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第26話 決着と転移


「それも契約者と従魔の形か、良いだろう、私も興が乗って来たぞ――」


 ラビッタフの闘志が燃え上がるのが目に見えてわかる。


「『瞬踏』」


 ラビッタフの姿が一瞬で揺らぎ、次の瞬間には俺の真正面に現れる。


「ッ――『黒炎閃華――」

 剣に魔力を込め――

「それは見切ったッ――」


 剣を握っていた腕を蹴り上げられる――


「『竜翼展開』」

「――ッ!?」


 イグリアは竜の翼を展開しラビッタフの懐へと突っ込みつつツメをねじり込む。


「グハッ......」


 ダメージが入った!


「ら、ラビッタフさんがッ――」


 周囲で観戦している奴らも動揺を隠せていなかった。


 ダメージは入ったが、まだ決め手に欠ける。


 ラビッタフは吹っ飛ばされる中、態勢を立て直し――


「『瞬踏』!」


 ラビッタフの姿が一瞬で揺らぎ、次の瞬間には俺の真正面に現れていた。


「――ッ!!」


 やはり早いッ!だが、どうにか右へと避け目の前にはラビッタフが佇む。


「ならこれは捌き切れるか――『辻風つじかぜ』」


 ラビッタフは身体を捻じり、そのままに剣を――


「クッ」


 激しい横切り、剣で防いでも風の刃が俺の身体を傷つけていくッ!


 身体に風の刃が切り刻まれていく。


「――後ろだな」

「――ッ!」


 イグリアの気配を察知したラビッタフは今度はその刃を後ろにいたイグリアへと向けた。


「殺意を隠しきれていなかったぞ、契約者を傷つけられて感情的になったか」

「うるさい!」


 ラビッタフの刃をイグリアは受け止める。


「――ッ」


 どうする。


「『竜爪閃華』」

「『風払』」


 このままでは埒が明かない。


「考えろ――」


 ドルガーとの戦いを思い出す、俺はあの時、イグリアの魔力を感じ、技を模した。

 契約者と従魔はそうやってお互い影響し合い強くなっていく。


「集中――」


 イグリアの魔力を手繰り寄せる。


 深呼吸、息を吸う度に、手繰り寄せる度に感じるイグリアの魔力と竜の力。

 竜の力が入り込み感じる暴力性、そしてそれを抑える理性、まるで水を蓋で圧縮していくような感覚だ、これをイグリアは普段味わっているのだろうか?


 きっと聞いたって答えてはくれない、無自覚なのかもしれないし。


「――」


 ただ――イグリアの事が少しわかった気がする。



「――『瞬踏』」

「――ッハルフミ!そっちに来る!」



 イグリアの隙を突くようにラビッタフがこちらへ飛んできた。


「何を企んでいるか知らないが、隙だらけだ――」


 ラビッタフは猛スピードで突進してきながら――


「まずは契約者の命、頂くッ!」


 ラビッタフは剣を大きく横に振りかぶって――


「『辻風つじかぜ』」


 俺の腹に目掛けて横切り――


「――さらば」


 いや、終わりじゃない。

 魔力を限界まで絞り込み、右手の剣に圧縮――


「――ッ!?」


 ラビッタフはもう攻撃は止められない、奴が剣を振り切る前に、その隙を突く!


