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異世界冒険は姉弟で!  作者: fuluri
第2章 サイトリー大陸
10/23

ミゼの街

お屋敷を出た私たちは、案内してくれるリンとナナについていく。

太陽の高さからして、今は大体朝の8時から9時くらいかな。

やっぱり外はいいね!

爽やかな風がすごく気持ちいい。

昨日は馬車に乗っていたからあまり見られなかったけど、ソニアさんのお屋敷の周りには豪邸が多い。

ソニアさんのお屋敷が1番大きいけれど。

私が日本で見たことのなかった西洋風の豪邸が建ち並ぶ様子は、眺めるだけでも目に楽しい。



「あ!お店が見えてきた!」

「お店……っていうより、市場っぽいな」

「あぁ、リツの言う通り、あれは市場だよ」

「食べ物とか、雑貨とか、本とか……色々売ってるから、ふらっと立ち寄って見るだけでも暇潰しになるんだよねー」

「今日はそこまで人が多くないみたいだ」



しばらく歩くと、賑やかな場所が見えてきた。

リンはああ言っているけど、私から見れば十分に多いと思う。

これで少ないなら多い日だとどれくらいいるんだろう。

そんなにいたら前に進むのだけでもとても苦労しそうだ。



「わぁ、フルーツがいっぱい!」

「昨日の夕食にでてたトロナはあれだよ、ユズカ。あの薄い緑色のやつ」

「……見た目はメロンなんだね……」

「え?」

「あ、ううん、なんでもない!」



思わず心の声がこぼれちゃった。

でも、本当にメロンだ。

これで味はパイナップルだなんて、不思議だなぁ。

……見た目はパイナップルで、味がメロンっていうのもあるのかな。



「あ、じゃあ、ティコは?どれ?」

「ティコは、あの丸くて赤いやつだよ!」

「……りんご?」

「わ、わぁーっ!かわいいね!」

「だよね!かわいいし甘くて美味しいから私ティコ大好きなんだー」

「ティコもトロナもこの辺にしかない名産なんだ」



今度は律が心の声をこぼした。

もう!私ならともかく、律まで!

確かにりんごが小さくなったみたいだけど!

ちょっと大きめの声をあげて誤魔化したけど、気づかれてないみたいで良かった。

別にリンとナナには事情を隠さなくてもいいかなとは思うけど、まだ決心がつかない。

でも、律と相談して、そう遠くないうちに話したいな、とは思う。

ティコとトロナ、この街を離れても食べられるようにたくさん買っておきたいなぁ……。



「あそこは何の店なんだ?」

「あぁ、あそこはロスの魔石屋だよ。他にも魔石を売ってるとこはあるけど、買うならあそこが1番だよ。種類も豊富だし、質も良いし、店主が色々と教えてくれて親切だから」



たくさんの綺麗な石が並んでいるお店を見つけて、律が尋ねる。

魔石屋さんかぁ。

私のネックレスについてる魔石みたいな感じなのかな。

あ、そういえば、魔法陣って最初から描かれてるのかな?

それとも、魔法陣を魔石に描く専門の人とかいるのかも知れないね。

私でもできるのかな?

うーん、行ってみたいなぁ~。

今度、時間のあるときに律たちと一緒に行ってみようっと!

あ、あそこは何だろう?



「ナナ、あそこは何が売ってるの?」

「あそこはねー、クランの魔術具屋さんだよ!」

「魔術具?どんなのがあるの?」

「そうだねー……色んなのがあるけど、私が面白いと思ったのは、投げつけるとぶつかった物をひたすら『お美しい……!』とかって褒めまくるキャンディーとか、乗ると制御不能で空高くまでめちゃくちゃに飛んでいっちゃうホウキとかかな!しかもホウキだけなぜか元の場所に戻ってくるの」

「え?!それ、誰が使うの?!」



キャンディーに褒められても微妙な気持ちになるだけだよ!

絶対変な空気の沈黙が降りるやつでしょそれ!

あと、この世界でもホウキは飛ぶものなのか……。

いや、地球では飛ばないものだけどね。

何で暴走するホウキを作ったのかな?



