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第36話 いざ魔界門へ


 ヒズアグの散策を終え、明日へ備え研究所で寝ていた。


「あれ、イグリア?」


 隣にはガラム、ソファではクーノが寝ているが、イグリアがいない。


「外にいるのか」


 なんとなく魔界の夜空を見てみようと思い、俺も外に出る。


 魔界の夜は紫色だ、月も太陽と同じく日食の様に中央は黒く渕のみが白く輝くのみ。


「イグリア」


 イグリアは研究所のすぐ近くで座って夜空を見上げていた。


「......起きたのね」

「あまり夜更かしすると明日に響くぞ」

「わかってる」


 イグリアは魔界に良い思い出がないらしい、だがそれでも自分の生まれた魔界に思うところがあるのだろう。


「魔族の中では魔界は神が見捨てた世界って言われることがあるの知ってる?」

「知らない、そうなのか?」

「勝手に言ってるだけだけどね、太陽や月の中央が欠けているのは神がいないから、人間界こそが神が愛した神のいる世界だ、てね、まぁ少数だけど」


 イグリアは立ち上がる。


「きっと皆、安心感が欲しいのね」

「......」


 安心感、か。


「話してたら少し眠くなってきたわ、私は戻る、貴方は?」

「もう少しここにいる」

「そう、おやすみ」

「ああ、おやすみ」


 俺はしばらく、魔界の夜空を眺めていた。


 ■


 紫の夜空がゆっくりと赤く色を変えていく。


「さぁこの研究所ともしばらくお別れだな」

「しばらく?」

「ああ、ここは魔界の拠点、いずれは様子を見に来る予定だ」


 ガラム的には魔界に定期的に顔を出す予定か。


 俺たちはそれぞれ軽く身支度をして、約束の場所へと向かった。


「おはよう、ちゃんと来たな」


 レーゼックは緊張した様子で門の傍に立っていた。


「レーゼック、真摯に対応し給えよ、クーノ相手に金を巻き上げたのだからな」

「わかってるって」

「ガラム様、私を何だと思っているのですか......」


 レーゼックは引きつった笑顔を浮かべた。


「おいおい、やめてくれよ、俺は誠実な案内人だ」


 とりあえずお互い話は終わり。


「とりあえず行こう」


 こうして都市ヒズアグから離れていくのだった。


「で、ここまで来たんだ、魔界門ってどこにあるのかいい加減に教えてくれないか」


 俺が訊ねると、レーゼックは周囲を気にしてから声を潜めた。


「ヒズアグから東にある、都市アルザギール――そこの外れにはな、放棄された廃都市があるんだが......そこにあったらしい」

「魔界門がか」

「ああ、カザトランナの暴走に巻き込まれた魔族がそこで転移しててな、色々と歩いている内に見つけたという訳だ」


 廃都市......気になるな。ガラムも同じ意見らしい。


「本当に見つかればいいのですが」

「確かめる価値はあると思う、行くだけ行ってみよう」


 ガラムが呟き、俺たちは顔を見合わせる。


 こうしてその廃都市まで進んでいくのだった。


 東門を抜けてしばらく歩いた先にヒズアグとは比べ物にならない規模の都市が顔を出し始める。


「魔界でも有数の都市アルザギール......か」


 ガラムは意味深にこっちを見る。


「イグリア、言っても構わないか?」

「......私が言う」

「ふむ、了解した」


 イグリアは俺の近くへと歩き始め語る。


「そのアルザギールという都市を管理している高位魔族の名がアグドラド=キキラスカ、私の父さんよ」

「――」

「......まさか近くとはいえ行く事になるとは思わなかったけど」


 レーゼックは驚いている。


「ま、まさかイグリアッお前があのアグドラドの娘ッ......いや、いや確かに白い髪に赤い瞳、竜の力......言われてみれば該当するかッ」

「うるさいわよ、レーゼック」

「す、すんません!イグリア様!」


 レーゼックは姿勢を正しイグリアに一礼する。


「切り替えが早いな、お前......」

「そりゃそうだとも!魔界で最も恐れられる方の一人、それが黒竜であり、イグリア様はその末裔なんだからな!」

「それでそこまで変わるものなのか......」


 こうも変わるとイグリアのすごさというか偉さ?の様なものがわかってくるな。


「いい心がけね、じゃあ今度からは私の命令は聞きなさい」

「うっす!」


 イグリアはちゃっかりレーゼックを手中に収めてしまった。


「ってことはイグリアはその廃都市の場所は知ってるのか?」

「知らないわ、そんな都市がある事も今知った」


 レーゼックは歩きながら話しかけてくる。


「かなりわかりづらいところにあるんだよ、しかもわかりづらいように魔法でコーティングもされている徹底ぶり、知らなきゃ気づけない」


 こうして都市アルザギールまで歩いていくのだった。

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