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AROCK  作者: 桜泉
1/1

これからの僕ら

「1、2、3、1、2、3」

 僕のリードギターの音がバッキングとハーモニーを生み出しながら前奏を奏ではじめた。

 まるでこれからはじめる僕らの青春のスタートを奏でるように──。



「おつかれー!」

「おつー」

「いやー今日の練習はよかったね!音がいい感じだったよ」

 僕らは今、スタジオで練習をしていたところだ。

 といっても、有名なバンドどころかただの中学生バンドだ。

「でも久しぶりだったからちょっとノリがでにくかったわー」

「まあ受験の後だしな。しょうがない」

 そう、僕らは今中学3年生で先週受験が終わったばかりだった。

 それまでお互いの受験勉強のためスタジオでの練習を自粛していた。

「まあでもみんな合格できてよかったよね!」

「うんうん。進むべき道があってこそのバンドだよ」

 メンバーは5人。ボーカルの朝倉 雄太(あさくらゆうた、リードギターの泉 拓也(いずみたくや、バッキングギターの加藤 公太(かとうこうた、ベースの阿部 章(あべあきら、ドラムの井上 光哉(いのうえこうやだ。

「さてこれから会議だ。マックいこうぜマック」

 僕は気合を入れて言った。何事も反省が大事だ。


 僕らは住宅街の近くにある小さな倉庫にも似たスタジオを出てマックへ向かった。

「いらっしゃいませー」

 ここの店は僕らの帰り道にあって、反省会や話し合いをするには丁度いい場所だった。

「よし、じゃあこれからのバンドの方針について語り合おう」

 僕は話題を持ちかけた。

「今までは中学生だということもあってライヴはしてなかった。でも、これからはみんな違う高校へいってばらばらになってしまう。だから今まで以上にバンドに対しての気持ちを強くもってほしい!」

 僕は将来このバンドが有名になって、音楽で飯を食っていけることを望んでいる。

 しかし現実、中学生でそこまでの覚悟はなかなか難しく、仲間はいまいち遊び半分でやっているような人もいるのは事実だ。

「じゃあもう高校生活がはじめる前に俺らの曲つくるべ!」

 光哉がでかいハンバーガーを片手に言った。

 このバンドで俺と同じくらいの熱を持っているのはこのドラマーの光哉だ。

「でも録音って時間かかるよね」

 章はポテトを箱から引きずりだしながら言った。

 常に現実的で大人な意見を持つのはこの章だ。

「そこで!明後日から俺の家でレコーディング合宿をしようと思う!」

「いいねいいね!」

 このテンションを上げてくれる人は公太だ。

 公太は常にテンションが高く、このバンドでは唯一坊主頭の大事な存在だ。

「俺一度もそういうのないから楽しみだわー」

「じゃあみんなもいいね?明後日の夜8時に僕の家に来てくれ!」

 この<泊まり>のもう1つの目的は、これから顔を合わせることが少なくなってしまうメンバーの絆を今一度強めることだった。

 そう、僕らの、偉大で誰もが夢を抱くような人生はここからはじまった。

 ──なんてことは、まるでない。

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