表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
銀翼館のメイド奮闘記  作者: 島田莉音
7/29

恋慕価値観







明るい日差しが教会に差し込む。


ラナは真っ白な花嫁衣装に身を包んで…十字架の前で彼が訪れるのを待つ。


流れるマーメイドラインのドレスにマリアベール…灰色の髪は、ピンクのバラ飾りで結い上げられていた。


晴れやかな春の日…花嫁に相応しい姿だった。




(……あれ…なんで…私こんなところに……)




呆然とする頭のなかで、ただ待つことしか出来ない。


何故、こんなところにいるのか?


(………まるで…私が…結婚するみたいじゃ……)



「ラナ、結婚おめでとう」

「………おめで…とう…」

「綺麗だなっ‼︎」

「馬子にも衣装ですね」

後ろで彼らが祝いの言葉を言ってくれる。

ラナは何を言っているの?と思いながらも…心に反して、顔は微笑む。

「………ありがとう」

心と行動が乖離する。

頭の中で何で?という言葉が渦巻く。

「お、花婿が来たぞ」

皆の視線がそちらに向く。

そこからやって来たのは……同じく真っ白な花婿衣装に身を包んだ…〝あの人〟。

顔が日差しに遮られてよく見えない。






「ラナ」






優しい声が…耳に響くとドクンッと胸が高鳴る。

じわりと視界が涙で前が霞んだ。

彼がこちらにゆっくりと歩いて来て…目の前に立つ。

涙が霞んで彼が見えない。

でも…優しいその手が…安心させるように頬を撫でる。

「……幸せになろう…いや、幸せにするよ……ラナ」

「…………うん…」

ゆっくりと…唇が近づいて……。










「………………………うわっ⁉︎」

ラナは勢いよく起き上がりながら、目を覚ます。

荒い呼吸とバクバクと鳴る心臓の音で…胸元の服をぎゅうっと握り締めた。

「…………何…あの夢…」

ラナは顔を顰めて、両手で顔を覆った。

「……きっと…昨日のあの人の……告白の所為だわ……」

ブライアンの告白の所為であんな夢を見てしまった。

そうとしか考えられなかった。

でも……相手は………。

「っ‼︎」

ラナは思いっきり顔を振る。

そして…夢を忘れるように急いで着替えるのだった。









*****






「おはようございます、ラナさん」



「…………おはよう…ございます…」

本館で、幹部及び役人方に紅茶を入れて給仕している時…ブライアンは満面の笑みで挨拶をして来た。

「今日もお美しいですねっ‼︎」

ラナは後ずさる。

そして…ラナは昨日のことを思い出したのだった……。









◇◇◇◇◇


◇◇◇◇◇









目の前の初対面の男に求婚された、ラナは険しい顔で腕を組む。

『いや、知りもしない人間と結婚なんて出来る訳ないでしょ』

『………‼︎』

ラナの言葉ももっともだ。

しかし…ブライアンは諦めない。

『じゃあ、結婚を前提にお付き合いを…』

『それも知りもしない人間とは出来ない』

初対面の人間とそんなことするなんて、ラナに出来る訳なった。

国王にも初対面だからという理由で、こんな態度を取っていたのだ。

それがブライアンであろうと関係ない。

『なら、ボクを知ってもらうためにも友達・・からお願いしますっ……‼︎』

どんなに冷たい対応をしようとブライアンは諦めようとしない。

はっきり言って…初対面でそこまで言ってくる人は……怖いというか…いい印象を抱けず好きになれないのだが…余りのしつこさに、本気で困惑して…後ずさった。

その時の顔は…本気で怯えていたと思う。

