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異世界冒険は姉弟で!  作者: fuluri
第2章 サイトリー大陸
18/23

姉弟の手合わせ

稽古場に着き、私はリンに闇属性の同調をしていなかったことを思い出した。

あれは早めにやっておかないと、『陰』を創るのに慣れてしまってからでは『闇』に修正するのが大変なのだ。



「リン、闇魔法の同調をしよう!リトが言ってたんだけど、大抵の人は闇魔法を使うときに『闇』じゃなくて『陰』を創ってるんだって!でもそれだと威力が小さくなっちゃうから、最初に『闇』を創り出せるようになっておいた方が良いみたいだよ!」

「……そうなの?なら、お願いするよ。リトは闇の精霊だろう?そのリトがそう言うなら間違いないだろうし」



私はリンと手を繋ぎ、リンの魔力が同調したのを確認してから掌の上に闇の球を創り出す。

リンはその感覚を真似しながら闇の球を創ろうとし、リトにダメ出しをされながら何回も練習して、やっと闇を創り出せるようになった。



「見た目には分からないけど、『闇』と『陰』だと創り出す時の感覚が微妙に違うんだね。ありがとう、ユズカ」

「どういたしまして!この間リトが暇な時に闇魔法を教えるって言ってたから、色々教えてもらうと良いよ!」

「精霊に直接教えてもらえるなんて光栄だよ。ありがとう、リト」



その後、入念に準備運動をしてアイテムボックスから剣を取り出して装備する。

律も剣を取り出して装備したけれど、リンとナナは動かない。

どうやら今更準備するまでもなく、いざという時のために常に服の下に暗器が仕込んであり、使う直前に取り出して極力何を使うのか悟られないようにするのだそうだ。

剣を素振りしたりして体に剣を振る感覚を思い出させ、1対1で手合わせしてみる。

ふたりが手合わせしている間、他のふたりは見学しておくことにした。

それぞれの戦い方を覚え、実戦での連携に役立てられるようにするためにも、手合わせは見ておいた方が良いだろう。



「姉弟同士でやるか?その方が慣れてるだろうから良い動きができそうだ」

「それで良いよ。なら僕たちが先にやろうか、ナナ?」

「良いよ!リン、準備は出来てるから早速始めちゃおう!」



少し距離を取ってリンとナナが向かい合う。

軽く礼をして、見事にシンクロした動きでふたりは一気に後ろへ跳び、互いに距離をとる。

どうやら遠距離での戦いを見せてくれるらしい。

……リンVSナナは遠距離戦かぁ、勝手なイメージだけど暗器を使うなら近距離戦かなって思ってた。

あ、でもリンは投擲が得意って言ってたから、遠距離でもおかしくはないのかな。

私と律が遠距離戦をするなら魔法必須になるよね。

剣で戦うなら自然と近距離戦になっちゃうし、魔法を使わないと遠距離戦で攻撃する手段がないからなぁ。

……あ、そうだ!



「ねぇ律、私たちが手合わせする時、魔法は使う?使わない?」

「そうだな……。実戦の中で魔法も使うだろうし、慣れるためにもやっておいた方が良いんじゃないか?」

「分かった!」



律と相談している間に、リンがさっと手にナイフを1本取り出し、まずは牽制とばかりに投げていた。

ナイフは回転もせずかなりのスピードでナナの顔へ向かってまっすぐ飛んでいく。

ナナはそれに対して顔を逸らしつつ右に一歩身体をずらしてかわす。

空間を切り裂きながら顔の真横を通り過ぎていくナイフを気にすることもなく、何か細いものを何本かリンに向かって投げる。

ナナが投げたのは……針かな?

ナイフを避けるところから針を投げるまでの一連の動作は流れるような洗練された動きだった。

ナナの投げた針もまっすぐリンの方へ飛んでいき、リンが最低限の動きで針をかわして再度ナイフを投げようとし……途中で何かに気がついたようにトン、と横に跳んだ。



「あれ?今どうして横に跳んだの?何もなかったのに」

「……一瞬だけどナナの針を持つ手元に違和感があった。ナナが針を投げたとき、同時に見えない何かを投げたんじゃないか?」



私たちがそんな会話をしている間にもナイフと針の投げ合いは続く。

ふたりともがお互いの投げるものをひょいひょいかわしながら投げ合い、一定の距離は保ちながらふたりの立つ位置だけが円を描くようにどんどん移り変わっていく。

……と、突然ナナの身体のバランスが微妙にぶれた。

手合わせが始まってからずっと一本筋の通っているかのような安定したバランスで避けていたのに、どうしてだろう?

