第22話 第一隊と第二隊
第二隊の俺らは地図を頼りに採掘場の周囲を調べていた。
「ここの穴も特に変化なし、魔物も出てきていない」
中で戦闘が活発になったら状況は変わるのだろうが現状は平和そのものだった。
「次行こう」
俺たちの役割は周囲の同じ場所をグルグルと確認し続けるというもの、楽ではあるが正直ダレる。
「ふあ~」
イグリアも退屈そうに欠伸を漏らす。
「......あんた達とはシラサ遺跡でも一緒だったの覚えてる?」
聞いて来たのはロンネだった。
「え......」
もしや彼女も参加していたのか?流石に参加したメンバー全員は覚えてはいない、緊張もしてたし。
「どうだったっけな」
しかし、いた気も......する
「覚えてないわ」
イグリアは即答した。
「まぁ覚えてなくて当然よ、目立った活躍したわけじゃないし」
「それがどうかしたの?」
「いえ、あたしの事を恨んだりしてないかなって......」
「恨む?なんで?」
イグリアは本当に疑問に思っている様子だ。
「あたしはあの魔族との戦闘でパニックになって逃げだしたから......その所為で少数で戦闘する羽目になったでしょ?」
そういう事か、ラヴァルトの融合魔物によってほとんどの冒険者たちはパニックになって逃げだしてしまったんだったな。
それを悔いているのか。
「本当はすぐに謝らないといけなかったんだけど、どうにもタイミングが合わなくて」
「いや全然気にしてなかった」
「だけどその所為で危険な目に」
「本当だって、イグリアだって気にしてる感じしないだろ?」
イグリアは欠伸を一つ。
「ほら」
「......わかった、次はあんな醜態晒さない」
「それで良い」
ロンネの表情が少し明るくなった気がする。
「......(みんな仲良くしてる中、会話に入れない僕なのであった......)」
後ろでひっそりとそんな様子を眺めていた赤獅子のリケムなのであった。
■
第一隊――通常なら人の手で整えられたはずの坑内は不自然なほどに掘り広げられていた。
場所によっては天井が崩れかけており、赤土に混じって魔鉱石やらがむき出しになっている。
先導するのは土地勘のあるA級冒険者のイトス、そして索敵に長けた魔法を持つB級のムンブル、他の第一隊は彼らについてながら進んでいた。
「ふむ......」
エズバートは意味深に考え込む、それをサーシャは聞き逃さなかった。
「エズバートさん、何か気になる事でも?」
「ああ、どうにも食べ方が汚いな、と思いまして」
「......食べ方?」
サーシャの脳内に疑問符が浮かぶ、そこへザインはが口を挟む。
「ジュエルアントが餌を目のまえにして放置してるのはおかしいって事だ」
「――あーなるほど!」
ザインのそんな言葉にサーシャはようやく理解した。
「魔鉱石はジュエルアントにとっては良質なご馳走、それを露出したまま放置というのは違和感があります、普通は食べるか女王への献上、どちらにせよ巣へと持ち帰るはず......」
「エズバート様もそう思いますか」
エズバートの感じた違和感には後方にいた赤獅子のペスケーも思うところがあったのか会話に入って来た。
「ジュエルアントは食欲旺盛、こういった事はわたくしも珍しいと思いました」
「やはり、ここのジュエルアントはただ大きいだけではない、独特の特性を持っていると考えた方がいいですね」
先導していたイトスが周囲を見ながら話す。
「ジュエルアントの所為でしょうが、地図にはない道が出来ています、皆さん迷わないように注意してください」
第一隊は警戒をしながら奥へと進んでいくのだった。
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