武器の訓練
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これからも頑張っていきます!
では、本編をどうぞ↓
あー、よく寝た!
昨日あれから部屋に戻り、お風呂と夕食を終えてからラックさんに紅茶の淹れ方を教わって何回も練習した。
その練習に付き合わされた律、リン、ナナの3人は何杯も紅茶を飲まされ、『お腹がたぷんたぷんだ……もうこれ以上何も入らない』と言ってダウンしていた。
本当に申し訳ない。けどありがとう!
ラックさんの指導のお陰で美味しい紅茶が淹れられるようになったから、ソニアさん喜んでくれるといいなぁ。
『おはようユズカ。疲れはとれたみたいだね。さっぱりした顔をしているよ』
(おはようリト!今日はなんだか気持ちよく目が覚めたよ。きっと昨日たくさん体も頭も動かしたからだね!)
『それは良かったね』
起き上がって軽く伸びをしてから膝に乗せたリトに朝の挨拶をしていると、扉がコンコンと静かにノックされ、ナナが入ってきた。
ナナは私が起きているのを見て少し驚いた顔をしていたけれど、すぐに笑顔で近寄ってきた。
「おはよ、ユズカ!」
「おはよーナナ!今日もギルドに行くんだから、早く準備しないとね!」
私がそう言ってベッドから立ち上がった瞬間、ナナにあっという間に着替えさせられていた。
もうここまでくると魔法でも使ってるんじゃないかと思う。
おぉ、と思っている間に髪をサイドテールに結ばれる。
「今日はナナとお揃いだね!」
「そうそう!ユズカの髪ってするする落ちてきちゃってまとめるの大変だけど、逆に燃えるんだよね!」
私の髪のまとめにくさのせいでナナの侍女魂に火がついたみたいだ。
ふたり並んだら姉妹みたいに見えるかな?
……無理か。
私たちの隣にリンと律が並ぶと、私じゃなくてリンの方がナナと姉弟にしか見えないもんね。
まぁ、私は髪型に特にこだわりはないし、ナナの好きなようにしてもらおう。
いつも通りリトを肩に乗せ、律の部屋へ向かう。
もう準備の終わっていた律たちと朝食を食べに行き、シェフさんに約束のお菓子をもらった。
嬉しくなった私はまたシェフさんの所に突撃して律に怒られ、それを微笑ましげに見守っていたラックさんに見送られてギルドへ出発する。
「ギルドへの道を歩くのも慣れてきたかも!今日はお昼にソニアさんが帰ってくるし、お昼ご飯はお屋敷に帰るよね?」
「うん、そのつもりだよ。折角ユズカがあんなに紅茶の練習をしたんだから、ソニア様に飲んでいただかないとね」
「うぅ、昨日は申し訳ございませんでした……」
私がしょげると、リンが笑う。
律とナナも聞いていたらしく、笑いながら乗ってきた。
「あの紅茶の量はさすがに多かったな」
「ふふ、もう紅茶の飲み過ぎで私は一体何の修行をしてるんだろうって思っちゃったよ!」
何回も失敗してやり直したからなぁ……ラックさんが妥協を許してくれなくて大変だったんだよ!
そんな話をしていたらギルドに到着し、受付へ歩いていくと、私たちに気がついたらしいシュトさんが受付の奥から出てきて、声をかけてくれた。
あれ、受付の人って女の人だけじゃなかったんだね?