 地面を強く踏み込む。


「『竜牙衝りゅうがしょう』!」



 ヒュ――ドンッ



 収束した魔力による一閃、その威力はまさしく一点突破、ただ一直線に剣は炎を纏いながら前方を貫いた。


「グアァッァ!」


 剣はラビッタフの腹部を捉え、爆裂するような衝撃と共に後方へと吹き飛ばす。

 ガラガラと、奴らが潜んでいた横穴は崩れていった。


「――ッ......」


 剣を突き出したまま動けなかった、そして全身から脱力感が溢れそのまま倒れそうになる。


「――っと」


 イグリアが俺を支えてくれた。


「ありがとう......」

「......危なっかしい......」


 イグリアのそんな言葉に思わず笑う。


「......周りが騒がしいな」


 ふと周囲を見ると、ラビッタフがやられた事で動揺を隠せていない魔族たち。


「まさかやられたっ」「逃げないと――」「――あーあそこはッ――」


 今の俺にこいつらが一斉に襲い掛かってきたらやばかった、逃げてくれるならそれでいい。


 すると――


「静まれッ!」


 ラビッタフが吹っ飛んだ方から大きな声が響いた、その声に萎縮したのか静かになった。


「ラビッタフ......」


 声の方を向く。


「......まだ立ち上がるのか......」


 ラビッタフは身体から血を垂らしながらも立ち上がる。


「......契約者と従魔......忌み嫌うものもいるが......なるほどな」


 ......いよいよ不味い。


「......イグリア、俺を掴んで空は飛んだりできるか?」

「どうかしらね......途中で墜落するかも」


 最悪そういう選択肢も脳裏に浮かぶ。

 そんな俺の気持ちとは裏腹に周囲にいた奴らは崩れた横穴を掘り起こそうとしていた。


「......騒がしくて悪いが彼らにとっては帰路に使う転移術式の魔法陣があったのだ」

「俺が今潰しちまった穴にそんなのが......それをつかって魔界に蒼晶石を送ってたのか」

「......そうだ」

「なんでだ?」

「......使うからだ、私も細かくは知らないがな」


 答えになってない気もするが......これ以上は答えてくれないだろう。


「――発見、発見ッハルフミ、イグリア発見!」


 遠くから聞き覚えのある声が聞こえる。


「シャランッ.......ってことは!」


 シャランはサーシャの従魔だ。


「ロンネにリケムッ」


 無事第一隊と合流できたのだ、エズバート達が助太刀に来てくれた。。


「助けに来たわッ」


 良かった!


「......増援か、これ以上は無駄な戦いだな」


 ラビッタフは剣を鞘に納め、俺に背を向ける。


「今日の所は引く、だが、次こそはお前を倒そう――」


 こうしてラビッタフはその場を後にした。

 他の魔族たちは興奮し始めて、他の魔族やらはエズバートらに攻撃を加えようと魔法を撃ち始める。


「ハル君、イグちゃん、大丈夫ー!?」


 サーシャからの声に俺も返事を返した。


「俺たちもサーシャの元へ――うわッ!」


 俺の両肩を鳥型の魔族が掴んできた!


「離せッ」

「ゲヘヘヘ、お前気に入ったぜい、俺様のコレクションに加えちゃる!」

「はあッ!?ふざけ――ッ」


 ダメだ、さっきの戦いのダメージが回復しきれていない。

 そのまま猛スピードで地面に叩きつけられる――


「――返してもらうわ、鳥ッ」

「ゲフェッ!?」


 イグリアが飛んできて、寸前の所で俺を抱きかかえそのまま着地する。


「わわわ、来るな来るな」


 イグリアと俺らが着地した場所は先ほど崩れたガレキ付近だった、魔族やら人間やらがてんやわんやしている。


「転移術式を掘り起こそうとしてる最中なんだッ」「貴様が埋めたからなッ」

「僕の従魔が泣いてる」「――邪魔だどいてくれ!」


 好き放題言いやがって......


「わかったわかった」


 こいつら、かなりバラバラだな、エズバート達と戦ってる奴らも入れば、転移術式を掘り起こすのに必死な奴ら......仲間とかではないんだろう。


「――やった、やっと出て来たぞ!」


 転移術式、魔界と人間界を繋げ移動できるというその魔法陣は地面に複雑な紋様がいくつも合わさって描かれていた。

 あんなにガレキで埋まっていたのに紋様は崩れる事なく、静かに水色で描かれていた。


「――うわあああ」


 俺が魔法陣を見ていると叫び声。


「危な!」


 凍り付きながら吹っ飛ばされてくる魔族を俺とイグリアは何とか避けるが後ろにいた掘り起こすの集中していた奴らには当たってしまう。


「――おい、邪魔すんなッ」


 それにキレて魔法による反撃を行い始める。


「待ってください、繊細な転移術式付近で乱闘なんてしたら――」


 それを諫めようと理知的な魔族の一人が話すも誰も聞く耳を持たなかった。


「乱闘になってきた、俺たちも早く――」

「逃がさねぇッ――『フレア』」


 うわ、こっちにも攻撃して来やがった、近くに仲間もいるのになんて奴だ。


 赤い炎の塊が飛んでくるッ――


「『黒炎の息吹』」



 カッ――



 イグリアはブレスでその魔法を相殺し激しい爆発が巻き起こる――


「クッ......!」


 爆風により巻き起こった土煙で視界が遮られる。


「――だから、こんな所でそんな激しい戦闘したら――」


 魔族の苦言が聞こえて来た――そして。


「な、なんだ......?」


 転移術式周辺で大きな魔法を行使した奴の所為なのか、地面――転移術式が激しく発光し始め、近くにいた俺たちにも水色の光が包みこむ――


「――なにこれ?」


 イグリアは困惑していた、何だかこのままだと不味い気がする俺はイグリアの手を取り逃げようとするが――


「――待て待てッ転移中に動くと危ないぞッ!」


 魔法陣の近くにいた一人の魔族が忠言してきた。


「転移?まさか俺たちはいま魔界に転移しようとしてるのか!?」

「そうだよッ、馬鹿どもが魔法陣の近くで暴れたからな!暴走しやがったんだ!」


 光は激しくなっていく――


「ハル君ッイグちゃん――」


 サーシャが叫ぶ。


「俺たちは平気だ、すぐに戻る!」


 光が強くなると、イグリアが手を強く握って来た。


「ハルフミ、手を離さないで――」


 皆が魔法陣に目を向けるのを見るのを最後に完全に光に包まれた――

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