表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/33

7、大人たちの作戦会議

 セオが寝てしばらく後に、レオンはそっと部屋を出た。セオが起きたりするような事があれば呼ぶよう伝え、談話室に向かった。

 待っていたのは、ジョンだ。


「お呼びでしょうか、レオン辺境伯さま」

「ああ、かけてくれ。セオの話をしよう」

「では、失礼致します」 

 ジョンは、向かいのソファに座った。

「単刀直入に言おう。セオには、領地を立て直すよう神の啓示があったそうだ」

「なんと…」

 先代から侯爵家に仕えてきたジョンは、今の当主にこれっぽっちも治世の才覚がないのを知っていた。

 今は王都で好きにしており、領地のことはこちらに丸投げだ。下手に首を突っ込まないのはいいのだが、だんだんと支出が増えてきている。

 領地の経営は、ジョンをはじめとする古参が担っているため、今のところなんとかなっている。

 しかし、セオドアもあれだったので、次代まで保たないだろうと思われていた。

 セオが変わったのは、天啓だったのだ。

 ジョンの目の端から、感動の涙がこぼれ落ちた。


 それからふたりは、これからのことを話し合った。

 王都の別荘には、セオが目覚めたことは伝えてあったが、身体が弱って寝込みがちだと報告することにした。

「幸いにも、使用人を刷新しましたので、王都の息がかかったものはいません。みな、素直で好奇心旺盛なセオ様にメロメロになりつつあります」

「めろめろ…」

 まさかジョンから出てくるとは思わなかった言葉に、思わずレオンは小さく繰り返してしまった。

「はい」

 きっぱりと返事をされて、思わず横を向く。

 実は一番メロメロになっているのは、ジョンなのではないかと思ったレオンだった。


 ーーー気を取り直して。

 セオの勉強については、可能な範囲でジョンが教えることとなった。

 まずは文字や簡単な計算からだ。それから、貴族の慣習やマナーなどについて。

 もちろん、一番大切なのはセオの身体だ。

 ムリをさせないよう、十分に配慮しながら教えていくことに決まった。


 最後に。

「レオン辺境伯さま、恐れながら申し上げます」

「なんだ?」

「本日の夕食時、ご自分のフォークでセオ様に食べて頂いていましたが、セオ様はまだ礼儀を習い始めたばかりでございます」

 暗に、「もうするな」と言っているのだ。

「セオは賢いから、真似はしないだろう」

「セオ様にとっては、レオン辺境伯様が一番身近な貴族なのでございます。将来のことを考えますとーーー」

「分かった、もうしない。じゃあ、おれはセオのところに戻って寝るから。時間を取らせて悪かったな、おやすみ!」

 セオを盾にしてジョンの説教から逃れたレオンは、急ぎセオの部屋に戻る。

 護衛からは、特に物音もせず、セオが起きた様子はないとのことだった。


 そっと部屋に入る。セオは眠っていたが、その頰には涙の跡があった。

 どうやら、寝ながら泣いていたらしい。もしかしたら、途中で起きてレオンがいないのに気づき、泣いたのかもしれなかった。

 罪悪感を感じながら、その涙をそっと拭う。

 そして、セオの全身をすっぽり抱き込み、よしよしと頭をなでた。冷えていた手足が温まると、口もとがむにゃむにゃいって、レオンの方に擦り寄ってくる。

 レオンは、ホッとして眠りについたのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