そう思ってナナの足元を見ると、まきびし?が散らばっていて、それを踏まないように注意しながらナイフを避けているため、さっきよりも顔に余裕がなく見える。

……このせいでナナのバランスが崩れたのかな?

それに、かすかにナナの足下に魔力が見えるので、どうやら何か魔法を使ったみたいだ。

……うーん、こっちが原因かも?

そんなことを思いながら見ていると、リンは好機と思ったのかナイフをナナに向かって素早く4本同時に投げ、ナナの方へ走り出しながら再度ナイフを投げる。

ナナはすぐに態勢を立て直して2回ともギリギリで避けたけれど、その間にものすごい速度で距離を詰めたリンがナナの足を払い、首にナイフを突きつけていた。

今度はリンの周囲にさっきよりもはっきりと魔力が見える。

多分今のはリンが風魔法で加速したんだと思うけど、さっきの魔法は何をしたんだろう?



「……むぅーー、負けた!」

「ナナは落ち着きが足りないんだよ。身体のバランスが崩れたときも、もっと落ち着いていればもう少し余裕をもって避けるなり服に忍ばせてる短剣で弾くなりできただろう?」

「うぅっ、確かに……!……でも、あのくらいの投げ合いでバランスが崩れるなんてこと今まで1度もなかったのに!途中で足に違和感があったけど、何をしたの?」

「あぁ、魔法を使ってみたんだよ。闇魔法を使ってナナの影に干渉して一瞬だけ足を引っ張らせたんだ。魔法を使って戦うのは初めてだから少し不安だったけど、上手くいって良かった。ナナの針を避けながら干渉するのは結構大変だったけどね」



初めて……?あ、そっか!

ふたりとも今日魔法を使えるようになったばっかりだし、今までの手合わせで魔法を使ったことなんてなかったのか。

リンはそれを逆手にとって不意打ちしたみたいだ。

けど、不意打ちされて足を払われたのに倒れる時にきっちりまきびしを避けているナナはすごいと思う。



「魔法かぁ……。私も使えば良かったーー!」

「……今回は僕が勝ったけど、ナナだって針を投げる技術が上達してただろう?透明な針が混ざっているのにギリギリで気がついて、驚いた。あれは焦ったよ。あと少し気づくのが遅かったら避けきれなかっただろうし、危なかった」

「今度は気づかれないようにもっと頑張らないとね……」



リンが針を避ける途中でいきなり横に跳んだのと、律の感じた違和感は透明な針が原因だったらしい。

私たちは手合わせの終わったふたりの方へ歩いていき、声をかける。



「お疲れさま!ふたりとも回避が上手でびっくりしたよ!それに、リンの魔力は2回見えたけど、魔法の使い方も使い所もすごく良かったと思う。ナナの透明な針だって気づかなくて驚いたよ!」

「お疲れ。リンは早速魔法の『イメージ』を実践したんだな。無詠唱だっただろ?柚華の言う通り使い方も使い所も上手かったし、このまま続けると良いと思う。ナナも、透明な針を投げるとき、ナナの手元にかすかに違和感は感じたけど、何を投げたのかは分からなかった。もっと極めたらかなり有効だと思うぞ」



うーん、透明な針は厄介だよねぇ。

視覚だと気づきにくいし、実際私は気づくことができなかった。

私はいつも体を動かすときは直感で動いてるからなぁ……。

でも、直感みたいな第六感だけに頼りすぎるのもダメだし、五感でも気がつけるように心掛けてみよう。

リンやナナに付き合ってもらって練習するのも良いかもしれない。



「ありがとう。もっと精進するよ」

「ありがとう!頑張って極めてみせるよ!それに、私も魔法を使いこなせるように頑張らなくちゃ!」

「うん!じゃあ、次は私たちだね、律!」

「そうだな。今回はきちんと決着をつけよう」



前回の手合わせでは実験して終わったから決着がつかなかったんだよね。

だから、決着がつくのは今回が初めて。

どっちが勝つのか正直全く予想がつかないけど、勝ちたいと思うし、負けたくない。

なので、今回は全力でいきたいと思います!