そんなラナを見てか、エヴァとノヴァが彼を追い払ってくれて…話は有耶無耶うやむやになった。









◇◇◇◇◇


◇◇◇◇◇








余り好きでもなく…あんな有耶無耶にしたし……それに加えて夢を見た後だからか、ラナは少し顔を顰める。

ブライアンは「大丈夫ですか?」と首を傾げる。ラナは頷いて応じた。

それを見て安心した彼は少し頬を赤くしながら…口を開く。

「ラナさん…良かったら今日、一緒にお出掛けでもいかがですか?」

「いや、仕事中なので」

即答で答えるラナにブライアンは明らかな落ち込みを見せる。

メイドは勝手に行動出来るような仕事ではない。なのに…出掛けるなど、無理だろう。

「ラナ〜少しいいか?」

そんな時、レオンが声を掛けてきた。

ラナは救いの手だと思い、「何かな?」と元気よく返事をする。

「生活支援を受けてる公共施設…要するに孤児院に視察に行くんだけど、子供がいるから女の子のラナにも付き添って欲しいんだよ」

「いいよ」

そちらも即答で答えると、ブライアンが「あのっ…」と声を掛けた。

「ボクも行っていいですかっ……⁉︎」

「………えっ…⁉︎」

その言葉にラナは思わず嫌そうな顔をしてしまった。

「…………え?遊びじゃないんだけど…というか…お前は誰?」

「ブライアン•ロドリゲスです」

「あぁ…双子が言ってたラナに求婚した商会の会長か…」

レオンはそう呟くと、険しい顔でブライアンを見つめる。

いつものレオンからは見られない…真面目な顔だった。

「あのさ……オレは孤児院の修繕申請の下見と見積もりをしに行くんだぜ?ラナは女の子だから、子供達と仲良くなって要望とかを聞いてくれると思って誘ってんだけど…お前は一緒に行って何をする気なんだ?」

普段は気の抜けている彼だが…仕事をするに当たって真面目にやっている。

初めて仕事中のレオンを見た時は驚いた。

全然、性格が違うのだから。

真面目に仕事をしているレオンだからこそ…関係のないブライアンの進言が、怪訝に感じたのだろう。

「さっき聞いてた感じだとさ…ラナを出掛けるのに誘ってたよな。それを断られて…ラナが孤児院に行くからついてくにしか見えないんだよ」

「それは……」

「迷惑だから、そういう下心目的って」

清々しい程にハッキリと言うレオンに、ラナは内心感動していた。

「いえ…我が商会では慈善活動として孤児院などの支援を行っています。そのための下見…というのは駄目ですか?」

伺うようなブライアンの顔に、レオンは眉を寄せた。

「………君の商会ところ、この国では支援活動なんてしてないよな。それが急にどうしてだ?世界を股に掛けるロドリゲス商会がたかが一国の一つの孤児院に限り支援するのか?」

「この国で支援活動を始めるための第一号とする訳です」

「…………………」

レオンとブライアンは睨み合うように見つめ合う。

横から見ていたラナはハラハラした。

先に痺れを切らしたのは……レオンだった。

「……なら…勝手にすればいい」

「……本当ですか…⁉︎」

「だが、拠点が他国の商会がこの国の生活に関わるとなれば…生活部門オレのところだけじゃ管轄外にもなるし、荷が重すぎる。外交部門マルクのとこにも来てもらわなきゃ……」

レオンは呆れたように頭を掻きながら、そう呟く。

そうして、三人で外交部門の部屋に向かうが……。






「無理ですよ」






マルクは半ギレでそう言う。

外交部門の部屋では沢山の役人が行ったり来たりしていた。

「現在、第二首都ここに宿泊される他国の王族の方のための調節中なんです。警備体制や宿泊施設…その他諸々やらなきゃいけないことが多いんですよ。急にそんなことを言われても行けやしません」

