しないと!でも飛んでいった方が効率いいし、どうすればいいかな?

……あっ、そうだ!



「それなら、姿を見えなくしちゃえば良いんじゃない?魔力は私たちが負担することにして、律が翼を創って、私がミストとかで見えなくしたら大丈夫だよ、きっと!」



私がそう言うと、ちょっと困ったような顔をしたリンとナナが目に入った。多分、私と律だけに魔力を負担させることを申し訳なく思っているのだろう。そんなことどうだっていいのに。けど、リンとナナが罪悪感を感じてしまうなら、きちんと納得してもらわないとね!



「私と律は前衛だから、攻撃に魔法を混ぜたり、武器に魔力を纏わせたり、魔法で罠を作ったりはするけど、魔法主体では戦わないんだよ。それに、リンとナナよりも私たちの方が魔力は多いのは知ってるよね?そうなると、私たちが魔力を負担するのが最善なんだよ!」



明るく笑いながらそうした方がいい理由を説明すると、少し考えて納得したように頷いてくれた。良かった、これでリンとナナが変な負い目とか感じなくてすむよね!



「ね、それなら良いでしょ、律!」

「それが1番合理的だろうな。ここじゃ人も多いし、ちょっと離れて試してみるか」



人がいる道から逸れて少し行った辺りで、この世界に来たばかりの時にリトが創ってくれたドームをもう一度創ってもらった。このドーム、闇魔法だから壁は黒いのに中は別に暗くないんだよね。ちなみにドームは外から見えなくなってるらしい。



「……あれ、それならリトも姿を消す魔法を使えるってことだよね?リト、出来る?」

『できるよ。そうだね……試しに今からユズカをリツたちから見えなくしてみようか?』

「わぁ、本当?皆、リトが今から私を見えなくするって!見ててね!じゃあリト、お願い!」



『分かった』と返事が聞こえたと同時にリトの魔力に薄く包まれた感じがした。律とリンが「おぉ……」と感心し、ナナが「わぁ、本当に見えない!リトちゃんすごい!」とテンション高くリトをべた褒めする。成功してるみたいだね!

……リンが「……害虫の始末に使えそうだね」と呟いた。害虫って何だろうね?律も「そうだな」って同意してるけど……あっ、ナナが遠い目になった。



「じゃあ、リトにやってもらうってことで良い?」



意味が分からなくて内心で首をかしげながら、私は皆に確認をとる。すると、リンが不思議そうな顔をして私の方を見る。多分何もないところから声が聞こえるのが不思議なんだろうな。



「わ、ユズカの声だけ聞こえる……うん、良いよ。闇魔法ってこんなことも出来るんだね……本当に勉強になるよ」



と、リンがリトを尊敬の眼差しで見た。すると、リトは居心地悪くなったのか私の肩に登ってくる。そして、『同じ人が同じ魔法を発動した場合はお互いの姿が見えるからね、ユズカ』と少し早口で言って顔を隠すように擦り寄ってきた。

……あーーーかわいい!!照れ隠しかなこれかわいい!!



「まぁ気持ちは分かるけど……悶えてる柚華は放っておこう。リト、俺たちにも魔法をかけてくれないか?」



脳内でひたすらかわいいを連発しながら両手で顔を覆って悶える私を一瞥した律からそう頼まれたリトは、すぐに皆にも魔法をかけた。私はずーっと皆が見えていたけど、皆はいきなり私が見えるようになったみたいで、こっちを見て驚いていた。



「あ、リトが『同じ人が同じ魔法を発動した場合はお互いの姿が見えるからね』って言ってたよ」

「言うのが遅いよ、ユズカ!もう!」

「ごめんごめん、リトのかわいさにやられちゃって声も出なかったから」

「確かにリトちゃんはかわいいけど!」



ナナがぷくーっと頬を膨らませて抗議してきた。ドングリを溜め込んで頬袋が大きく膨らんだリスみたいだ。その様子を見ていてふと、そういえばリトに大きくなってもらったら乗って移動できるんじゃないのかな~と思ったのでリトに聞いてみた。



『できるよ。でも、ユズカだけだ。ナルもリツだけしか乗せられない。僕たちは契約者以外の人間をひどく重く感じるからね。まぁユズカと血を分けた双子のリツならば乗せられるかもしれないけれど、試したことがないから分からない』

(そっかぁ、じゃあ今度お散歩とかピクニックにでも行こう!その時にリトに乗ってもいい?)