「……ナナ。変なのばっかり紹介するんじゃない。もっと使えるやつもたくさんあるだろう?」

「えー、こっちの方が面白いでしょ?」

「そういう問題じゃないから。ユズカ、クランの魔術具屋にはたくさんの魔術具があるよ。中にはナナが言ったみたいな変なのもあるけど、火が出る短剣とか、きちんと飛べるホウキ、魔法陣入りの魔石を使ったアクセサリーや武器、防具など役に立つものも多いんだ。また今度時間のあるときに見に来よう」

「そうだね!色々あって楽しそうだし、今度は魔術具屋さんだけじゃなくて市場の色んなお店に遊びに来ようね!」



火が出る短剣かぁ、魔力を使うのかな?

火の適性を持ってない人には便利だよね、きっと。

ホウキも、ちょっと乗ってみたい気がする。

魔女っ子気分と言うか……なんか、こう、夢がある!って感じがするからね。

まぁ、律に頼めば翼で飛び回れるけど。

あ、教会のこともついでに聞いておこう!



「ねぇナナ、教会ってどこにあるの?」

「教会?ギルドから少し歩いたところにあるよ!」

「そっか!ありがとう!教会って何をしてるの?」

「教会は怪我人や病人の治癒をしているよ。だから、光魔法を使える人はプレートルになることが多いね。それと、薬を作れる人も」

「プレートルって何だ?」

「んー、教会でお祈りしたり治癒したり、女神の教えを説いたり、神託を受けたり……女神様にお仕えする人だよ!」



つまり、プレートルっていうのは聖職者ってことかな?

みんな、怪我をしたり病気になったりしたら、教会に行くらしい。

私も光魔法が使えるようになる前に病気になったら教会に行こう。

水魔法は軽い怪我や病気は治せても深い怪我や重い病気は治せないからね。



「あっ!ギルドが見えたよ!」

「わっ、ナナ!」



曲がり角を曲がってギルドが見えた瞬間、ナナが私の手を取って走り出した。

びっくりしたけど、走ってたら楽しくなってきて最後はナナと競争してしまった。



「くっ、ユズカに負けた……!」

「ふっ、勝った……!」



ナナが悔しそうに私を見て、壁に片手をついてがっくりのポーズ。

それに私は背を向け、仁王立ちで片方の手を腰にあて、もう片方の手を高く突き上げて、勝利のポーズ。

そんな感じで私たちがふざけていると、明るい赤の髪のお兄さんと、黄緑の髪のお兄さんに声をかけられた。



「君たち、楽しそうだね」

「良かったら俺らと一緒に騒がない?今から打ち上げなんだよ」

「わぁ、楽しそうですね!ね、ナナ!」

「そうだね!」



楽しそうにくつくつと笑っているお兄さんたちの瞳に悪意はない。

私たちが楽しそうに騒いでいたから興味をもった、ってところだろう。

打ち上げだって!

部活終わりとか文化祭の後とかにやると何であんなに楽しいんだろうね?

なんか打ち上げって聞くとテンションが上がる。



「打ち上げってことは依頼が終わったんですか?」

「そうそう。一緒に依頼をこなしたいくつかのグループで酒場に行くんだけど、君たちみたいなかわいくて元気な子がいたら盛り上がるよ!」

「だから一緒に行……」

「「何してるんだ」」

「「あ゛」」



やばい。背後からものすごい威圧感を感じる。

ギギと音がしそうな動きで振り返ると、やっぱり怖い笑顔の律とリンがいた。

笑ってるのに怖い。

なんてことだ、リンも律と同じ怒り方なのか……!!

私たちが石になったみたいに固まっていると、さっき声をかけてきたお兄さんたちが私たちの前に出た。



「なんだ?お前ら。この子たちが怖がってるだろ!」

「この子たちを傷つけるつもりなら俺らが相手になるぞ?」



違う!お兄さんたち守ってくれるのはすごくうれしいけど違うの!

それ、私たちの弟たちだから!

ほら、律とリンが面食らった顔してる!