そうとだけ言うと他の役人に声を掛けられて書類を見たり、指示を飛ばしたりと忙しそうにする。

「邪魔なんでとっとと出て行って下さい」

そう言われて追い出された三人は…部屋の外で顔を見合わせた。

レオンは疲れたような顔をすると、ブライアンに告げる。

「諦めてもらうしかないな」

「………そんなっ…」

ラナはそこまで執着するのは何故だか不思議で仕方なかった。

その時……レオンの背後に人の姿が現れた。

「……………おい…メイド…」

「うわっ⁉︎」

「ユーリっ⁉︎」

レオンは至近距離の背後で聞こえた声に飛び跳ねる。

ラナはやつれ気味のユリウスを見て、心配そうに近寄った。

「……………すまん…俺に…なんか……やる気が…出るものを…」

まるでしかばねのような彼に、ラナは本当に心配になる。

「一体どうしたのっ⁉︎」

「………ぅ…」

ユリウスが凄まじく荒んだ顔を歪める。

そして…両手で顔を覆った。

「マルクがっ…無駄に仕事を押し付けやがるっ……‼︎俺のっ…研究する時間がっ…‼︎」

「……………え?」

「あぁ…畜生っ……‼︎総合部門の責任者じゃなければっ…外交部門マルクの手伝いなんざしなくて済むのにっ……‼︎」

ラナは真顔になる。

心配して損をした気分だ。しかし…何か具合が悪くてやつれていた訳じゃなくて、安心した。

「総合部門……?」

ブライアンは不思議そうにユリウスを見つめる。ユリウスも見たことがない顔を見て、首を傾げた。

「………ん?誰?」

「ブライアン•ロドリゲスだって。昨日、双子が言ってた…ラナに求婚した人」

「あぁ…メイドに求婚した人ね」

レオンに教えてもらって、ユリウスは観察するようにマジマジと見る。

「………で?その求婚者がなんでここにいるんだ?」

「その……孤児院の視察に同行したくて…」

「何故?」

「支援活動の一環としてです」

「ふぅん……」

レオンはブライアンが言っていた、孤児院への支援活動について話をする。勿論、外交部門のことも。

「どうしてもついて行きたいんです」

ブライアンは真剣な顔でそう告げる。

「……あんたが関わるとなったら、外交部門は必須だ。でも、外交部門は今、手一杯だから無理だろう。ちゃんと引き際ってのを考えた方がいいと思うけどなぁ…」

引こうとしない彼を嗜めるようなユリウスの言葉。でも、ブライアンは引こうとしない。

暫く睨み合い…ユリウスは呆れたように溜息を吐いた。

「……はぁ…仕方ない…俺も一緒に行こう」

それを聞いたレオンは目を見開く。

ラナも目を見開いた。ここ数日を見ていただけでも…ユリウスの仕事量は尋常じゃない。

総合部門だから故に、全てを管理しているのだから当たり前だ。加えて、今までラナ専用武器の製作をしていたし…それだけでなく、魔法と科学の研究も一人でやっているらしい。

