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第23話 VSジュエルアント


 坑道の出入り口の確認をしている中、後ろでひっそりついてきていたリケムが今回のターゲットのジュエルアントについて説明してくれた。


「――いきなりジュエルアントが現れた?」

「そうなんだよ、ジュエルアントの好物は鉱石だし採掘場は奴らにとって絶好の場所だから普段から警戒して定期的に調査してたんだ、なのに何の前兆もなく、ジュエルアントの縄張りになってた」

「普通はありえないんだよな?」

「そんなすぐにはありえない、ジュエルアントの女王がやってきたとしても事態が悪化する前に討伐してたよ」


 そんな事を話していると――


「――ちょっと待って」


 イグリアが足を止めた。


「いま、聞こえた?」

「ん?」


 耳を澄ませる。

 確かに、地面を擦るような異音が穴の奥から聞こえて来る。


「あれは......」


 視界に現れたのは、宝石のように煌めく青い外殻を持つ巨大な蟻――。


「――あれがジュエルアント」


 リケムが後ずさりながら語る。

 凡そ80㎝の蟻が3匹。


「こいつらが......」


 リケムとロンネは後方に下がっていく。


 ジュエルアントは口の牙をガシガシと音を立てながら近づいて来る。


「......」


 距離をとっていく。


「――」


 まず動いたのはイグリアだった。


「――『竜爪閃華』」


 ジュエルアントの顔面にイグリアのツメが突き刺さる。


「想像通り硬い......」


 他のジュエルアントも襲い掛かってきた――


「『黒炎閃華』」


 奴の顎に剣を突き刺す――


 カァンッ!


 まるで鉄板を殴ったような音が響く、手が痺れた。


「ッ......硬」


 グロッタスコーピオンの時と同じだ、決定打に欠けている。

 イグリアはブレスで応戦することで対応できている様だが俺にはそんな芸当は出来ない。


「ハルフミさんッジュエルアントは一番後ろの部位――腹が弱点です!」


 リケムは後方から炎の魔法を放つ。


「『ファイアランス』」


 炎の槍がそれはジュエルアントの腹に突き刺さると腹からは青く発光した液体が零れ落ち、ジュエルアントは態勢を崩した。


「――ッおらぁ!」


 右手で振るっていた剣を左手で全力で突きあげジュエルアントの顔面ごと切り砕く!


「――『竜爪閃華』」


 イグリアはもう一匹のジュエルアントの腹部分に攻撃を加える――


「『黒炎閃華』」


 俺も同じようにジュエルアントの腹を貫いた――中からは青く発光した液体が噴出して息絶えていった。


「確かに腹の部分は脆いわね」

「まぁ顔面よりはな」


 イグリアはやれやれと言った様子で語った。


「しかし、ここに来てから硬い魔物しか戦ってないなぁ」


 リケムは座り込んでいた、ロンネが駆け寄ってくる。


「みんな怪我とかしてない?あたしは回復魔法使えるから何かあったら言ってね」


 ロンネは回復できるのか、確か回復魔法は習得するのが難しいんだっけ。


「こっちは大丈夫だ、イグリアも......平気そう」


 ロンネは安心した様だ。


「第一隊の方は大丈夫だろうか――」


 とか考えているとイグリアが崖の下の方向に指を指す。


「人がいる」

「採掘場の関係じゃないか?」

「いまは閉鎖中でしょ」


 今いる場所は少し上がった崖のような所でイグリアの指した箇所も茂みを上から見下ろ形になって見やすかった、そしてよく見て見るとなんだかコソコソとしながら移動している男が見えた。


