みじかい小説 / 033 / 側溝の花
駅前のデパートに新作のコスメが並んだ。
そう噂を聞きつけ、結衣は日曜を待って意気揚々とでかけた。
天気は晴れ、十月に入って気温はぐっと下がり、長袖でちょうどよく感じられる。
自転車でもよかったのだが、あまりにも天気がいいものだから、結衣はスニーカーを履いて歩きを選んだ。
てくてくと線路沿いを歩く。
道路沿いに植えられた木々は既に色づき始めており、秋の訪れを感じさせた。
結衣の頬を涼やかな風がなでてゆく。
あまりにも心地よいので、結衣はめいっぱい息を吸ってみる。
目を細めて辺りを見渡す。
すると、道路の脇にある溝をふさいでいた鉄格子の間から、草花がのぞいるのが目に入った。
青い可憐なその花は、暗い溝の中から太陽の光を求めてめいっぱいに茎を伸ばしていた。
きっとこの青い花を見つけたのは、この世の中で私しかいないだろうと、結衣は思った。
それぐらいひっそりと、その青い花は咲いていた。
結衣はなんとなくその場を通り過ぎるのがもったいなくなり、ポケットからスマホを取り出すと青い花に向かってパシャリとシャッターをきった。
角度を変えて三、四枚撮る。
画像を見て満足すると、結衣はやっとその場を後にした。
それからちょうど一年後、結衣は職場でしこたま叱られてへこんでいた。
トイレに入り、あふれ出てくる涙をハンカチでぬぐう。
どうして私はこんなに駄目なんだろう。
悔しさと自己嫌悪で胸がいっぱいになる。
しばらくしてスマホをのぞいてみると、「一年前の今日」というタイトルで通知が入っていた。
それは画像アプリからの通知だった。
アプリを開くと、そこにはたくましく咲くあの花の姿があった。
ああ。
結衣は思った。
負けてられないな。
結衣は勢いよく水を流すとメイクを整え、強い足取りで職場へと戻って行った。
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