番外 秀才兄と天才弟〜過去の苦悩〜
はっきり言えば、僕の弟ユリウスは天才だった。
幼少期から何をやらせても上手くて……天才と言われていた。
一番初めにその兆しが見えたのは、ユリウスが五歳の時だった。
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僕が家庭教師に与えられた山のような宿題と格闘してた時…ユリウスが「遊んでくれ」とねだりに来た。
僕は「宿題が終わんないから、ダメだよ〜」と答えて、残っている宿題の山を指差した。
その後…今、やっていた宿題を終えて次に手をつけようとしたら……。
「やっといたよ。終わったから…お兄ちゃん、俺と遊ぼ‼︎」
「えっ⁉︎」
目をキラキラさせて、ユリウスはそう言う。
その時の僕は十三歳。
五歳児が解けるような問題はやっていなかった。
なのに…ユリウスは簡単に解いてしまって。
なんで出来たの?と聞いたら…図書館の本を全て読んだからだと答えた。
僕の弟は……天才だと強く実感した日だったー。
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天才の弟を持つと兄としては中々に身分の狭い思いをするものだった。
僕は努力で補うタイプだったから…秀才とは呼ばれたが、弟に敵うはずもない。
王位継承争いでも、兄として第一継承権を持つ僕より第二継承権を持つユリウスを王にしようとする者達もいた。
でも…ユリウスはそれを好ましく思わなくて。
〝俺は俺がしたいことをするんだ。王になんてなったら出来ないだろ〟
そう言って、王位継承を蹴った。
王になれば…どんなことがあっても、将来は安泰であると言うのに……ユリウスは王弟であれど、働くと言って自由度の高い第二首都の役所の勤務を仕事にしたんだ。
僕としては…そう言ってのけるユリウスがカッコ良くて……多少、憎くも思えたんだ。
それもそうだよね。
皆がユリウスを見ていて。
僕は頑張ってやっと見てもらえる程度。
だから…ちゃんと皆に認めてもらおうと思って、頑張って。
認めてもらっているユリウスは、認めてもらわなくていいと言うのだから。
悔しかった。
自分の何にこんな汚い感情があるなんて…信じられなかった。
でもね…今はユリウスがあの時、王位を継承するって言わなくて良かったと思うんだ。
汚い兄の感情じゃないよ。
それは……今、《銀翼館》で働くユリウスはとても楽しそうだから。
エヴァ君、ノヴァ君、レオン君にマルク君……それにメイドちゃん。
報告で聞くユリウスの様子は…とても幸せそうだから。
だから…あの時は、憎らしく思えたりもしたけど…弟が幸せで良かったと思うんだ。
でもね、そろそろ…その〝気持ち〟には気づいた方がいいと思うんだ。
僕が弟に唯一、勝てたこと。
それは……弟が気づいていない気持ちに先に気づけたこと。
ちょっと嬉しいし……自分で気づかないとダメだと思うから、教えないけど……。
僕はちゃんと見守ってるよ、ユリウス。




