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第7話 学園と死党たち




月曜日の朝。


俺は重い足取りで都内の私立高校——水月高校の校門をくぐった。


週末の出来事が頭から離れない。霖との距離が縮まったかと思えば、朝にはまた元の冷たい関係に戻っている。枕の下に隠した雑誌が、昨夜の出来事が夢じゃなかったことを証明してくれるが——


◆◆◆


「おはよう、蒼真」


教室に入ると、隣の席から聞き慣れた声が聞こえた。


月城葵——俺の幼馴染で、小学校からの親友だ。


身長は俺より少し低い百七十センチくらい。中性的な顔立ちに、さらさらの黒髪をセンター分けにしている。制服のブレザーを着ていても、遠目から見たら完全に美少女にしか見えない。


実際、入学初日に何人もの男子が告白しようとして、近づいて初めて男だと気づいて愕然とした——という伝説がある。


「おはよう、月城」


俺は窓際の席に座り、カバンを机の横にかけた。


「なんか、顔色悪いぞ? 週末、何かあった?」


月城は心配そうに俺の顔を覗き込んだ。こいつ、昔から人の表情を読むのが上手い。


小学校の頃から一緒だ。当時、中性的な顔立ちでよくからかわれていた月城を助けたのがきっかけで、それ以来ずっと親友だ。中学も同じ、高校も同じ——気づけば十年以上の付き合いになる。


