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第38話 廃都市ボホトークス

 翌朝、皆が身支度の準備をしていると。


「......何これ」


 イグリアは黒いローブを見て困惑し、俺の方を見た。


「ねぇ、これなに」

「ローブだろ」

「わかってるわよ、それくらい」


 イグリアは何か文句を言いたげだが、結局言わずにそのまま着てくれた。


「レーゼック、その廃都市とやらに案内してくれ」


 こうして俺たちは廃都市へと向かうのだった。


 都市アルザギールから北、山脈を練り歩いていく。


「この中だ......」


 ドーム状の結界があり、レーゼックについていきそこへ入るとそれはあった。


「廃都市、ボホトークス」

「ボホトークス......」


 イグリアは何か知っている様だ。


「イグリア、ボホトークスってなんだ?」

「人間側の魔界の拠点よ」

「拠点?」


 ガラムは俺に話す。


「ふむ、境界戦争と呼ばれる500年前の戦争、人類と魔族は魔界門の建造を皮切りにお互いの境界線が壊れてしまい、互いに支配を目論んだ時代、魔界には人間側の要塞が建造された、勿論、魔族側も人間界に要塞を作った、お互いそうやって殺し合った」

「そのボホトークスは境界戦争時代の人類側の要塞ってことか」

「そういうことだ、コーティングされていたのも納得だ、要塞を隠すための機能がずっと生きていたのだろう」


 中は既に廃墟と化していて、都市もボロボロと崩れていた。


「まさかアルザギールの近くにこれほどの遺構があって、誰にも気づかれなかったなんて」


 イグリアは驚きを隠せない。


「ザっと見た感じ、魔界門は見つからない」

「ああ、そうだ、ちょっと待っていてくれ――ワオォォーン」


 レーゼックが遠吠えをすると、新しい魔族が姿を現した。


「レーゼック、連れて来てくれたのね!」


 羽の生えた魔族、妖精というのが近いと思う、だが背丈は10代半ばの少女程度の大きさだ。

 彼女は確かカザトランナの時にいた理知的な魔族だ、転移魔法陣付近での戦闘を諫めようとしていたのを覚えている。


「わたしの名前はリリパーノ、知っている方と知らない方がいるわね」


 お互い自己紹介する。


「ハルフミさんとイグリアさんはカザトランナでも会いましたね、その節は迷惑をおかけしました」

「俺は良いよ」


 イグリアは何も言わなかったが、言わなかったということはそこまで気にしてないということだろう。


「魔界門まで案内します、ついてきてください」


 ボホトークスの中は灰色の都市というのがピッタリだった、魔界特有の赤い空と灰色の都市はどこか世界の滅亡を感じさせる。


「私は魔界に住んでいたのですが、ある日人間界に飛ばされてしまいました」


 ガラムと一緒だ。


「魔界に行こうにも魔界門を通る為には膨大な金額を請求されてしまいます、どうしようか困っていたところを誘われたのです、魔界に帰る事が出来るって......」

「それでカザトランナに......」

「はい、結果は知っての通り、貴方達の手により蒼晶石を送るのは失敗、そして転移魔法陣は暴走して......今に至ります」


 なるほど。歩いていると町の中央、円状の塔のような大きな建物の前に立っていた。


「この建物の地下です」


 リリパーノは続ける。


「転移して目覚めればここにいて......魔界に帰れたのは良いですが、そうなると今度は好奇心が勝り、ここの探索をしていたのです......」


 そして見つけたのだと言う。


「これが――魔界門」


 左右に黒い石、門柱に絡む紫の脈動は、時折、心臓のようにゆっくりと波打っていた――生きているかのように。


「――これは使えるのか」


 ガラムは魔界門に近づきながら話す。


「わかりません、そもそも魔界門には遠目ではしか見た事ありませんから」

「ふむ、私も魔界門に触れられる機会は少ない、魔界側も人間界側も魔界門を恐れているきらいがあるからな」


 俺も近づいている、確かに魔力を感じるしかし、なにか足りない、ラヴァルトの時に感じた威圧感?とでもいうのだろうか......つまり。


「これは魔力が足りない?」


 俺のそんな意見にガラムは賛同する。


「恐らくはそうだ、転移魔法陣ほどではなくとも、魔界門にも魔力が必要だということだな......希望を抱いてもこれか、腹立たしい」


 そんな光景を見ていてレーゼックとリリパーノは申し訳なさげに謝り始めた。


「ご、ごめんなさい、やっぱりきちんと調べておくべきでした」

「す、すまない、金貨10枚は返すから勘弁してくれ!」

「金貨10枚ッ!?貴方、何を勝手に商売してるのですか!」


 とレーゼックとリリパーノが喧嘩を始める始末。


「とりあえず落ち着いて欲しい、イグリア、クーノ、どうだろうこれ」


 俺はイグリアとクーノに話しかけ、魔界門を調べてもらう。

 魔界門に魔力を込めるが微かに反応するのみで不発。


「ちゃんと動いてはいる、でも魔力足りてないわ」

「多分、人間とか一般魔族程度の魔力じゃダメですね無理をすれば命の危険も出て来るでしょう」


 ......魔力か


「蒼晶石はどうだろう」


 俺の意見にレーゼックとリリパーノは賛同した。


「出来るかもしれねー、転移魔法陣の時も人員が足りない時は蒼晶石で魔力を代用してたんだ」

「はい、ですので、上手くいく可能性はあるかもしれません」


 蒼晶石、まさかこんな所で必要になってくるとは。


「とりあえず、一旦外に出ようか」


 こうして廃都市ボホトークスでの魔界門を使っての人間界への帰還は一旦仕切り直す事となった。

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