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第5話 これからの目標


 兵士たちに連れられた俺たちは王都の衛兵詰所にいた。


 石造りの質素な部屋で窓の外には王都の街並みが広がっている。

 部屋の隅には書類が積まれた机があり壁には衛兵隊の紋章が刻まれた旗が掛けられていた。


 俺たちは木製の椅子に座らされ目の前には鎧をまとった衛兵の隊長らしき男が腕を組んで立っている。


「......お前たちは宿に泊まっていたところを襲撃され、戦闘の末に宿が吹き飛んだ......というわけだな?」


 問いかけに俺は肩をすくめる。


「はい、まったくその通りです」


 隊長はしばらく考え込む。


「ドルガー......裏社会ではそれなりに名の知れた人物だった、よくEランク冒険者が倒せたものだな?」

「ははは、まぁイグリアのおかげでもありますから......」

「契約者と従魔による魔力循環か......それが深まるほどお互い強くなるとは聞くが......」


 体調あ何か考えこむ。


「.....まぁ良い.状況は分かった」


 どれほど時間が経ったかこうして尋問を終えた。


 恐らくは午後になっていた。


 これから依頼を受ける気力はなく俺はため息をつきながらイグリアを見る。


「今から次の宿屋を探す、出来るだけ安いの......」


 宿が吹き飛んだ以上、新たな寝床を確保しなければならない。


 そうして新しく見つけた宿屋は昨日の宿よりは多少マシとはいえあまり綺麗とは言い難い宿屋だった。


 入り口をくぐると木造のカウンターの向こうで年配の宿主が帳簿をつけていた。


「お客さんかい?」

「二人分お願いします」

「じゃあ6銀貨だ」


 俺たちにあてがわれた部屋は二階の端で扉を開けると古びた木の床がギシギシと鳴る。

 室内には簡素な木製のベッドが二つと歪んだ脚の小さな机が一つだけで、ベッドの敷布は薄く枕もやや固め、しかし昨日の宿のように染みや異臭がするわけではない。


 窓は小さくて開けるとわずかに涼しい風が入ってくるが、外の喧騒もしっかり聞こえてくる。


「......まぁ、昨日の宿よりはマシか」


 俺がそう呟くと、イグリアはベッドを軽く押して強度を確かめた。


「昨日よりは寝心地はよさそう、でもやっぱり狭いわね」


 彼女の言う通り二人で暮らすには手狭だった。ここに長居するつもりはないが、しばらくの間はこの宿で過ごすことになりそうだ。



 ■



 夜




「――......」


 ドアの外で宿泊者同士の喧嘩が聞こえて来た。

 こんなボロい部屋のドアだ、相手が壊そうと思えば壊せてしまうだろう。


「イグリア、起きてるか?」

「......」

「......よし起きてるな」


 ベッドから立ち上がる。


「......何も言ってないんだけど」

 イグリアも身体を起こした。


「今回の事件でよくわかったんだ、俺は安全な場所が欲しい、落ち着ける場所が」


 俺はイグリアの赤い瞳を見つめながらはっきりと口にする。


「俺は家を買う」


 イグリアは少し困惑の表情をした。


「まぁ......良いんじゃない?」


 そして意外にも彼女は静かに頷いてくれた。


「え、あっさり賛成?」

「宿を転々とするのも面倒だし、拠点があれば何かと便利でしょう?」


 こうして、俺の新たな目標が決まった。


「で、結局問題は金だな」

「なら稼ぐしかないわね」

「――だな」


 家を手に入れるための金策――そのために、より難しい新たな依頼を探す必要がある。


「これから冒険者として頑張るぞ!」

「勿論、私には甘味をくれるんでしょ?」

「――も、もちろん!」

「期待してるわ、ハルフミ」

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