「いや、別に——」


「嘘つけ。お前、絶対何かあっただろ」


「……まあ、色々あった」


俺が曖昧に答えると、月城は肩を竦めた。


「ま、話したくないなら無理には聞かないけどさ。でも、悩んでるなら言えよ? 俺たち幼馴染だろ」


「ああ、ありがとな」


その時——


「蒼真くーん! おはよー!」


甲高い声が響いた。


教室の入り口から、ピンク色の髪を揺らしながら一人の少女が走ってきた。


桜庭心春——もう一人の幼馴染だ。


ピンク色の髪を右側でサイドテールに結んで、大きなリボンで留めている。顔立ちは人形みたいに可愛らしくて、クラスの男子の半分以上が彼女に好意を持っているはずだ。


ただ、一つだけ残念なのは——その胸が、絶望的に平らなことだ。


心春も俺や月城と同じく、小学校からの幼馴染だ。三人とも同じ小学校、同じ中学、そして同じ高校に進学した。


「おはよう、心春」


「蒼真くん!」


心春が俺の前の席に座りながら、嬉しそうに笑った。


「ねえねえ、土曜日のメッセージ、見てくれた?」


「あ、ああ……ごめん、バタバタしてて返信できなかった」


土曜日——霖の引っ越しの日、心春からメッセージが来ていたのは覚えている。でも、霖の荷物運びやら、あの夜の出来事やらで、完全に返信を忘れていた。


「もう、蒼真くんったら!」


心春が頬を膨らませた。


「ごめんごめん」


「ま、いいけど……」


心春が少し恥ずかしそうに、カバンから小さな箱を取り出した。


「あの、これ……」


「ん?」


「先週、蒼真くんの眼鏡、私が壊しちゃったでしょ? だから、新しいの買ってきたの」


ああ、そういえば——


先週の金曜日、心春が教室で転んだ時、俺の机にぶつかって、俺の眼鏡が床に落ちて割れてしまったんだった。


「いや、あれは事故だったし、気にしなくていいって——」


「ダメ! 私が壊しちゃったんだから、責任取らなきゃ!」


心春が強引に箱を俺の手に押し付けた。


「だから、受け取って! お願い!」


その真剣な表情を見て、俺は断りきれなかった。


「……ありがとう、心春」


「えへへ、どういたしまして」


心春が嬉しそうに笑った。


俺が箱を開けると——中には、黒縁の眼鏡が入っていた。


シンプルなデザインで、俺が普段使っているものとほぼ同じタイプだ。


「試着してみて! ちゃんとサイズ測ってもらったから!」


「おう」


俺は眼鏡をかけてみた。


フィット感も良いし、視界もクリアだ。


「どう? 似合ってる?」


心春が期待するような目で俺を見つめた。


「ああ、ぴったりだ。ありがとな」


「良かったー!」


心春がぱっと笑顔になった。


「ねえねえ、私もかけてみていい?」


心春が突然、俺の眼鏡に手を伸ばした。


「え? 別にいいけど——」


心春が俺の眼鏡を取って、自分の顔にかけた。


「どう? 似合う?」


「……まあ、悪くないんじゃないか」


「えへへ、ありがと——」


心春が嬉しそうに笑いながら、眼鏡を外そうとして——


「あ、待って」


心春が急に動きを止めた。


そして、じっと俺の顔を見つめた。


「……え」


心春の顔が、みるみる赤くなっていく。


「心春? どうした?」


「そ、蒼真くん……」


心春が小さな声で呟いた。


「眼鏡、外したら……めっちゃ、芸能人顔じゃん……」


「は?」


「だって、その……普段は眼鏡で隠れてるけど、外したら完全にイケメンっていうか……テレビに出てる人みたいっていうか……」


心春が顔を真っ赤にして、俯いた。


「何言ってんだよ」


俺は苦笑しながら、眼鏡を取り戻そうとした。


「ま、待って! もうちょっと見せて!」


心春が眼鏡を持ったまま、俺の顔をまじまじと見つめた。


「や、やっぱり……蒼真くん、眼鏡ないと全然印象違う……」


「心春、恥ずかしいからやめろって」


「え、でも……」


その時、月城が横から口を挟んだ。


「心春の言う通りだぞ、蒼真。お前、眼鏡外したら確かに芸能人顔だ」


「お前もかよ」


「マジで。っていうか、お前の親父さん、業界の大物だろ? 遺伝子的には当然じゃね?」


月城がニヤニヤしながら言った。


「……そういう話はやめろ」


俺は少しムッとして、心春から眼鏡を取り戻した。


「あ、ごめん……」


心春が申し訳なさそうに俯いた。


「いや、心春は悪くない。ただ——」


俺は眼鏡をかけ直した。


「俺は、親父の七光りで見られるのが嫌なんだ」


「……うん、知ってる」


心春が小さく頷いた。


「蒼真くんは、自分の力だけで音楽やりたいんだよね」


「ああ」


沈黙が流れた。


でも、それは嫌な沈黙じゃなかった。


こいつらは、俺のことを分かってくれている。


「ごめんね、変なこと言っちゃって」


心春が再び謝った。


「いいって。気にすんな」


俺は笑って、心春の頭を軽く叩いた。


「痛っ」


「お前、最近調子乗りすぎだぞ」


「調子乗ってないもん!」


心春が頬を膨らませた。


その様子を見て、月城が笑った。


「お前ら、相変わらず仲いいな」


「仲良くなんかないもん!」


心春が即座に否定した。


でも、その顔は真っ赤だった。


◆◆◆


午前の授業が終わり、昼休みになった。


俺は月城と心春と一緒に、購買部でパンを買って教室に戻った。


「そういえば蒼真、週末どうだった? 義妹ちゃんと仲良くなれた?」


心春が自分の席に座りながら、俺に聞いてきた。


俺が霖のことを話したのは、こいつらだけだ。


「まあ……少しは、進展したかな」


「ほんと!? どんな!?」


心春が目を輝かせた。


「いや、大したことじゃないんだけど——」


俺が霖との出来事を簡単に話すと、月城が呆れたように言った。


「お前、それ完全に罠にはまってるだろ」


「罠?」


「そうだよ蒼真くん! その義妹ちゃん、絶対蒼真くんのこと気になってるって!」


心春が興奮気味に言った。


「いや、そんなわけ——」


「あるって。女の子はね、本当に嫌いな相手には、絶対に秘密なんて見せないの」


心春が真剣な顔で言った。


「そうそう。しかも、深夜にわざわざ部屋に来るとか、完全に脈ありだろ」


月城も同意する。


「でも、あいつ、朝には普通に冷たかったぞ」


「それは恥ずかしいからでしょ! だって、昨日あんなに恥ずかしいもの見られちゃったんだもん!」


心春が頬を赤らめながら言った。


「……そうかな」


俺は半信半疑だったが、二人の言葉に少しだけ希望を持った。


「蒼真、お前鈍感すぎ」


月城が呆れたように溜息をついた。


「まあ、それが蒼真くんの良いところでもあるけどね」


心春がくすくす笑った。


でも——その笑顔が、少しだけ寂しそうに見えたのは、気のせいだろうか。

# 第四話 学園と死党たち —— 完全修正版


(前面内容保持到心春给眼镜的场景,然后重新写)


---


その時——


カツカツカツ——


廊下から、規則正しい足音が聞こえてきた。


教室の空気が、一瞬で変わった。


さっきまで賑やかだった雰囲気が、急に静まり返る。拘束されたような、緊張した空気が教室を包む。


俺は顔を上げた。


教室のドアが開いて——


そこに立っていたのは、星宮雫だった。


黒いブレザーを完璧に着こなして、腰まで届く黒髪をストレートに流している。透き通るような白い肌、切れ長の瞳、そして——小さな黒縁の眼鏡。


凛とした足取りは速いが慌てていない。その高貴な雰囲気は、人に自分の卑小さを感じさせる。身長百六十八センチの彼女は、モデルのようなスタイルを持っている。


彼女は現在も独身らしい——というか、誰とも付き合ったことがないと聞いた。可能性は理論上ほんのわずかしかないけど、俺はまだ期待を捨てていない。同じ気持ちの奴は、俺だけじゃないはずだ。


