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第32話 夜会話


 明日に備える為に今日は研究所を借りる事になった訳だが......


「......なにこれ」


 もともと小さな建物だ、雑魚寝になるというのも仕方のない事なのかもしれない......


「まさかこんなに人が来るとは思わなくてね、来ると知っていればちゃんと準備していたとも」

「嘘です、そのような財政的余裕はありませんから」


 なんで今日あった恩人の家で雑魚寝しているのか......俺の隣の右にイグリア、左にガラム、クーノは一人ソファで寝ている。


 因みに布団は2枚だけなので俺とイグリアで布団を半々にして使っている。


「......なんでこんなところで研究してたんだ?」

「というと?」

「別にヒズアグとかで研究しても良かったんじゃないか?」

「それは無理だな」

「なんで?」

「――魔界では原則、魔界門でのみ人間界への移動が許されてるからよ」


 俺の疑問に解答したのは、イグリアだった。


「そう、イグリアの言う通りで、いうなれば我々は国外逃亡を図ろうとしている犯罪者だからだ」

「そこまで厳しいのか......」

「魔界門の通行を自由にしたら魔界はすっからかんになるだろうね、ここは危険な割に景観は不気味だし、食い物もイマイチ......高位魔族の気まぐれに巻き込まれることだってある」

「好き放題言ってるわね、まぁ......ある程度は説得力があるのが残念なところよ、力がない魔族は軽視されがちだもの」

「そうだろう、そうだろう、イグリア、高位魔族としての意見、感謝しよう」

「......」


 さらっと、イグリアが高位魔族だって明かされた訳だが。


「イグリア、高位魔族だったのか」


 まぁ並みの魔族ではない事は察していた。


「な、なに......知らなかったのか?」


 ガラムは驚きの声を発する。


「契約者と従魔なのに......」

「そんなの千差万別だろ」

「そ......それもそうか......まあいつまでも隠し通せるものでもなし、仕方ないな、許しなさい――では、おやすみ!」


 ガラムは逃げるように布団を被る。


「......」

「......」


 どれほど経ったか、聞こえるのはガラムとクーノの寝息とガサガサという不快な虫の音、イグリアの呼吸音。


「起きてる?」


 隣から聞こえた囁くようなイグリアの声に反応する。


「起きてる」


 イグリアはもぞもぞと体勢を変え、こちらに向き直ってきた。


「私は魔界では高位魔族の血族よ」

「そうか」

「前に話したわね、私が町を半壊させた話」

「ああ」


 ラヴァルトとの戦いの時に言っていたな。


『竜の力を表に出せば出すほどに制御が効かなくなる、昔、竜の力に引きずられて、暴走した事がある、気づいたら街を半壊させた事もあった』


「魔界の大きな都市には大体、高位魔族がいる、彼らの役割は襲い掛かってくる魔物や魔族を排除すること」

「襲い掛かってくる?」

「魔族の場合なら野心とかを持っての行動ね、大体失敗するけど......高位魔族は前線に立って防衛する事が義務であり求められている事、それで実力も示せるしね」


 魔界ってそういう場所なのか。


「......一族の中で最も竜の血を色濃く受け継いでいた私も同じ様に周りから期待されてたわ、私も期待に応えたかったし応える力があった、でも――現実は自分で都市を壊したんだもの、馬鹿よね」


 イグリアは苦笑する。


「壊した時の事は覚えてない、でも意識が回復してとんでもない事をしてしまったと、まあもう遅かったけど......それ以来、皆の視線が変わった。私が通れば道を空けられ、口を開けば震えられる――まるで、怪物でも見るみたいにね」

「......」


 イグリアは平然と語る、勇気を出して話してくれたのだと思う。だからこそなんていえば良いかわからなかった、どんな言葉も嘘っぽく聞こえるだろうから。


「でもね、案外慣れるものよ、それに召使に欲しいものを命令すれば色々持ってきてくれたし、当然よね私を怖がってるんだから」

「......想像できないな」

「......最初は出会った時は怖がってた癖に」

「最初はな?今のイグリアを怖がったりしない」

「ふん......どうかしらね......」


 イグリアは布団を被り、俺の分の布団を全て巻き取っていく。


「ちょっと!」

「――おやすみ」


 イグリアがそう言って眠りについた。


「あーあ、俺の布団無くなってしまった......」


 せめて少しくらい、残してくれてもよかったのになぁ、仕方ない、ガラムの布団を巻き取り俺も眠りについた。

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