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異世界冒険は姉弟で!  作者: fuluri
第2章 サイトリー大陸
14/23

教会

なんとか1話書けました。

でも、次の話が全く進んでません。

……ヤバイですね。

テスト終わったら即行で仕上げます!

柔らかな日の光が差し込む朝。

窓が開けられたのか、部屋が明るくなり気持ちのいい風が入ってくる。

何かが動く気配を察したのか、黒猫が目を覚ます。

ひとつあくびをした黒猫は、動く気配の方へ歩いていく。

と、黒猫の頭を女の子特有の柔らかな手が撫でた。



「おはようリトちゃん!」

『おはよう、ナナ』



挨拶を返し、いまだにベッドですやすやと熟睡している女の子の方へとことこと歩いて行く。

顔の前に座り、『起きて』と話しかけるが、周りには『にゃぁお』としか聞こえない。

すると、リトが女の子を起こそうとしているのに気がついたのか、着替えやら何やらを準備していたナナがそちらへ向かう。

気持ちよく眠ったままの女の子の肩を揺すって名前を呼ぶと、うっすらと目を開けた。



「ユズカ、……ユズカ!朝だよ、起きて!」

「んー……?ふぁ……おはよう、リト、ナナ」

『おはようユズカ』

「おはよう!」



起こされた女の子―――柚華は、視界に入ったふたり(1人と1匹?)に朝の挨拶をし、ベッドから降りて伸びをする。

んんーっ、よく寝た!

なんだかすごく頭がすっきりしていて、朝から元気が溢れるみたい!

目覚めの良い朝の爽快感に浸っていると、色々と朝の準備をしてくれていたらしいナナが「お着替えの時間だよ!」と笑顔を向けてきた。



「あれ?ナナ、家の仕事はしなくていいってソニアさんに言われたんじゃなかった?」

「そうなんだけど、なんだか落ち着かなくって。家にいる暇な時間はお手伝いさせてくださいってお願いしたの!」

「そっか!えらいねぇ、ナナは早起きで。私朝は早く起きられないんだよ……」

『確かに、いつも律に起こされているね』

(うん、律はいつもきっちり起こしてくれるから助かってるの!)



そう言った柚華の瞳には、律への信頼が見える。

この瞳が意味するのは、律が起こしてくれると信じているからギリギリまで熟睡できるのだと、そういうことだろう。

それを見てとって、柚華が少しぽけっとしているのは、律が柚華に対して過保護気味であることにも原因があるのだろうな、と少し考えてしまうリトだった。

けれど、すぐに『自分もリツと同じくらい信頼されるように頑張ろう』などと考える辺り、リトも似たようなものだろう。



「まぁ、私はお仕事で毎朝早く起きてたからねー。もうそれが習慣になっちゃって、その時間に目が覚めるの!」

「あ、そっか、侍女さんの朝は早いよね!」

「そうそう!朝からやる事がたくさんあるから、すぐに時間が過ぎちゃうの」



主人よりも早く起きているのが当たり前の侍女さんの朝が遅いわけがないよね。

これも一種の職業病ってやつなのかな、と考えている間に服は着替え終わっていた。

水魔法で顔を洗っている間にも髪を整えられ、準備万端。

もうだんだんこれにも慣れてきちゃったね。

でも、旅の間は自分でやるんだから、今から自分でやった方がいいかも?



「ナナ、さすがに旅の間は自分で着替えるからね?」

「えぇっ?!」

「え?」



……そんなに驚かなくても。

というか、こっちが「えぇっ?!」だよ!

旅の間もずっと着替えさせてくれる気だったのかな?