『もちろん。ユズカならいつでも乗っていいよ』



そう言ってゆらゆらと尻尾をふるリト。あぁー、かわいいなぁ。リトのかわいさにまたしてもめろめろになりながら、今のリトの話を皆にも伝えておいた。



「……そうなのか。それなら、どこか遠くに行く時は俺と柚華、リンとナナで別に行動した方が効率良さそうだな。……ミゼから遠い街での調査は俺たちがやって、近い街での調査はリンとナナに任せるのはどうだ?」



その方が確かに効率はいいよね。シェリからのお願い事のタイムリミット……魔物の大量発生が手に負えなくなる段階が迫ってるとは思いたくないけど、急いだ方がいいのは確かだし。……そうなると、パーティーをわざわざ分けた意味はあったってことだ。



「……うん、そうしようか。その方が得る情報も多いだろうしね」

「う~~、寂しいけど頑張る!ユズカ、何日かごとに会いに来てね!来なかったら私が行っちゃうんだからね!」

「私もナナに会いたいんだから言われなくても行くよ!」



ナナと私がぎゅーっと抱きしめ合っていると、律に引き剥がされた。頬を膨らませて抗議すると、その頬を摘ままれて「別れるのは今じゃないし、遊んでないで行くぞ。何のためにここに来たのか忘れてないか?」と言われた。……おっしゃる通りですっ!



「じゃあ律、翼をお願い!」

「了解」


《大地に吹く風よ、我に集まりて大空に羽ばたく翼と化せ―――――――"風の翼(フリューゲル)"》


律が詠唱をすると、前と同じ暖かい感覚が背中に集まり、次の瞬間には翼になっていた。ぱたぱたと動かしてみて、問題がないことを確認する。リンとナナは動かすのに慣れるまでもう少し時間がかかるかもしれないね。



「……うん、もう大分慣れたかな。もう行けると思う」

「私も!結構時間使っちゃったし、ちょっと急いで行こう!」



リンとナナの準備も終わったので、リトがドームを解除する。ぶつからないように少し距離をとって、翼をはためかせて飛び立つ。前みたいにジェットコースターをしたら確実に律からのお説教が待っているので、今回はしない。


(ふふん、私学習した!)


……まぁ、律が後ろで私がそんなことをしないように目を光らせてるからしようと思ってもできないんだけど。そんなそぶりを見せようものなら即座に魔法で縛り上げられて律に運ばれるハメになるだろう。それは避けたい。


(よし、律の前で空を飛ぶときはいい子でいようっと!……あれ、何だか寒気が……気のせいだよね、うん)


……今律は後ろにいるから顔は見えてないし、私の考えてることなんて分からないはず……はっ!双子パワーか!それとも双子の勘?!律に隠し事はできないね。……私は律の考えてることたまにしか分からないのに律だけ私の思考を読めるなんて、何かずるい!



(隠し事が出来ないってことは、私が恋人作ったり結婚とかする時の1番の難関ってお父さんじゃなくて律なんじゃないかな?)



私がそんなことを考えながら上の空で飛び、それを律が後ろから呆れた顔で見ている間に、どうやら目当ての森へ到着したみたいだ。おぉ……上から見ると森って大きいなぁ。

森の入り口へ降り立ち、人がいないことを確認してから魔法を解く。自分とナナに身体強化の魔法をかけ、律とリンもかけ終わったのを見てから森へ入った。



「わぁ、体が軽いし森の中なのにすいすい歩けるね!ユズカありがとう!」

「どういたしまして。ちょっと自分の感覚がずれちゃうから、魔物に遭遇する前に慣れておかないとね!」



ナナとリンは初めての身体強化が楽しいらしく、跳んでみたり岩を持ち上げてみたり色々試している。その間、律は周りを見回して面白そうな顔をしていた。多分鑑定してるんじゃないかな?私も鑑定して薬草を探してみよーっと!



(……おっ、あのカラフルなキノコは……珍味?!毒キノコじゃないの?!あ、あの地味ーな感じのキノコはしいたけっぽい!美味しそ……あ、あれ素手で触ると死んじゃうキノコなの?!危ない、触るところだったよ!)



いや~、キノコ探しってなかなか楽しいよね!

…………って、違う違う!薬草探してるんだから!まぁでも結構集まったし、薬草採集はそろそろいいかな。



「リン、薬草ってこれくらいでいい?」

「うん、大丈夫。全部間違えてないみたいだし、上出来だよ!じゃあ、この袋に全部入れて。ひとまとめにして持っておくよ」



リンが手に持っている袋に薬草を入れていく。最後のひとつを入れ終わったところで、リンの背後に何かを察知した。それと同時に律の声が飛ぶ。



「スライムだぞ!リン、柚華、ふせろ!」



その声に素早く反応して、私たちはふせる。すると、私たちの頭上を何かが飛んでいき、それが当たったのか近くの木からシュウゥ……と音がした。

……これ、あれかな、もしかして。この世界のスライムって、酸を吐くタイプのスライムなのかな?

