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当たり前の話

作者: 小雨川蛙
掲載日:2026/07/14

 

 はい。

 では、授業を始めます。

 今日は偉大なる大賢者が遺した二つの魔法について教えます。


 まず一つ目の魔法は『鍋に火をかける魔法』です。

 薪は自分でしっかりと用意してくださいね。

 あとは火力に気を付けてください。

 この魔法を遺した大賢者は料理が下手で鍋をよく焦がしていたみたいです。

 ……その気になれば人を火傷させるのはもちろん、人を焼死させることだって出来ちゃいます。

 いいですか。

 繰り返しになりますが、この魔法は鍋に火をかける魔法です。

 決して人に放ってはいけません。


 次の魔法は『暑い時に風を吹かせて涼む魔法』です。

 こちらも加減には気を付けてください。

 皆さんにとって見慣れているのは祭りの際の紙吹雪を舞わせる使い方ですかね。

 開発者の大賢者はこれで女の子のスカートめくりをする遊びが流行って頭を抱えたと聞きますが、まぁ、それでも後の時代に人間を吹き飛ばして崖から落とす処刑法に使われるよりは良い使い方でしょうか……。


 む。

 皆さん、驚いていますね。

 ですが、初球の魔法なんてそもそもの目的はこんなものなんですよ。

 馬鹿どもが偉大なる魔法を誤った使い方をしているから混乱するかもしれませんが、魔法ってのは本来は日常を便利にする細やかな物であるはずなんです。


 お分かりですか。

 だからこそ、この学校では万を超す軍勢を焼き払った大馬鹿者を英雄として認めず愚か者と言い、いくつもの美味しいレシピやしょうもない悪戯に頭を悩ます一人の魔女を賢者と呼んでいるのです。


 ――平和な世界を便利しようとした者と、自らの欲を満たすため多くの命を奪って悦に浸った者。

 どちらが素晴らしいかなんて議論の余地もありませんからね。


 さぁ、授業はおしまいです。

 各自、家でお母さんの家事をしっかり手伝うように。


 それでは、また明日。

 明日もまた平和な一日が続きますように。

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― 新着の感想 ―
当たり前じゃない現実が、とっても残念。
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