この驚き方だと今から自分でやるって言ったらナナが落ち込みそうだし、この屋敷にいる間はナナに甘えておこう。

でも、旅に出たら自分で自分の準備をするのは譲れない。

……けど、気がついたらナナや律にお世話されてそうだなぁとは思う。

もしかしてそこにリンまで加わるのかな。

そうなったらもう諦めた方が良いような気が……い、いや、出来る限り自分で出来るように頑張ろう、うん。



「どうして?!」

「どうしてって……自分で着替えられるし、ずっとやってもらうと自分がダメになりそうだし……。あ、でも正装とかきちんとしなくちゃいけないときがあったらお願いするからね!」

「がーん……。な、なら、正装の時にものすごく気合い入れることにする!」

「……うん、正装する機会があるといいね、あはは……」

「やったぁ!楽しみにしててね!」



この喜びよう……正装の時が今から不安になってきた。

ナナにものすごく振り回される気がする。

どうしてそんなに喜ぶのかと聞いてみたら、「ユズカは飾りがいがあるから!」だそうだ。

飾りがいなんてないと思うんだけど……私は人を飾ることなんて滅多にないし、よく分からない。

普段から人を飾る人はそういうのがあるのかもしれないね。



「じゃ、着替えもすんだし、朝食に行こっか!」

「うん!律たちはもう準備終わってるだろうし、一緒に行こ!朝食楽しみだなぁー」

「そうだね!リツの部屋にふたりともいるはずだよ!」



ナナがそう言うので、さっそく自分の部屋を出て律の部屋へ向かう。

やっぱり律は既に準備を終えていたようで、リンと向かい合わせに椅子に座ってくつろいでいた。

ただし、リンの服装は今までと同じもの。

……つまり、執事服で。



「リンもナナと同じなの?」

「そうだね。手持ち無沙汰で仕方がなかったんだよ」

「ふふ、そっかそっか!」



笑い混じりに聞いたら、リンが苦笑しながらそう返してくる。

やっぱり双子だね。

ナナと同じようなこと言ってる。

ナナはちょっと目を泳がせながらあはは~と笑っている。



「それで柚華、準備は終わったんだな?」

「……あ、うん!」

「なら、朝食を食べに行こう」

「うん!お腹すいちゃった」



食堂に行くと、ソニアさんの姿はなく、ラックさんが入り口に立っていた。

あれ、ソニアさんはどこにいるんだろう?

今日は少し遅れてくるのかな……?

と思っていると、ラックさんが説明してくれた。



「旦那様は本日お仕事でお出掛けになられるため、お食事にご一緒できないとのことです。明日の昼には帰るだろうと仰られましたので、明日の夕食にはいらっしゃるでしょう」



ソニアさんはお仕事らしい。

今日は帰ってこないなんて、どこに行っているんだろうね?

忙しいのかな。

体とか壊さないか心配だなぁ……。



「そうなんですか。ソニアさんのお仕事は大変ですねぇ……」

「そうですね。けれど、ユズカ様に労われれば旦那様のお疲れも取れましょう。どうぞ労って差し上げてくださいね」

「本当ですか?なら、明日はソニアさんにマッサージでもした方が良いかな?ね、律!」

「……ラックさんに紅茶の淹れ方を教えてもらってソニアさんに淹れるのが良いんじゃないか?」

「あ、良いね、それ!ラックさん、今日帰ってきたら教えてもらえますか?」

「もちろんですよ」



心配しているのが伝わったのか、ラックさんが微笑みながら了承してくれた。

良い提案だったね、さすが律!

マッサージもしたかったけど、それはまた今度にしよう。

あ、朝食が運ばれてきた!

会話が一段落したところできっちり持ってくる辺り、リンとナナに対するラックさんの教育が見える。

味わいながら急いで食べるという器用な真似をしながら朝食を食べ終え、部屋に戻る。

戻ったら出かける準備をして、ラックさんに見送られて出発だ。



「さぁ、まずは教会だね!」

「そうだな。まぁ行き先はあんまり変わらないけど」



教会はギルドから少し行ったところにあると言っていたのだから、それはそうだろう。

道順的にはギルドに先に行く方がいいんだけど、ギルドの帰りだと疲れているだろうから、先に教会へ向かう。

昨日と同じ道を歩いていると、市場に出た。

わぁ、昨日リンが人が少ないって言ってたのは本当だったんだね!