互いに距離を取って礼をし、剣を鞘から抜いて構える。



「すごい、ユズカが燃えてるのが一目で分かるね!」

「……リツも静かに燃えてると思うよ、あれは」



そんなナナとリンの声を合図に、私たちは風魔法で身体強化しながら動き出す。

お互いの間にあった距離が一気に縮まり、剣と剣がぶつかり合ってガキィン……と音が響く。

私は軽く後ろに跳んで衝撃を逃がし、再度律へと突っ込んでいく。

連続攻撃をする私に、律は全てを防ぎきりながらも、攻撃はしない。

今くらいのスピードなら律は攻撃を挟むくらい出来るはずなのに、どうしてしないのかと不思議に思っていると、足下に嫌な予感がして咄嗟に飛び退く。

すると、私がいた場所の地面に直径も深さも30センチくらいの落とし穴が出現した。

もしあそこにそのままいたらいきなり足場がなくなってバランスを崩し、負けていただろう。

攻撃を挟まなかったのは魔法に集中していたかららしい。



「……リン、どうしてユズカはあれを避けられたのかな?前兆も何もなかったと思うんだけど……」

「……ユズカは魔力が見えるみたいだし、それで察知できたんじゃないかな?」

「あ、なるほど!……けど、ユズカの場合ただの勘って言いそうな気もするんだよね……」



なんて会話がリンとナナの間でされていることなんて全く知らず、私は『セーフ!危なかったー!』と安堵して律への攻撃を再開するのだった。


(……私も何か魔法を使って律の隙を突きたいな……あ、そうだ!)


挟まれるようになった律の攻撃をかわしながらそんなことを考えていたために、律への攻撃の手が少し緩んでしまって律から少々際どい攻撃を受けそうになり、それを避けながら思い付いたことを実行するために軽い動きで後ろへ跳ぶ。

それと同時に両手で持っていた剣を右手に持ち替え、水魔法で右手の剣にそっくりな氷の剣を作って左手に持つ。


(スピードを武器にするなら、手は多い方がいいよね!)


……というごくごく単純な思考によって私は二刀流にしたのだった。

左手の氷剣を地面に突き刺し、足下に氷を張る。

この氷剣は私の魔力でできているため、手が冷たくないようにしたり滑らないようにしたり出来るし、地面の氷も私自身には影響がないようにすることが可能だ。

逆に律は普通に影響を受けるけれど、律のことだからすぐに対策を立てて問題なく戦闘を続けてしまうだろう。

今したことによって作ることができる隙は一瞬だけ。

その一瞬を逃す手はない。

私は瞬時に律の背後へ回り、今の私に出来る最高のスピードで2つの剣を打ち込む。

律は氷への対応で反応が少し遅れたけれど、背後からの攻撃も、続くその後の攻撃もきちんと防いでいる。

地面に張った氷は律が火魔法で溶かしてしまったし、端から見ていれば律は不意打ちの後であるにも関わらずとても冷静に見える。


(でも……)