シュトさん以外にも男の人が奥にいるみたいだけど、受付に並んでるのは女の人ばっかりだ。
「おはよう、4人とも!」
「おはようございます!あのー、ひとつ聞きたいんですけど、受付って奥に男の人がいますけど、どうして女の人だけカウンターに並んでるんですか?」
「あぁ、基本的には女性の方が愛想がいいし、冒険者は男が多いから、女性の方が人気なんだよね。トラブル自体を避けやすいから前に出ているってわけ。でも女性だけだと危ないこともあるから男も必要なんだよ」
「あ、なるほど!」
疑問がすっきり解決した。
きれいな女の人に愛想よく受付されて嫌な気分になる人はそういないだろう。
でもそれが原因で絡まれることもあるし、力が必要な場面もあるから男の人も必要ってことか。
私が納得顔で頷いていると、シュトさんが何かを思い出したようにぽん、と手を打った。
「そうだ!君たちは確か今日も訓練だったよね。僕がギルドマスターを呼んでくるから、先に訓練場へ行っていいよ」
「あ、ありがとうございます!それなら先に行ってますね!」
シュトさんの言葉に甘えて、私たちは訓練場に入っていく。
ギルドマスターさんが来る前に、少し体を動かしておいた方がいいかと思って、手首や足首のストレッチなどで適度に身体を解しておく。
それらが終わってちょっと走ろうかなと思ったとき、ギルドマスターさんの声が聞こえてきた。
「お前ら準備は良いみたいだな!じゃ、早速始めるか!」
色んな種類の武器を担いだままギルドマスターさんがそう言った。
後ろにはシュトさんもいて、同様に武器を担いでいた。
え、ふたりともよくその重そうな武器たちをそんなに抱えられるね。
重そうだと思ったのに、ギルドマスターさんとシュトさんは軽々と言った様子で足下に武器を下ろした。
実は見た目ほど重くないのかと思ってひとつ持ってみたら、普通に重かった。
魔術具でも使ってるのかな、それとも魔法?
そのどちらでもなく、純粋に力だって言うならならすごいけどね。
「さて、ここにある武器を自由に使ってみろ。それで1番しっくりくるものを選んでくれ」
「はい!」
ギルドマスターさんが言った通りに色々使ってみようとギルドマスターさんとシュトさんが持ってきた武器たちに目を向け、その種類の多さに改めて驚いた。
剣、大剣、レイピア、刀、両剣、槍、弓、矛、鎌、大鎌、杖、スリングショット、ブーメラン、斧、鞭、メイス、鉄球、槌、ハルバード……他にもまだあるけれど、ざっと見ただけでもこんなに種類がある。
「んー、何から使ってみようかな?」
少し迷って、私は1番近くにあった槍を手に取り、振ってみる。
突いたり捻ってみたり……と試してみてから次の武器を手に取り、また似たような感じで使ってみる。
(これは重すぎて振ったときにバランスが崩れちゃうし、扱いにくいかな……)
なんて自分との相性を考えながら色々と使ってみて、『これなら扱いやすいかも!』と思う武器がいくつか見つかった。
1つ目はやっぱり剣。
まぁ1番練習してるから当然だよね。
2つ目は刀で、比較的軽いし少ない力で切れる。
でも剣とは扱い方が結構違うから、慣れるのにちょっと苦労するかもしれない。
3つ目はレイピアだけど、これは突きがメインなのがネックかな……。
4つ目は槍。
これは小さい時に見てたアニメで女の子が長い棒(ステッキ?)を使って戦ってるのを真似したくて似たような長い棒を振り回していたから、その感覚を体が思い出したんじゃないかと思う。
どうせ同じ突きがメインの武器ならレイピアよりも間合いの広い槍の方が良いかなぁ。
(でもこれ全部使うのはさすがに無理だよね……)
2つか3つに絞った方が良いだろうし、とりあえずレイピアは諦めよう。
……他のは全部状況に合わせて使い分けようかな?
幸いにもシェリのお陰でアイテムボックスに武器が色々入ってるし。
槍は剣と刀より間合いが広いし、中距離戦で役に立ちそう。
けど、剣と刀は似たような状況で使うものだし……剣と刀で二刀流でもする?
え、そんなの出来るのかな?