 リケムもそれを見る。


「おかしいな、依頼中は危険だから人は近寄らせないようにしてるはずだけど、ちょっとそこの――もごッ!?」


 リケムが大声で呼ぼうしたので咄嗟に止めた。


「い、いきなり何を――」

「......つけてみよう」


 俺の提案にリケムは目が点になる。


「え?」

「だってさ、見るからに怪しいだろ、あれ」

「......確かにそうだけど」


 イグリアを見ると俺と同じ感想のようだ、ロンネは少し考えていたが賛同してくれた。


「わかった、僕も気になるし......」

「――よし、慎重に行こう」


 こうしてあの怪しい男の後をつけることになったのだった――



 ■



 第一隊が先を進んでいく。


 そして掘り抜かれた通路を抜けた先には開けた空間が広がっていた。

 天然の空洞をさらに掘り広げたようになっていた。


「――巣」


 そう、これは巨大な巣、ジュエルアントの巣だった。


 部屋の中心には体長2mほどの全身を青い外殻で覆っている女王ジュエルアントが鎮座していた。


 その足元では1mほどの近衛のジュエルアントが警戒態勢で蠢いていた。


「うぇッ......」


 ムンブルが息を呑む。


「時間をかければ散り散りになっているジュエルアントが集まってしまう、みなさん短期決戦ですよ」


 エズバートの言う通りだとイトスも賛同し、前線にはイトス、エズバート、ザイン、サーシャ、ムンブルとペスケーは後方支援に回る。


「来る――!」


 近衛が咆哮のような音を立て、一斉に――女王の護衛部隊が殺到する。


「『サンダーボルト』!」


 サーシャの雷の魔法が展開する進行を阻む。


「私とイトスは女王を狙います!」


 サーシャの雷により動きが鈍くなったのを確認しエズバートは先頭に飛び込んだ、そして一匹の顎を受け流して剣で斬り払う。


 カァァンッ!


 金属のような甲殻には通じない、しかし――


 カチカチ


 剣が触れた瞬間、冷気が一気に爆ぜ、ジュエルアントの脚が白く凍り付いていく――


「『アイスエンド』」


 凍てついたジュエルアントは身動きが取れない。


「サーシャさんッ」


 エズバートの凍らせたジュエルアントをサーシャは短剣を一番後ろ、他部位に比べて脆く弱い腹に突き刺し雷を内部で放ち止めを刺した。


 ザインも剣で前線でジュエルアントを倒していく中――


「くッ」


 ジュエルアントによって怪我をするが。


「ヒールッ」


 ムンブルが回復魔法で癒す。


「――ッ」


 ペスケーの魔力が収束していく――


「『エアロブレイク」」』」


 風の刃がジュエルアントを切り刻みながら女王の元へと向かう――しかしながらジュエルアントの頑強な身体の表層を削る事しかできない、ジュエルアントはあざ笑う様に攻撃を仕掛けて来たペスケーに向かおうとするが――


「ッ!?」


 ジュエルアントの足を切り落とされており、周囲の連携を崩す。


 女王へと向かう途中に入る邪魔もペスケーやサーシャからの援護により捌いていき――イトスとエズバートは女王の懐へと踏み込んでいった。


「――!」


 真正面から女王に挑むのはエズバート。

 女王が襲い掛かるが牙をその剣で受け、踏みとどまる。

 剣に触れたた事で凍り付いていく、女王は異変に即座に反応し、跳ねるように離れたが――

 イトスはその隙を見逃さなかった。

 いつの間にか女王の真横に移動していたイトスは槍を腹に狙いを定め――


「『集点一撃』」


 閃光のごとき突きが、女王の腹部を正確に貫いた。


「ギイィ――!」


 外殻は砕け青い発光した体液が噴き出しながら、悲鳴のような咆哮が響き渡り、そのまま女王は倒れる。

 女王が倒れ、他のジュエルアントの残りも逃げるか、倒されていく中、戦闘音が小さく静まっていった――


「終わった、か」


 ザインとサーシャはエズバート達の元へと近づいていき、ペスケーとムンブルも駆け寄ってくる。


「女王を殺した事で巣としての機能は死んだ、後は生き残りのジュエルアントの駆除ですかね」


 イトスの発言に安堵したのも束の間、エズバートは何やら釈然としない様子だった。


「......すみません、ちょっとこの広場を調べても?」


 エズバートの意見に賛同したイトス、エズバートは周囲を軽く見て回り、そして――


「......魔法陣」


 女王の間の奥には青い石が乱雑に放棄されていた、それをイトスは『蒼晶石』だと一発で理解した。

 そんな蒼晶石の中心には魔法陣が描かれていた。


「これは......恐らく転移術式ではないでしょうか」


 ムンプルの簡易的な解読の結果、エズバートの言う通り転移術式であると判明した。


「なんで......こんなところに転移の魔法陣が」


 サーシャは小さく、そう呟いた。

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