すごく人が多くて、活気がある。



「今日はいつも通りの活気だね」

「市場って良いよねぇ。来ると元気になれる気がするんだ!」

「ふふ、ナナはいつでも元気でしょ?」



でも、ナナの言うことも分かるかも。

私もこの活気を見ていると元気になる気がする。

さらに歩いていくと、ギルドが見えた。

ということは、もうちょっとで教会に着くはず。



「あ、見えてきた!ユズカ、リツ、あそこが教会だよ!」

「……わぁ……!」

「へぇ……」



ナナが指差した先にあったのは、クリーム色の壁に青い屋根のついた綺麗な建物。

そんなに大きくはないが、どこか人を立ち止まらせるような、不思議な雰囲気がある。



「じゃあ中に入るか。……ほら」

「うん!ありがとう律!」



律が扉を開けてくれたので、先に中に入る。

中は日のよく入る明るい空間で、正面に祭壇があり祭壇には何かを乗せた両手を前に差し出した女性の像、上を見れば神秘的な女性の絵。

……あれはシェリ?

少し違うところもあるけど、2つとも特徴はシェリっぽいからきっとそうなのだろう。

教会内を見渡していると、右に教壇があり、その奥の扉から長い衣装をまとったおじいさんが現れるのが見えた。

こちらへ向かってゆったりと歩いてくる。

うーん、神父さんとか司祭さんとかかな?



「おや、君たちは……?どこか怪我でもしましたか?それとも病気ですか?」

「いえ、僕たちは怪我も病気もしていません」

「そうでしたか。それでは、何か用事がありましたか?」

「はい。俺たちは女神シェリに祈りを捧げようと思ってこちらへ来ました」



そう律が言うと、おじいさんは嬉しそうに微笑んだ。

シェリにお祈りしに来たっていうのは、間違ってない。

私たちはお祈りしてシェリと連絡を取るために教会にきたんだしね。

……うーん、間違ってないんだけど、なんというか……ちょっと違うような。

まぁいっか、嘘じゃないんだし!



「こちらでお祈りを捧げるのですよ。私が先にお捧げしますので、その後で私の真似をしてお祈りしてくださいね」



おじいさんは緩やかな足取りで祭壇の方へ案内してくれた。

どうやらお手本としてお祈りをしてくれるようだ。

おじいさんが祭壇の前に立ち、左手を胸に添え、右手で女神像が手に持っている大きな水晶玉のような綺麗な石にそっと触れて、そのまま目を閉じた。

すると水晶玉が光り、おじいさんが目を開けて手を離すと、その光はどこかへと飛んでいった。

……シェリのところに行くのかな?



「こちらの祭壇で先程の私のようにお祈りを捧げれば、きっと女神様に届きますよ」

「分かりました!」



何も言っていないのに初めて来た人だと分かっているのかな?

そうだとしたら、すごいなぁ。

なんて考えていた私は、後ろのリンとナナが驚いた顔をしていたことに全く気づかなかった。



「律、ここは律がシェリと話す?まぁ話せるかどうかまだ分からないけど」

「そうだな。でも柚華も挨拶くらいはしたいだろ?先に話してきたらどうだ?」

「うん、じゃあ話してくるね!」



シェリときちんと繋がるかなぁ。

少し不安に思いながら、祭壇の前に立つ。

おじいさんと同じように水晶玉に触れ、目を閉じる。



(シェリ、シェリ……聞こえる?)

『…………』



返事はない。

やっぱりダメなのかな、と思い目を開け、手を離す。

するとさっきと同じように光が飛んでいった……と思ったら、水晶玉が強い光を放った。



「ひゃっ?!」

「大丈夫か?」



ちょっとびっくりして小さく悲鳴がもれてしまった。

それがきちんと聞こえていたのか、律が声をかけてくれた。

けれど、この光はすごく優しい光だ。

律に少し驚いただけだから大丈夫と伝え、もしかして、と思ってもう一度水晶玉に触れてみる。



(シェリ?シェリなの?)

『……その声はユズカね?あぁ、良かった!教会には私の力が強く働いているから、繋がるとしたら教会しか無いと思ったの。ユズカもリツも無事みたいで、本当に安心したわ』

(シェリも元気そうで良かった!シェリに何かあったのかと思って心配だったの)

『私自身には何もないわ。大丈夫よ』

(そっか!あ、細かい事情とかは律に話してね。私に話してもきっと二度手間になっちゃうから)

『あら、ユズカだってその気になれば理解できるでしょうに。まぁ良いわ、それならリツに分かっていることを全部まとめて話しておくわね』

(うん!じゃあ律と代わるね。シェリ、またね!)