やがて、律とリンは状況を察したのか、諦めたようにため息をついた。



「……はぁ、そっちの髪下ろしてる方……柚華は俺の双子の姉だよ」

「で、こっちのナナは俺の双子の姉だ」

「……え?」

「は?」

「「ご、ごめんなさいぃぃぃ!」」



驚くお兄さんたちに申し訳なくて、ナナとふたりで全力で謝る。

会ったばかりなのに守ってくれた優しいお兄さんふたりに事情を説明してもう一度謝ると、笑って許してくれてまた今度一緒に騒ごうと言ってくれた。

なんて良い人たちなんだろう。

……喜んで了承したら、律とリンに俺たちも一緒に行くからな、と睨まれながら釘を刺されたけど。

ちなみに、お兄さんたちの名前は、赤い髪の方がセイルで、黄緑の方がロトだそうだ。

呼び捨てで良いと言われたのでそう呼ぶことにする。

年も3歳しか変わらないみたいだし。



「俺たちの姉が面倒かけて申し訳ない」

「ごめんなさい!」

「堅い堅い、もっと横柄なくらいじゃないと冒険者としてやっていけないぞ。それに、声をかけたのはこっちだしな」

「そうそう。一緒に仕事できるのも楽しみにしてるよ、なぁセイル」

「あぁ。まぁでも登録とか色々やることあるだろうし、まだまだ先になるな」

「分かったよ、俺たちも楽しみにしてる!」

「律の言う通り!早く一緒に仕事ができるように頑張るね!」

「あぁ!じゃ、またな、ユズカ、ナナ、リツ、リン!」

「今度は俺らの仲間も紹介するよ!」

「うん!ユズカとリツとリンと4人で楽しみにしてる!」

「セイル、ロト、またね!」



セイルとロトと別れた後、私とナナはにっこりと笑って威圧してくる弟たちからの視線に耐えていた。

……うぅ、視線を合わせられない!



「……ユズカ。知らないやつに声かけられてもついて行くなっていつも言ってるよな?」

「うっ、そうですね」

「セイルとロトは良い人だったから良かったけど、もしも人攫いとかだったらどうするつもりだったんだ。ちょっと目を離しただけなのに……はぁぁ」

「ご、ごめんね」

「……俺はもうしばらくは柚華から目を離さない……っていうか、離れないことにする」



深々とため息をついた後、据わった目でそんなことを言ってきた。

それは私としては大歓迎なのだけど、誘拐されかけた子供でもあるまいし、大丈夫なのに。

……律の中では誘拐されかけたという認識なのだろうか。

自分なりに良い人そうだと思ったから普通に話してただけなのに。

信用ないなぁ、もう。

まぁでも、律がそばにいてくれるのは嬉しいので、黙っておく。



「ごめんね、律!」

「……はぁぁ」



いつも通り、ハグして仲直り。

『これで誤魔化されると思うなよ』と律の目が言っているけど、ちゃんと背中に手を回してくれているので、問題ないだろう。

ナナとリンの方は私たちより早く終わったようだ。

律と離れて、そっちへ行く。



「よーし、ギルドに入ろー!」

「おー!」

「「……(コクン)」」



ナナとふたり拳を突き上げていると、律とリンが無言で頷きあっていた。

何なんだろう?

よく分からないけど、仲良いね!

……と思っていたら、律に手を繋がれた。

ナナはリンに手を繋がれている。



「こうしておくのが1番良い」

「リツの言う通りだね」



やっぱりよく分からないけど、嬉しいからいいや!

ギルドの扉を開けて、ギルドの中に入る。

そこはとても活気があって、わくわくするような空間だった。

正面に受付カウンターが4つあって、それぞれにとっても美人な女性がいる。

あそこに行って依頼を受けるのかな?

あんなにきれいな人だと好きになっちゃう人も多そうだなぁ。

左の壁には紙が整然と並んで掲示されている。

あれが依頼かな?

左の奥の方には大きな扉があって、出入りする人が結構多い。

あそこを出たらどこに出るんだろう?

右の方には酒場がある。

朝から飲んで騒いでる人がいるね。

セイルとロトもここで飲むのかな?