顔には出ていなくても、律の瞳には焦りの色が見える。

それもそのはず、律は私の剣をいなしているけれど最初の反応が遅れたせいで余裕はなく、攻撃は挟めていない。

そればかりか小さな傷が増えていくばかりなのだ。

こうなったらもう、1度離れて立て直さないと勝つのはかなり厳しいだろう。

けれど、少しでも油断したらきっと律は全てをひっくり返してしまうに違いない。

だからこそ、律の剣筋が今までになく大きくぶれた時、私は油断なく落ち着いて律の剣を弾き飛ばす。

回りながら剣が飛んでいくのを視界の端に見ながら、私は律の方に剣を向け……ようとして、咄嗟に剣で飛んできた何かを叩き落とした。

にやりと笑った律に私も苦笑を返しながら、やっと律の首の横に剣を突き付けるのだった。



「俺の負けだな」

「さすが律だね、最後にあの近距離で短剣投げるなんて。あれで私が目を瞑ったり隙を見せたりしたら逆転するつもりだったでしょー?」

「当たり前だろ?それでも反応した柚華こそさすがだよ。それに、最後に剣を突き付けるの首の横じゃなくて喉元にすれば良かったのに」

「なんとなく律の喉元に剣を向けるのは遠慮したかったというか……。まぁそれより、傷治さないと!」



左手に握る氷剣を律の方へ向け、水魔法を使う。

かすり傷程度だし、無詠唱で十分に治すことが出来るだろう。

傷が治るようイメージをすると、氷剣から淡く光る水が出ていき、律の体の周りをぐるぐると回っていく。

その水は2~3秒で溶けるように消え、傷跡が残ることもなく全ての傷がきれいに治っていた。

それを確認してから氷剣を消し、剣は鞘に納めてからアイテムボックスにしまう。



「ありがとう。……柚華も手怪我してるぞ」

「え?……あ、本当だ!」



いつの間に怪我したんだろう、全然気づかなかったなぁ。

なんて思いながらしげしげと傷を見つめていたら、律が私の手をとって傷に手をかざした。

さっき私がしたのと同じように淡く光る水が私の手の周りを回り、あっという間に治ってしまう。

律がわざわざ治癒してくれたのが嬉しくて笑いながらお礼を言っていると、リンとナナが近づいてきた。



「お疲れさま。いい勝負だったね」

「お疲れさま!ふたりともすごかったよ!ユズカの氷の剣って、投擲でも使えそうだよね!ナイフとか針とかが足りなくなっちゃっても作れちゃうなんて便利すぎるよ!」

「あ、そっか!それなら、弓とかにも使えちゃうね!あ、でも魔力が足りなくなっちゃった時に困るから、普通の矢とかナイフとか針も持っておいた方がいいかな?」

「そうだな。魔力が減りすぎて他の魔法が使えなくなっても困るし、普段使いじゃなくて、あくまで予備とか戦略とかで使った方がいいかもしれないな」



なるほど、魔法ってそういうことにも使えるんだね。

魔力量が少ないと魔法で作るのはキツいと思うけど、リンとナナの魔力量はかなり多めのはずだし、私と律は言わずもがな。

それに、魔法で作った物だったらイメージで自由に操れるし、投げた後に方向転換させることもできちゃうし、当てたいところに絶対に当てられるよね!

わぁ、そう考えたら魔法で作るとものすごく優秀かも!



「けど、今の戦い方ならやっぱりリツとユズカが前衛で私とリンが後衛なのが1番良さそうだね!私もっと魔法を練習して攻撃手段を増やせるように頑張る!」

「そうだね!……あ、ナナって水と土に適性があったよね?」



それなら、シェリが言ってた水魔法と土魔法を使った魔法が使えるかもしれない!

まだ時間もあるし、ちょっとナナと試してみようかな。



「ナナ、シェリが水魔法と土魔法を使って植物を創り出せるって言ってたの!今から練習してみようよ!」

「女神様が?植物が魔法で創れるなんて聞いたことないけど、面白そう!やってみよう、ユズカ!」



私とナナは律とリンから少し離れて、どうすれば出来るのか考えながら思いついたことを試していくことにした。

うーん……まず、2つの属性を同時に使うのが初めてだからなぁ……。



「まずは水と土の属性を意識して植物をイメージしてみる!」

「そうだね!私もやってみるよ!」



私は地面に両手の掌を向け、右手から水、左手から土の魔力を送り込み、双葉が芽生えるイメージで発動させる。

すると、土が少し盛り上がり、水でできた双葉が完成した。

ナナの方を見てみると、地面が水浸しになり、パンジーのような形の土でできた花が完成している。



「「……」」

「「……」」



沈黙がつらい。

いつの間にかこちらに来て魔法を見ていた律とリンまで無言なのが余計につらい。

方向性を変えないとダメっぽいね……。



「……とりあえず、今のは失敗だな」

「見なかったことにしようね、ユズカ、ナナ」

「「そうだね……」」



あぁ、リンの慰めるような優しい笑顔に逆にへこむ……。

それにこんなとこでナナとハモるなんてすごい微妙な気分だよ、もう!

……けど、私のもナナのも水魔法と土魔法がそれぞれ別に発動したみたいになってるなぁ。

一緒に発動するようにイメージしたはずなのに。

どうすればいいんだろう?



「……あ、2つの属性を一緒に使うんだから、水と土の属性の魔力を混ぜて植物をイメージしたらいけるんじゃないか?」

「それいいかも!やってみる!」



律の提案通り、発動する前に魔力を混ぜてみる。

そしてさっきと同じイメージをしてみると、双葉は一瞬生えてきたけれど、すぐに茶色くなって枯れてしまった。



「なんでだろう?うまくいきかけたように見えたんだけど……」

「ナナもやってみたら?ユズカのと比べたら何か分かるかもしれないよ」

「そうだね!」



ナナも魔力を混ぜて発動させる。

すると、土が盛り上がっただけで止まってしまった。



「あれ?さっきは土だったけど花の形になったのに!」

「ちょっと掘ってみよう。土の中に埋もれてるかもしれないよ」



そう言ってリンが手で盛り上がった土のところを掘っていく。

すると、土の中に少しくたっとなった花が咲いていた。

おぉ、土の中から出てはこなかったけど、枯れてないしきちんと咲いてるね!