「ねぇ律、剣と刀で二刀流って出来ると思う?」
「……やったことがないからなんとも。あんまりメジャーじゃないと思うけど……ちょっと実践してみれば?」
うん、律の言う通りだね。
自分で体験してみるのが1番良さそうだ。
……と思って、少しの間剣を左手に、刀を右手に持って二刀流を試してみた。
あ、私が剣と刀を左右どちらとも同じような精度で操れるのは、両利きだからです。
私は元々左利きだったけど、不便なこともあるので小さい頃から右も使ってたらいつの間にか両利きになってたんだよね。
ちなみに律もそのパターン。
(……これは失敗だったかな)
しばらく練習してみたけどかなり使いづらいし、律があんまりメジャーじゃないって言ってたのも頷ける。
慣れれば良いのかもしれないけど、慣れるまでかなり大変そうだ。
後々やるかもしれないけど、今はとりあえず封印かなぁ。
「律、これダメみたい」
「あー、二刀流はメインに長剣とかの武器、サブに短剣とか軽めの武器が基本だからな。けど、長剣同士とか刀同士なら使えると思うぞ?戦うときは基本的に身体強化してるし。まぁ、剣と刀でも練習すれば使えるようになりそうだけど」
そっか、身体強化するから武器がある程度重たくても大丈夫なんだ。
よく考えれば、使い分けも斬る時は刀で、斬るより打撃性とか攻撃に重さが必要なときは剣を使う……とかにしたら良さそう。
なら、今まで通りメインは剣1本でいいね!
二刀流をするときはこの前みたいにもう1本を魔法で創ることにしよう。
そう思って顔を上げると、ギルドマスターさんが私たちに集合をかけた。
「4人とも決まったみたいだな!メインにする武器を持ってこっちに来い!」
言われた通りにギルドマスターさんとシュトさんの前に集まり、お互いの武器を確認する。
律は大剣、リンはレイピア、ナナは槍のような長い棒の両端に刃のついた両剣という武器だった。
律は一撃の重さを求めて大剣にしたみたいで、地面に少し刺すようにして大剣を持つ姿は様になっている。
リンは魔物との戦いの中で気配を消して死角から致命的な攻撃をする、という暗殺者のような戦い方を目指しているらしく、あまり目立たなくて間合いが広めな武器が良かったみたいだ。
まぁリンとナナはナイフとか短剣とか間合いの狭い武器は元々使えるもんね。
『今度レイピアを加工して仕込み杖にするのも良いかな』と言っていた。
ナナは魔法をメインにして後衛で戦うので弓にしようかと思ったけれど、弓は元々使えるので教えてもらうのは中距離で戦える間合いの広い武器が良いと考えたらしい。
それで色々試した結果、最終的に両剣になったそうだ。
「……もっと使いやすいのがありそうだけどな」
「ま、まぁ、ナナも戦闘では身体強化を使うから、両剣みたいな多少重めの武器でも使いこなせると思うよ!……多分」
「多分って何、ユズカ?!大丈夫だよ!」
ちょっとナナが拗ねてしまった。
いやだって、ナナみたいな華奢で可愛い女の子が大きな両剣を振り回してるのってあんまり想像できないんだもん!