……なんか、冒険者ギルド!!って感じのところだね。

どんな感じだよと自分でも思うけど、そんな感想しか浮かばない。

清潔感はある程度あって、太陽の光がよく入る明るい場所だ。

冒険者だけじゃなくて、依頼人も来るからかな?



「冒険者が結構いるな」

「朝、3の鐘の前後が1番冒険者の人数が多いんだよ」

「今は3の鐘と4の鐘の間くらいだから少し減ってきたくらいかな?」



この世界の時間は、地球で言うと大体3時間ごとに鐘が鳴るらしい。

つまり、今は10時30分前後ということだ。

1日合計8回鳴るそうなので、1日は大体24時間なんだろう。

地球とあんまり変わらないみたいで良かった。



「じゃあ、登録するか」

「受付にいる女の人に話しかければ良いのかな?」

「あぁ、基本的に何かあったら受付に行けばいいと旦那様がおっしゃっていたよ」

「そうそう、問題があったら解決しないといけないからギルドの受付嬢はきれいでそこそこ腕のある人が多いんだよ!」

「きれいで強いってかっこいいね!」

「じゃ、とりあえず受付に行けばいいんだな」



会話しながら受付に向かう。

受付嬢さんたちがふわりとした微笑を浮かべて立っていた。

受付の周りを見ると、依頼を完了して帰ってきたらしい人や、依頼を受ける人、新人冒険者っぽい人もちらほらいる。

私たちと同じで今日登録する人もいるんじゃないかな。

ちょっとドキドキしながら受付嬢さんに声をかける。



「あの、冒険者の登録がしたいんですけど……」

「はい。冒険者登録をする人数を教えてください」

「4人です!」

「では、ひとりずつこちらの紙にお名前と使う武器、ツァオベリーであれば使える魔法、特技などを書いてください」

「あ、僕たちはまだ適性検査を受けていないので、魔法が使えるかどうか分かりません」

「それなら、先に検査を受けることもできますけれど、どうしますか?」

「先に受けようかと思うけど、どうする?」

「賛成!」

「その方が良さそうだな」

「そうだね、律!先に受けよう!」

「皆さん検査を先に受けると言うことで良いですか?」

「はい、それで良いです!」

「それなら、そちらの階段から2階に上がって扉に3と書かれている部屋の中に入って少し待っていてください」



手で示された方にある階段を登り、2階へ上がる。

2階にはいくつか部屋があって、扉に番号が書いてある。

私たちは3の部屋を探し、その中に入る。

大きなテーブルが真ん中に置いてあって、その周りに椅子が置いてある。

そのうちの4つにそれぞれ座って待つ。

待つのは全然良いんだけど……。



「ねぇ律?手、いつまで繋いでればいいの?」

「離しても大丈夫だと俺が思うまで」

「大丈夫だよ!」



胸を張ると、疑わしそうに見られた後、しぶしぶといった様子で離してくれた。

大丈夫なのに。

っていうか、手繋いでないと大丈夫じゃない17歳はなかなかいないと思うんだけど。

え、そのなかなかいない17歳が私だってこと?!

がーん。それはショックだよ、律!



「……そこまでは思ってないぞ」

「嘘だ!棒読みだもん!っていうか思考を読まないで!」

「しょうがないだろ、柚華は顔に考えてることが出るんだから」



そんなやり取りをしながら待っていると、ノックの音が聞こえて、扉が開く。

中に入ってきたのは元冒険者と思われる身のこなしのギルド職員で、その手には何やら色々入った箱を持っていた。

……何が入ってるんだろうね?

っていうか、両手塞がってるけどどうやってノックしたんだろう?



ギルドに行くついでにミゼの街をちょこっと散策です。

律とリンは走り出した姉たちに若干呆れながらゆっくり歩いていたら、ちょっと目を離しただけなのに男ふたりに絡まれている姉たちを見つけてびっくりです。

律は柚華が初対面の男に守られていたのを見てちょっとすねました。

セイルとロトがいい人で安堵しています。



次は適性検査です

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