けど、同じように魔力を混ぜたのになんでこんなに結果が違うんだろう?



「……あのさ、さっきの結果も含めて考えると、柚華は水、ナナは土が得意属性だろ?」

「うん、そうだよ!」

「確か、得意属性は他の属性よりも少ない魔力で魔法が発動できるはずだ。得意属性と普通の属性の消費魔力が同量だと、得意属性の魔力の方が強く作用することになる。ふたりとも魔力は同量ずつで混ぜてただろ?だから成功しないんじゃないのか?」



あ、そういえばシェリがそんなこと言ってた!

それに、私の方は水が多すぎて枯れて、ナナの方は土が多すぎて埋もれたって考えれば失敗の仕方の違いにも説明がつく。

……ってことは、水属性の魔力を少なくして混ぜてみたらいいのか。



「じゃあ私は水属性の魔力の量を半分にしてからだんだん多くしていくね!」

「私も土属性はそうしてみる!」



半分にしたらさすがに少なすぎて失敗だった。

だんだん多くしていって、水属性の魔力が土属性の7割くらいになったとき、イメージ通りの双葉を創り出すことに成功した。

ナナも7割くらいで成功したらしいので、どうやら得意属性は他の属性の7割の魔力で発動できるみたいだ。

名前がないのは不便なため、律の提案で魔力を混ぜる必要のある魔法のことは『混合魔法』、植物の魔法は『植物魔法』と呼ぶことになった。



「けど、植物の魔法はナナの方が得意みたいだね。私よりもコツ掴むのも早かったし、操るのも上手だし!蔦とか創り出したら魔物の足止めとかになりそう」

「そういえばナナは昔から植物を育てるの得意だったね。僕とナナが同じように水をやっても、ナナの育てるものの方が大きくなったりきれいな花を咲かせたりしていたよ」

「へぇ、ならナナは『グリーンサム』なんだな」

「『グリーンサム』?……って何?」



律の説明によると、『グリーンサム』とは植物を上手に育てる人のことらしい。

それを聞いて嬉しそうに笑ったナナは、これから植物魔法をもっと頑張ると宣言していた。

これでナナの攻撃手段がひとつ増えたね!



「ナナの武器が植物魔法なら、リンの武器は闇魔法だよね!」

『ユズカ、闇属性と光属性の適性は持っている者の数が少ない。光は教会が情報を大切に守り伝えてきたけれど、闇はあまり伝えられていない。よって闇は失われた情報が最も多い属性なんだ。だから僕が色んなことを教えてリンがそれを吸収出来れば、強力な武器になると思うよ』

「そうなんだ!リン、闇の適性は珍しいから、リトの教えを吸収出来れば強力な武器になるってリトが言ってるよ!」

「本当?リト、これから闇魔法の指導、よろしくお願いします」



リンがそう言いながらリトの顔を覗き込む。

リトが『もちろん』と言ったのも、リンには『にゃぁ』としか聞こえないだろうけれど、リンは嬉しそうに微笑んだ。

手合わせや魔法の実験も一区切りついたので、今日はもうこのくらいにしておこうと武器をしまい、失敗してしまった植物(……になるはずだったモノ)は消してきれいに整地し、部屋に戻ることにした。



「……あれ、リトとナルの影響か俺は火属性、柚華は闇属性が操りやすくなってたよな?なら、魔力の消費効率も良くなってたりするんじゃないのか……?」



呟いた律の声は、鼻歌を歌いながら後片付けをする私には全く届いていないのだった。

……後で律にイイ笑顔で実験に付き合わされました。はい。



タイトル予告詐欺です。

本当は今回でギルドの訓練まで終わる予定だったんですけどね。

まさかの手合わせだけで1話書けてしまいました。

びっくりですね。

今回は個人的に律のにやりがツボです。

柚華が律にイイ笑顔で付き合わされた実験によれば、得意属性の魔力消費が普通の属性より3割減なのに対し、リトとナルの影響は2割減といったところです。


次は武器の訓練です。

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