それこそ…こんな男一人のために割く時間が惜しいくらいに、忙しいはずだった。

「でもっ…忙しいだろ…⁉︎」

レオンが心配したような、泣きそうな顔でユリウスに言う。

これ以上、無理しないでくれと懇願しているように。

「はっきり言えばな」

「孤児院に視察に行く時間があったら…総合部門ユリウスの仕事は……」

「仕方ないだろう……どっかのいい歳した男が諦めようとしないから…代わりに俺が徹夜すればいいだけだ」

そう言ったユリウスは頭を掻きながら、先に歩き出す。

その後ろ姿を見て…ブライアンは嬉しそうに微笑んだ。

「これで一緒に行けますね、ラナさん‼︎」

「………っ…‼︎」

仕事で行くと言っているのに…彼はまるでラナと行けることを喜んでいるかのようだった。

その笑顔を見て…ラナは心の中に嫌な気持ちが広がっていく。

レオンも同じだったらしく…怒気を放つ顔で彼を睨みつける。

「………………最悪だ…」

そう呟いたレオンはユリウスの後を追う。

「行きましょう、ラナさん‼︎」

ラナ達もその後を追うのだった……。







*****






孤児院での視察は、順調だった。

国から支援されている公的孤児院での修繕申請についてや近辺報告。

そして…ブライアンのロドリゲス商会からの支援についてなど……もちゃんと話したらしい。

話が分からないラナは子供達と遊んで、子供達目線の意見を集めていた。

「そっちはどうだった?」

孤児院の外で待っていたラナは出て来たレオンに聞かれて、子供達から聞いた話を話す。

「最近、ここら辺で強盗騒ぎがあったらしくて…怖がってるみたい」

「なら、巡邏兵じゅんらへいの配備を変えよう」

「後…仲間増えたとも言ってたわ」

「孤児が増えたってことか……」

後から出て来たユリウスも険しい顔で聞く。

「出来ればちゃんと家族で暮らせて…孤児なんてならなくて済む国にしたいんだけどな…」

悔しそうなユリウスに、ラナも同感する。

何があって孤児になったか分からないが…血の繋がる家族といれた方がいいと思う。

「ラナさんは子供達を信用させて話を聞き出すのが上手なんですね‼︎」

ユリウスと共に出て来たブライアンが真面目な話を遮るように声を掛けてくる。

ラナは険しい顔で見つめ返した。

「……………喧嘩売ってるの…?」

「そんなまさか‼︎」

本人にはその気がないのかもしれないが…今の言葉は少しイラッとした。

まるで…子供を利用していると断言するように聞こえたからだろうか。

「…………オレ…こいつ嫌いだ…」

レオンが小さく呟く。ユリウスも呆れ顔だった。

なんでこんなにも腹ただしいのだろう。

「ラナさんと一緒にいれたから、支援活動をやっていて良かったです‼︎」

「「「………………っ‼︎」」」

その言葉を聞いた瞬間、三人は固まった。それと同時に怒りが湧き上がった。

本気で信じられない。

三人は支援活動に対して、困っている人を助けるためという純粋な気持ちでやるものだと思っていた。

しかし、ブライアンは女性といるという下心でやっていて良かったと言う。

そんなことを考えるなんて…信じれない。

目の前にいるこは、商才があるだけで人として馬鹿な人間だと分かった。

「ねぇ…聞いていい?」

ラナは冷たい声でそう問う。

彼は「なんですか?」と嬉しそうだ。

「なんで求婚したの?」

その問いに…ブライアンはキョトンとした後、にっこりと微笑んだ。






「だって…ラナさんみたいな女性、レアじゃないですか‼︎欲しくなったんです‼︎」






「「「…………なっ…⁉︎」」」

三人は後ずさる。

目の前にいる男が…気味が悪く感じた。コレクションをする感覚で求婚こいしたのだと分かると……言いようのない怒りが渦巻く。

そして…それを告げることが悪いことだとも思っていない。

「俺…自分がマイペースで結構最低な奴だと思うけど……ここまで壊れてる奴よりはマシだよな…?」

ユリウスはそう言うが、ブライアンに比べたら全然マシだ。

「ラナさん?」

「……………なんで…そんなことを言えるの…?」

「……?…女性は何人も手に入れるものでしょう?何か変なこと、言いましたか…?」

「………はぁっ⁉︎」

キョトンとするブライアンに違和感を感じたユリウスは口を開く。

「……お前…どこの出身だ?」

「ボクですか?アロトネロ国ですけど…」

「………あー…そういうことか……」

ユリウスは納得したように額を押さえた。

ラナとレオンは説明を求める視線を向ける。

「メイドは旅してたんだよな?アロトネロ国は、行ったことないか?」

