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第21話 作戦


 朝、俺たちはもう一度、ギルドへと向かった、目的はもちろんズータスに今回の依頼への参加を認めてもらう為だ。


「あの後、色々考えたが......お前らグロッタスコーピオンを倒したんだってな?」

「まぁはい、しかしそれをどこで?」

「お前らの御者のゲークだったか、あいつが言っていた」


 ゲークが......


「それに俺たちも増援を待っている余裕はないしな、今回は特別に参加を認める――」

「ありがとうございます!」

「細かな事は現地で説明する――」


 ■


 こうして無事、認められた、俺たちはカザトランナの町を抜けて採掘場へと向かっていた。


「大丈夫だとは思ってたけど、良かったね」


 サーシャも安心した様子だ。


「それにしても他の皆は先に行っちゃうなんてひどいよね?」


 サーシャが文句言っていたのは同じ宿に泊まっていた冒険者連中の事だ、先に採掘場へ行ってしまった事にご立腹な様子。


「そういえば......一緒に来てた冒険者の中にはザインもいるんだっけか」


 ザイン、その名前にイグリアも反応した。


「......ハルフミに絡んできた冒険者ね」

「え、ハル君にまた絡んでたの?」

「そうよ」

「はあ......元々そういう人たけど、どうして最近はハル君にばかり絡むのかなぁ」


 そういえばサーシャとザインは同期だったんだっけか。


「ごめんね?ザインは悪い人ではないんだけど......」


 サーシャも困っている様子だ、話題を変えよう。


「そういえば、今回はどれくらいの冒険者が集まってるんだ?」

「シラサ遺跡の時よりは規模は小さいかな、『銀鷲』も6人くらい?」

「俺たち以外はB級以上なんだろ?」

「A級だっているよ、良い機会だし後で紹介するね」


 赤土を踏みしめながら進むと、崩れかけた石造りの門が見えてきた。


「ここが、問題の採掘地」


 現地にはサーシャの言う通り冒険者たちが待機していた。


「ここら辺にいた魔物はあたし達が倒したんだけど、内部にいる魔物に手こずって怪我人が出ちゃったから増援をお願いしたんだ」


 サーシャの後を追う様に俺たちも駆け寄る。


「お待たせ~」


 サーシャの声に先に着いていた冒険者たちの中でザインは真っ先に反応した。


「おせぇぞ、サーシャッ」

「ごめんごめん、ちょっと待ってね~」


 そしてサーシャが近づいたのは水色の長い髪に眼鏡をかけた男だった、そしてその男にサーシャは駆け寄る。


「この人がA級冒険者のエズバートさん!」


 エズバートは会釈する。


「ハルフミさんとイグリアさんですね、初めまして」


 エズバートはつい最近まで遠征しており面識がなかった。

 さらに今回あまり関わりのなかった冒険者がいた。


「そしてこの人はロンネちゃん!」

「どうも」


 頭を軽く下げて挨拶するのは紫色のボブヘア―の少女ロンネ。


「エズバートさん、どうして先に行っちゃったんですか」

「先に魔物が出てきていないか気になりましてね、偶然ロンネさんとザインさんも見つけて、せっかくだから連れて来てたんですよ」

「あたし達にも声をかけても良かったのに」


 サーシャはエズバートと話してる、今いる6人が『銀鷲』のメンバーだ。


「――みんな集まったな」


 ズータスがやってきた今回の作戦の説明が始まる。


「前回、俺たちはここにいた奴らをぶちのめし、そして中への調査時にも何匹かは討伐したが負傷者が出て結局奥の元凶までは行けずじまいだった」


 ズータスは地図に手を置きながら、全員に目を配った。


「俺たちの目的は内部に巣を作っている今回の元凶ジュエルアントを倒す事だ――奴は地中に潜り、その硬い顎で穴を広げながら鉱石を喰らう、そして体を硬化させ変化させていく厄介なデカいアリだ」


 ズータスは溜息を吐く。


「通常個体でも面倒だが、どうにもここの奴は普通よりデカいし異様に硬い、その上、徐々に行動範囲も広がってやがると来たもんだ」

「デカいって、どれくらいの大きさなんですか?」


 俺が手を挙げると、ズータスは片眉を上げた。


「普通のなら40㎝程度、だが今回のはその倍、80㎝だ、岩盤に潜ったり地中移動も確認されてる様だ、気を抜いたら背後から潰されるからな、しかもさらに厄介な事は内部は地盤が脆く地形が崩れてるところも多いって事だ」


 ズータスは一人の冒険者に顔を向けた。


「では『赤獅子』が誇るA級冒険者イトスが今回の作戦の指揮を執る、頼んだぞ」


 イトスが出て来る、茶髪の好青年といった様子だった。


「自分が前回と同様に指揮を執ります、前回の作戦では負傷者が出て撤退を余儀なくされました、今回は『銀鷲』のさらなる増援が来てくれた事に感謝します――作戦についてですが」


 それからイトスの説明が始まった、この採掘場はここ以外にも中に入る為の出入り口があるらしい。

 第一隊は中でジュエルアントの女王を討伐。


「女王を討伐するまでの間、第二隊には逃げ出してきた魔物を倒して欲しい」


 第二隊がここ以外にも存在するいくつかの穴を巡りながら出向いていき、逃げ出しきたジュエルアントや魔物などを討伐していく、といった作戦だった。


「主戦力であるA級冒険者の私イトスと『銀鷲』のエズバートを筆頭にした第一隊が女王討伐を目指します」


 こうして第一隊はA級冒険者で赤獅子のイトスと同じく赤獅子のB級冒険者のペスケーとムンブル、銀鷲はA級冒険者のエズバート、B級冒険者サーシャとザイン。

 第二隊に配属されたのは銀鷲である俺ハルフミとイグリア、ロンネ、そして赤獅子のリケム。


「私達、第二なのね」

「まぁ、一応C級だからな、本音の所ではリスクは犯せなかったんだろ」

「これじゃあ私たち来た意味ないじゃないの」

「いや、そうでもないんじゃないか?」


 女王討伐にばかり専念してると穴から魔物が逃げ出してきた時に対処は出来ない、それに中の広さはわからないが閉所で大所帯というのも戦いにくいだろう。


「ここは町にそれなりに近いからな、俺たちが来た事で丁度良く二手に別れる事が出来る......的な」

「そこは断言しなさい」


 イグリアの苦言に俺も苦笑い、確証もないから仕方ないだろ。


「――ハルフミさん、貴方の考えは大体当たっていますよ」


 話しかけて来たのはエズバートだった。


「前回の失敗は人員過剰、元々地盤の悪い場所で狭く戦いづらかった......結果負傷者を出してしまい、撤退を決断したのです」


 エズバートは軽く笑う。


「そして内部での戦闘後に魔物の活動が活発になったと知り、今回の作戦をイトスさんと立案したのです」


 なるほど。


「――では、皆さん、お気をつけて」


 こうして俺たちも、それぞれの位置へと足を運んだ。

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