シェリの声からは深い安堵と喜びが感じられた。

良かった、繋がって!

私は満面の笑みで律の方に駆け寄り、交代だと言う。

律はその言葉と表情でシェリに繋がったことを悟ったのか、少し安心したような表情を浮かべながら祭壇の方へ歩いていく。

水晶玉は光ったままだったので、そのまま律は会話を始めた。

結構な時間が経って、ようやく律がこちらに向かって歩いてくる。

水晶玉の光も律が手を離すと同時に消えて、今は元通りだ。

でもびっくりしたのは、おじいさんがずーっとここで待ち続けていたこと。

かなり長く会話していたのに、その場に立ったまま座ることもしなかった。

そんな姿を見ていると、なんだか申し訳なくなってしまった。

ごめんねおじいさん、私たち長電話で。

……違った、長会話?で。



「律、どうだった?」

「色々問題が出てきた。帰ったら話すよ」

「……うん、分かった!じゃー次はギルドに行かないとね!」

「あ、僕たちもお祈りしていくから、少し待っていて」

「いいよ、むしろさっきまでさんざん待たせちゃって、ごめんね」



……あれ、よく見なければ分からない程度だけど、リンとナナの表情が若干固い。

リンとナナは祭壇の前に行き、右手で拳をつくって胸に添え、顔を少し俯かせて目を閉じた。

……あれ?お祈りのやり方が私たちと違う?

疑問に思って首を捻っていると、1~2分程度でふたりは戻ってきた。

ナナもリンも戻ってくるときにおじいさんの方をちらっと見て、すぐにこちらに向いて笑顔になった。

おじいさんは何も変わっていないけど、どうしておじいさんの方を見たんだろう。



「じゃー行こっか、ユズカ、リツ!」

「う、うん……。あ、おじいさん、ありがとうございました!」

「いえいえ、熱心に祈りを捧げているのを見て嬉しく思いましたよ。またいつでも気の向いたときに来てくださいね。では、女神シェリの祝福があらんことを」

「はい、また!」



おじいさんは最後まで穏やかに微笑んでいて、そのゆったりとした雰囲気はまさに聖職者って感じだ。

……えーっと、聖職者はプレートルだっけ?

けれど、律とリン、ナナがおじいさんに対して少し緊張、もしくは警戒しているのを見て、ちょっと不安になった。

どうしたんだろう、みんな。



「……ねぇ律、どうしてあんなに緊張してたの?」

「それも帰ったら話すよ。でもまぁ、多分大丈夫だ」

「そっか、分かった。とりあえずはギルドに行かなくちゃね!」



ここでぺらぺらと話すようなことじゃないってことかな。

それなら帰ってからの方が良いだろう。

それに、今からギルドで武器や魔法の訓練があるし、律は私がそれに集中できなくなるかもしれないと心配してくれているんじゃないかな。

でも、律が『多分大丈夫だ』って言うくらいだからきっと心配ないと思うんだよね。

まぁ、律の思いやりはありがたく受け取っておこう。



「着いたー!」

「教会から言うほど歩いてないだろうに」

「いーのいーの!」



ギルドの扉を開け、中に入る。

すると、正面の受付嬢さんが、あっ、といった感じの顔をした。

ん?と首をかしげると、こちらに駆け寄ってきて、話しかけてくる。



「"桜月夜の双樹"のユズカさん、リツさんと、"天花の芳魂"のナナさん、リンさんですね?」

「はい、そうです!」

「どうかしたんですか?」

「こちらに案内するよう言われています。ついてきてくださいね」



と言われ、2階に連れていかれた。

昨日と同じ部屋に入ると、そこにはギルドマスターがいて、受付嬢さんは私たちをこの部屋に送り届けたあと、速やかに自分の仕事に戻っていった。

ギルドマスターは私と律に……主に律に対して満面の笑顔だ。

……あー、呼び出された理由が分かった気がする。

思わず律にじと目を向ける。

絶対に、絶対に、ぜーったいに律のせいでしょ、これ!



やっと教会に来ることができました。

シェリとお話する手段が確保できて律はほっとしています。

そして、お祈りの仕方。

柚華以外の3人はおじいさんを少し警戒しています。

柚華は不思議だな、としか思っていません。



次は訓練(……の予定)です。

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