だとしたら早めに倒さないとちょっと危ないかも。



「スライムは1度酸を吐いたら少し時間が経つまで酸を吐けなくなるんだ。今のうちに倒してしまおう!」

「……スライムは基本群れないイメージだったんだけど、これ少なくとも10匹はいるね……魔物が増えた影響なのかな?さっさと片付けなくちゃね!」



そう言ってナナが両剣を取り出してスライムの方に向けた。

律も背中に背負っていた大剣を抜く。ここは少し開けた場所なので大剣を取り回せるのだ。

私も腰に下げていた剣を抜き、スライムに斬りかかる……途中でちょっと思い付いたのでスライムを凍らせてみることにした。


《――――――"氷結(フリーレン)"》


思い付きだったのだけど見事に凍った。

その状態でアイテムボックスに入るかどうか試してみると、入った。生きているものは入らないはずなので、もう死んでいるのだろう。このやり方ならぷよぷよ部分も取りこぼしがないし、いい方法を見つけた。



「律、ナナ!スライムを水魔法で凍らせて!」



私のその言葉に律がすぐに反応し、スライムを凍らせる。ナナも律に一瞬遅れて凍らせ始めたので、私も目の前にいるスライムを次々凍らせていく。リンは水魔法が使えないので援護に回った。

そうしているとあっという間にスライムは全て氷漬けになり、戦闘は終了した。



「それで、何で凍らせたんだ?これ死んでるのか?」

「アイテムボックスに入ったから死んでるはずだよ。こうしたらぷるぷるの取りこぼしもないし、楽だし、一石二鳥だよ!」



良いこと思い付いたでしょ、と私が得意気に胸を張った。

と同時に、突然「きゃああ!」と、女の子の悲鳴が聞こえてきた。何事かと律と一瞬だけ目を見合わせ、「私が行ってくる!」と言って走り出す。



「リンとナナはここで待機!しばらくしても俺たちが戻ってこなかったら森から出て街へ戻ってくれ!」



リンとナナにそう指示を出す律の声を背後に聞きながら、私は「いつもだったら私も止められるのに何で今回は止めないんだろう?」と、不思議に思っていた。

すぐに後ろから追いついてきた律は私の疑問を感じ取ったのか、苦笑しながら「言っても聞かないだろ」と言う。そして、「それなら一緒に行く方が安全だ」とも。さすが律、よく分かっていらっしゃる。



「……この辺りかな?」

「……何もないな。この方向で合ってるはずだし、声の大きさからしてあんまり遠い場所じゃないと思ったんだけど」



悲鳴をあげたと思われる場所には何もなかった。確かにこの辺りのはずなのに。ここで何か戦闘があったのかと思ったんだけど……それににしては土が荒れてないし草や木にも被害はない、よね。いや、傷とかはあるけどその上に苔とかが生えてるから今回のものじゃないだろう。



「魔物が近くにいる気配もないし、ナルもそう言ってる。気のせいだったのか……?鳥か何かの鳴き声だったのかもな」

「うーん、何か違う気もするけど……でも何もないし……。あの後は何も聞こえないし、まぁ気のせい、かもね?」



何か腑に落ちないものを感じつつ、私と律は一応周囲を警戒しながらリンとナナのところに戻る。こちらにも何も異常は無かったらしく、少し警戒しながら待っていた。



「あ、ユズカ、リツ!どうだった?」

「何もなかったよ。不自然なくらいに。けど何もないんじゃこれ以上何もできることはないし、引き上げてきたんだ」

「そう……。まぁ警戒するに越したことはないね。薬草もスライムも大分集まったし、これだけあれば依頼も達成できただろう。今日はこれくらいにして帰ろうか」



どうにも納得がいかない微妙な感じがあるけれど、ここでどうこう言ってもあまり意味がないだろう。行きと同じようにリトと律に魔法をかけてもらってその場から飛び立った私たちは、背後の森を気にして時々振り返りながらミゼの街へと帰っていくのだった。



依頼に入りました!

律は柚華の考えてることなんてお見通しです。

けど柚華と違って勘だけで判断しているわけではなく、表情や態度からも推測しています。

つまりお見通しなのは柚華のことをよく見てるからですね。



次は、悲鳴です。

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