同じクラスでこれほどの存在感を持てるのは、容姿だけじゃない。彼女の家柄も無視できない。星宮財閥の御令嬢——それが、クラス内では公然の秘密だ。


俺が星宮に惹かれたのは、彼女の人となりだ。具体的に何が好きかは説明できないけど、入学式で彼女を見た瞬間から、この女性の影が俺の心から離れなくなった。


「見とれてたでしょ」


心春が少し不機嫌そうに言った。


「誰が」


俺は視線を逸らした。多少は誤魔化すために、話題を変えようとした。


「そういえば、土曜日に何か言いたいことがあるって、メッセージくれたよな? 何だったんだ?」


俺は適当に聞いただけだったが、心春は本当に準備していたらしい。ピンク色のバッグをゴソゴソしながら、笑顔で言った。


「覚えててくれたんだ。えへへ、じゃあ見せるね。驚かないでよ? はい、じゃじゃーん——」


何かと思ったら、心春がレンズの入っていない黒縁の眼鏡を自分の鼻にかけた。そして、真面目な顔で星宮の口調を真似て言った。


「蒼真くん、私はあなたの憧れの星宮雫よ。調子はどう?」


「お前、殴られたいのか?」


俺は指を立てて、心春のおでこを弾こうとした。


「待って待って、冗談だから! 本当はね、プレゼントがあるの」


心春は俺のこの技が怖いらしく、すぐに謝った。そして、バッグから箱を取り出した。


「はい、これ。先週眼鏡壊しちゃったお詫びだよ」


心春がおでこを押さえながら、期待の目で俺が箱を開けるのを見ていた。


「また眼鏡?! おい、からかってるだろ!」


箱の中には、心春がかけていたのとほぼ同じデザインの眼鏡が入っていた。もちろん、星宮のとも同じだ。


「あはは~」


心春は俺が怒ると予想していたらしく、もう遠くに逃げていた。得意げに笑いながら言った。


「花痴! 眼鏡あげるから、片思い治してね、あははは——」


無邪気な笑い声とともに、心春は教室を飛び出していった。授業の時間だから、他のクラスに資料を取りに行くんだろう。


「あのバカ……いい加減にしろよ。だから誰にも相手にされないんだ……」


俺は思わず呟いた。


もしかしたら、星宮への気持ちが実らないと分かっているから、こういうことをネタにされるのが特に嫌なのかもしれない。


「蒼真」


隣の席に座っている月城が、俺の方を向いた。


「なんだよ」


「桜庭さんはな、誰にも相手にされないんじゃなくて、誰も相手にできないんだよ。っていうか、全世界で一番あいつを笑う資格がないのは、お前だと思うぞ」


月城がいつの間にか、心春が置いていった眼鏡を手に取っていた。


「土曜日、心春が何時くらいにお前の家に行ったか知ってる?」


俺は少し驚いた。月城がこんなことを聞く意味が分からない。


「十二時くらいかな。どうして?」


「ははは、お前も純粋すぎるな」


月城が呆れたように笑いながら、眼鏡を俺の頭にかけた。


「いいか、女子が昼の十二時にわざわざ男の家に行って料理を作るなんて——お前、本当にただ眼鏡のお詫びだけだと思ってるのか? 蒼真、お前がそんなに鈍感だったら、一生童貞なのは小さい問題だが、人の女子の青春を無駄にするのは大問題だぞ」


月城が溜息混じりに俺の肩を叩いた。


俺はまだ月城の言葉の意味を理解できていなかった。月城は続けた。


「覚えておけ。女は一生の中で、二種類の男のためにしか料理を作らないんだ」


「二種類?」


「ああ。一つは、その男の旦那。もう一つは——」


月城が意味深に笑った。


「その男の旦那になりたいと思ってる女だ。お前、せっかくの幸せに気づいてないぞ」


月城はそう言って、前を向いた。


俺は一人、困惑したまま座っていた。


月城の言葉はどういう意味だ? まさか——心春が、俺のことを?


ありえない! 俺と兄弟みたいに付き合ってる桜庭心春が、俺を好きだって? そんなの、人生で聞いた中で一番の冗談だ。


俺は笑おうとした。でも、こわばった口角は、どうしても上がらなかった。


頭の中に、これまでの思い出が次々と浮かんでくる。


そういえば——


心春は、いつも俺の家に来てくれた。


料理を作ってくれた。


眼鏡を買ってきてくれた。


メッセージを送ってくれた。


俺が配信で落ち込んでる時、励ましてくれた。


全部——


当たり前だと思っていた。


幼馴染だから、当然だと。


でも——


月城の言葉が正しいなら——


心春は——


くそ、まさか……


---


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