「……う…うん…」

「なら知らないのも仕方ないだろ……あそこは一夫多妻制の国だ」

「「…………えっ…⁉︎」」

一夫多妻制と聞いて、困惑する。

それとブライアンの気味の悪さがどう繋がるのか。

「あの国は…女性つまの多さが上流階級のステータスみたいなものだからな……他国の珍しい女性など……コレクション感覚になってるんだ」

「そうなのっ⁉︎」

「マジかよっ⁉︎」

ギョッとするラナとレオンに頷くと、ユリウスは目を細めながら、彼を見つめた。

「お前…今の妻は何人いる?」

「?八人ですけど……」

「多っ‼︎ハーレムかよっ‼︎」

レオンが思わずツッコミを入れる。

ラナに至っては言葉を失くしていた。

「で?九人目にメイドを選んだと」

「はいっ‼︎」

「ですってよ、メイド」

「いや、無理」

ラナは即答で首を振る。

九人目の妻なんて…嫌すぎる。

愛しい人が一人いて……その人のたった一人の大切になる方が絶対良い。

「ブライアンさん…私、貴方と結婚しません。嫌です。無理です。絶対嫌です」

「なんでですかっ……⁉︎」

「一夫多妻制なんて…コレクション感覚なんて嫌だからだよっ‼︎」

「でもっ……‼︎」

キレ気味でラナは叫ぶが、ブライアンはあのしつこさを発揮して引き下がろうとしない。

その時……ユリウスが大きな溜息を漏らした。






「あのさ〜…そもそもの話。メイドは俺のもんなんだよ」






「「「………………は…?」」」

ユリウスの言葉に固まる。

彼はおもむろにラナに近づくと、グイッと抱き締めた。

「っっっ⁉︎」

「持ち主の許可も取らずに持ってこうなんざ…許される訳ねぇだろ?許可を取ろうとしようとも、やる気もねぇけどな」

ラナは今、何が起きているのか分からなかった。

ユリウスに抱き締められている。

それだけなのに…心臓が爆発しそうで、思考回路が停止する。

もう何も分からない。

「そんなのっ……」

それでも引き下がろうとしないブライアンにユリウスは怒鳴った。

「しつこい‼︎こいつは俺のだ‼︎いい加減にしろよ…?誰を相手にしていると思っている‼︎」

「っ⁉︎」

「そもそもの話…こいつの意思を尊重も出来ぬような男が……こいつを幸せに出来ると思うなっ‼︎幸せに出来ぬだろう者が、手に入れようなんぞ…百年早い‼︎」

威圧ある言葉に、空気がピリッと震えた。



王者の品格。



そんな言葉がぴったりだった。

ラナは嬉しくて泣きそうになる。ユリウスは…ひたすらにラナの幸せを考えてくれる言葉だった。

嬉し過ぎて……胸が苦しくて…泣きそうになる。

「…………っ…」

ブライアンは息を詰めた。

「ブライアンさん」

「………ラナ…さん…」

「私は貴方と結婚しません…貴方といても、幸せになれると思えない。だから…他を当たって下さい」

ハッキリとそう言うと…ユリウスは「よく言ったな」とラナの頭を撫でて、お姫様抱っこした。

「きゃあっ⁉︎」

「ユリウス⁉︎」

「もう用はないだろう。帰ろう」

そう言って彼は歩き出す。

レオンもそんなユリウスを見て…困ったように微笑んだ後……ブライアンを置いて歩き出したのだった……。









*****








「まぁ…孤児院の支援団体が出来たから行って良かったな」







《銀翼館》に帰って来た三人は、住居館の広間でお茶をしながら話す。

「そうだな〜オレ、ユリウスのあんな姿…初めて見たぜ?」

仕事モードから一転したレオンはニタニタと微笑む。

「ん?」

「『メイドは俺のもんなんだよ』……だっけ?」

「あー……」

ユリウスは紅茶を飲むラナに顔を向ける。

「メイド、ごめんな?あいつを納得させるためとはいえ…結構、メイドが嫌がりそうこと言った」

「いっ……いえっ……‼︎」

真っ赤になりながら顔を振るラナは…ユリウスに声を掛けられて、過剰に反応してしまった。

あの後だからか……異常に恥ずかしい。

緊張してしまう。

「怒ってないなら、良かった」

そう言って笑うユリウスが…いつもよりもカッコよく見えて…ラナは胸がきゅうっとした。




「……………ははぁ〜ん…♪」




レオンは二人を見てほくそ笑む。

彼は心の中で面白いことになりそうだなぁ〜と思った。







真っ赤になっているラナと…ご機嫌そうなユリウス。









二人の間に芽生え始めた感情の名に……まだ、気づかない。








評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