第40話 情報収集
こうして、蒼晶石を探す事になった俺たち。
ただいくら探知杖があるといっても闇雲に探すのは効率が悪いだろう、ガラムはそこで提案した。
「アルザギールで情報収集といこう、最近大きな魔力が発生したとか、魔物が集まっているとか、怪しい奴らを見かけたとか......情報は多ければ多いほど良いな」
俺たちは俺とイグリア、ガラムとクーノ、レーゼックとリリパーノがアルザギールでの情報収集を手分けして行うことにした。
「......」
イグリアは俺の買った黒いフードを深く被っている。
周囲を見る感じ俺たちの事を気にする素振りを見せる人達はいなかった。
「......宿にいてもよかったんだぞ?」
「貴方を一人で行かせるなんて危なっかしいし......ダメね、魔界のことも全然知らないでしょ?」
「ぐ、そうだけど......」
実際、魔界の事ならイグリアの方が詳しい。
「ふん、そうでしょ」
「お前が良いなら良いけど」
アルザギールは魔界でも大都市らしく、ヒズアグとは規模感も雰囲気もまるで違っていた。建物は黒を基調とし、街全体が重々しくも荘厳な空気をまとっている。
「実際そうか......」
土地勘のあるイグリアがいてくれた方が良いのは確かにそうだろう。
「アルザギールの中心に近づかなければ大丈夫なはずよ」
と云いつつ、イグリアは心なしか俺の近くへと身体を近づけて歩いている。
やはり、緊張しているのだろうか。
「......それで、どこに行くの?」
「とりあえず、色々と情報が集まるであろう集会所に行く」
アルザギールの集会所、『ウァーグの双月亭』アルザギール出身の著名な魔族から名を付けられたのだという。
ヒズアグのように酒場を兼任していて酒や煙草の煙に満ちていたが粗暴な雰囲気の魔族だけでなく、中には本を片手に議論を交わす魔族や、道化のような恰好をした旅芸人風の者もいたりと様々な様相の魔族も目に入った。
ここの集会所のカウンター席に座りとなりはイグリアが座った、そしてマスターに話す。
そのマスターはフクロウの様な嘴と羽を持って、酒瓶を持っていた。名前をリネートというらしい。
「何かご用ですか?」
「ちょっと聞きたい事がありましてね」
「......どのような事を?」
「最近、この辺りで突然大きな魔力が発生したりとか、魔物が集まってるとか、怪しい奴らを見かけたりとか、そういう情報を何か知ってますかね?」
リネートは静かに目を閉じ、こっちを見つめる。
「......目的は何ですか?」
「......わかってるだろうが、俺は人間なんだ、俺は人間界に帰りたい」
「......フードを深く被っていますがお隣の彼女は従魔、ですか?」
俺は頷く。
「何かあるなら教えて欲しい......金が必要なら出来る限り払う」
「ふむ......確かに貴方が求める情報はあります」
「だったら是非!」
「......アルザギールより北西方面のズェーンという廃村、そこで大きな魔力が発生することが時折あると聞きます」
これは有益な情報だ。
「ありがとう!」
「ただの風の噂です、私はただ聞かれたからそんな風の噂を答えたまで」
これでガラムにも話す事が出来る。
「本当にありがとうリネートさん、何か酒でも頼んだ方が良いんだろうが......」
「いえいえ、急いでいるのでしょう構いませんとも」
俺は感謝をリネートに述べ、その場を後にする。
■
「......」
イグリアはハルフミが席を外したのに合わせて椅子から立ち上がる。
するとリネートは小さく、周りのガヤにかき消される様な小さな声で――
「イグリア様、ご無事で何よりでした――」
イグリアは一瞬リネートを見るが、既にいつもと変わらずに酒瓶を拭いている。
「――ええ、リネートもね、また」
軽くそう返事を返し、イグリアはハルフミの元へと駆けよるのだった。
令和七年七月七日の七夕、何だか良い事があると良いですね。
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