ごめんごめんと謝りながらナナのご機嫌を取っていると、ギルドマスターさんが話し始めた。
「……まぁナナの武器は正直意外だったが、ともかく始めるぞ。リツとユズカとリンはシュトに習え。ナナのは少し特殊だから俺が教えてやる」
「分かりました」
私と律は大きさは違うけど剣だし、リンのは刃のついたレイピアで武器の形状も似てるから一緒に教えやすいだろう。
ナナのは形が違いすぎて一緒にはできないよね、うん。
「じゃあまず、素振りの型を見るから、30回素振りしてくれる?」
言われた通りに、集中して指先まで意識しながら丁寧にきっちり30回素振りをしていく。
終わるまで私たちの型をじーっと見つめていたシュトさんは、終わったあと笑顔で口を開いた。
「うん、3人ともきれいな型だね。これならそんなに時間はかからないと思うよ。じゃ、次は……」
と、どんどん過程を進めていく。
シュトさんが言った通り、足運びや体捌き、戦いで剣を扱う時のセオリーなど基本的なことを教えてもらい、シュトさんを相手に軽く実戦的な事をして『シュト先生の剣講座』は終了した。
やっていて気がついたけど、教えてもらったことは知識として知らなくても無意識にしていることだった。
どうやらシェリの祝福のお陰で、教わらなくても武器の基本的な扱い方は勘で分かるみたいだ。
まぁ、その後技術を伸ばしていくのは自分の努力次第みたいだけど。
「……3人とも基本的なことはかなりの精度で出来ていたね。リンくんは武器の扱いに慣れている感じだし、リツくんとユズカさんはそんなに慣れてはいないけれどセンスがある。君たちくらい基本がしっかりできているならこれ以上人に教わるよりも実戦で力をつけた方が良いと思うよ」
「分かりました。色々と教えてくださってありがとうございました」
シュトさんにお礼を言い、ナナの方へ目を向ける。
すると、両剣を振り回しながらギルドマスターさんに突っ込んでいくナナの姿が見えた。
……あれ、ナナの体に魔力が見えない……?
え、もしかして身体強化なしであれを振り回してるの?!
あんな華奢な女の子のどこにそんな力が?!
「リ、リン!ナナが身体強化使ってないんだけど……!」
「……あれ?言ってなかったっけ?ナナはあれでかなりの力持ち……もっと分かりやすく言えば怪力の持ち主だよ」
「えぇぇぇぇぇ?!」
私が衝撃の事実に絶句している間にナナも訓練が終わったらしく、こちらに走り寄ってきた。
……メイスとか鉄球とかハルバードに比べたらまだマシだけど、何かすごいこれじゃない感がある。
そして私の前に来て、両剣を持ったままこてんと可愛らしく首をかしげるナナ。
「ユズカ?どうしたの?」
「……ううん、何でもない。ナナって力持ちなんだねって思ってただけ……」
思わず遠い目になってしまう私に、ナナが私の顔を覗き込みながら聞いてきた。
あーでも、小説とかで怪力メイドって結構見るかも……いや、ナナはメイドじゃなくて侍女だけど。
なんて軽く現実逃避していると、ナナが目を輝かせた。
「ふふん、だから大丈夫だって言ったでしょ?」
そんな風にナナが得意そうに胸を張るので、思わず笑ってしまい、先程の衝撃はころっと忘れていた。
というか、怪力って言うなら魔力が見えない人にとっては身体強化使った私も大概だしね。
そんなやり取りを尻目に、ギルドマスターさんも歩いてきてシュトさんに一言二言何か言ってからこちらを向く。
「これでギルドでの講習は終わりだ!これからは依頼をたくさん受けて実力をつけていけよ!何かあったらギルドに頼れ、出来ることはしてやるからな!」
「分かりました。頑張って依頼を受けて地道にランクを上げていくので楽しみにしててください」
自信ありげにニヤリと笑いながら言った律のその言葉に、ギルドマスターさんは豪快に笑いながら『楽しみにしている』と言ってくれた。
シュトさんも笑顔で『頑張ってね!』と応援してくれたので、もっともっと頑張ろうと思う。
今日のギルドでの用事は終わったし、そろそろお昼になるからソニアさんが帰ってくるんじゃないかな。
そう思った私たちはギルドマスターさんとシュトさんにお礼と挨拶をして、少し急ぎ足でお屋敷に帰ることにした。
もしソニアさんが先に帰ってて待たせちゃったら悪いからね!
やっとギルドで受ける講習が全部終わりました。
これからは依頼も受けられるようになります。
律のメイン武器は大剣、柚華のメインは剣、リンのメインはナイフとレイピア、ナナのメインは魔法と弓(両剣は前で戦うときだけ)となります。
まぁナナの両剣に関しては出番が少ないのも悲しいのでできるだけ出していきたいと思います。
リンが何故かどんどん暗殺者へ……ラックさんのせいですね。
次はソニアさんのご帰還です。