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夏色女神

作者: 昼月キオリ


とある夏の日。

俺は車で山に向かっていた。


途中で一人の女性が道のど真ん中にポツンと立っているのが見えた俺は急いで車を止めて窓を開け、声を掛けた。

アツム(24)「君、そんな場所にいたら危ないよ早くどいて!」

女性は俺の方まで歩いてくるとこう言った。

「この先は行かないで」

アツム「え?どういうこと?俺、この先に行かないといけないんだけど」


可愛い子だなぁ。歳は同い年くらいかな?

 

「・・・」

 


アツム「ねぇ、君はこんな場所で何をしてるの?」

「私、この場所から動けないの」

アツム「誰か待ってるの?」

ふるふるとその女性は首を横にふる。

アツム「とにかく、俺はこの先にある旅館に行かないといけないんだよ、友達と川でヤマメ釣る約束しててさ」

「どうして皆んな私の言うことを聞いてくれないの?」

アツム「え?皆んなって誰のこと?」

「沢山、色んな人、あなたも私のこと無視するの?」

 

ヤバ、上目遣いめちゃくちゃ可愛い。


アツム「って言われてもなぁ」

「雨が沢山降った次の日は危ないから行かないでって言ってるのに」

アツム「危ないってこの先に何かあるの?」

女性が頷く。

アツム「うーん・・・仕方ない、とりあえず友達に電話してみるよ」


正直、可愛いから放っておけない。

(それしか言ってない)


 


シュウ(24)「もしもーし、アツムー?お前今どこにいんの?」

アツム「途中の道で車止めてるとこ、女の人がいてこの先は危ないから行くなって言ってるんだよ」

シュウ「はー?お前なにちゃっかりナンパされてんだよ、さっさと来いよ」

アツム「いや、俺もそうしたいんだけどさ、てか、ナンパじゃないし!」


シュウ「とにかく早く・・・あーいや、ちょっと待った」

アツム「どうしたの?」

シュウ「旅館の人たちがなんか騒いでる・・・うわ、マジかよ・・・」

アツム「え、何?」

シュウ「今、旅館に来る途中の道、落石事故があって通れなくなったんだってさ」

アツム「え・・・」

シュウ「お前、まじ来なくて正解だったわ、その女性に感謝しろよ」

アツム「シュウは大丈夫なの?」

シュウ「ああ、早く旅館に着いてたからな」

アツム「帰れそう?」

シュウ「まー、遠回りすれば帰れるだろ、つってもだいぶ時間はかかるけどな」

アツム「なら良かったよ」

シュウ「良かねーよ・・・ヤマメ、釣って食いたかったなぁ」


アツム「仕方ないよ・・・あ、そうだ旅館の代金ごめん、次会ったら半分払うから」

シュウ「いや、旅館の人が気を利かしてくれて今日はタダでいいって、だからお金は気にしなくていいぞ」


アツム「そうなんだ、それはありがたいねってあれ?」

シュウ「ん?どした?」

アツム「さっきまでいた女の人がいない・・・」

シュウ「何だそりゃ、ナンパされて逃げられたのか?」

アツム「いや、違うよ・・・てか、このあたり、車しか通れないし」

シュウ「だよな・・・っておい、そりゃまさか幽霊ってやつか?」

 

アツム「違うよ、水色のワンピース着てたし」

シュウ「お前、知らねーの?」

アツム「何を?」

シュウ「数年前の夏にこの辺りで落石事故あって、恋人と車に乗ってた女の人が死んだって、水色のワンピース着てたらしいぞ」

アツム「え、ほんとに?」

シュウ「恋人の方は助かったみたいだけどな・・・

つか、まじで幽霊じゃん」


幽霊かどうかなんて正直どーでもいいよ。

可愛いかったから。(アホ)


アツム「でも、俺を助けてくれたよ」

シュウ「ああ、教えてくれたその子に感謝するんだな」

アツム「うん」




雨が沢山降った次の日に来たらまた会えるかな?

なんて俺は考えながら過ごしていた。

シュウ「会いたいって正気かよ」

アツム「うん」

シュウ「相手幽霊だぞ?」

アツム「とにかくもう一度会いたいんだよ、ちゃんとお礼言いたいし」

シュウ「いや、だからってなぁ・・・」

アツム「だってめちゃくちゃ可愛いんだよ?」

シュウ「・・・仕方ねーな、お前が心配だから俺も行ってやる」



二人はあの子がいたあの場所まで車で走った。


そしてめちゃくちゃ怒られた。

「もう、来ちゃダメって言ったでしょう!」

水色のワンピースを着た夏色女神に。


アツム&シュウ「ごめんなさい」

""でも、可愛い!!""


END。


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