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文学フリマ短編賞 応募作品

たゆたう

作者: 些稚 絃羽

巡り巡る誰かの後を追いかけて

いつの間にか取り残されて


僕はひとり


広がり伸びる景色はまっさらで

足跡のない積雪のようだ


それを壊す僕は二度と取れない黒い染み

巻き込むようにやがてすべてを染めるだろう



許される謝り方をどうか教えて

それに応えてくれたのは

毛糸で縫われた案山子の口


おいでよ そう誘われたのに

雑踏に埋もれる駅前に 僕を待つ人はない

腰かける場所を探してみれば

見知らぬ体温が心地良い


どんな僕なら愛されたの

どんな僕なら愛せるの

僕に生まれてきたその時から愛されないと決まっていたの


冷えた身体の上に五周回った鐘が鳴る

愛の音がこんな風ならその場所にすぐに気付いたのに


じっとうずくまってもお腹はすいて

陽が暮れたら昼より寒くなって

寒いと肌が痛いんだね


「何も知らない僕でごめんね」

「愛したくない僕でごめんね」

教えてくれてありがとう

こんな風で良かったかな


売り歩くマッチは持たないけれど

灯る街灯が微かな夢を見せる

こんな色した誰かの顔が僕に笑った気がしたんだ


ありがとう 最後に良き夢を

幸せだったと言えるだろう

こんな遠い僕を照らして許してくれてありがとう


きっと僕という染みは薄らいで

真っ白な雪がまた積もるから

大地とひとつになっていく


誰かが立ち上がるための大地に溶け出す

そんな心地を愛と呼ぶなら

なんて素敵なことだろうね


なんて愛しいことだろうね


 

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