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大団円

――あれから、数週間後。

マナ・カーンの街はすっかり元通りとなり、活気ある営みが戻りつつあった。


……そして今日は。


「盛況ですね、一体何のお祭りですか?」


「ああ、今日は聖女ドロシー様と勇者クロウ様の結婚式が執り行われる日なんだ」


旅人がなるほどと相槌を打ち、会場へと目を向けた。



「聖女ドロシー、並びに勇者クロウ。両名は一生の愛を神に誓いますか?」


白いドレスとスーツに身を包んだ二人。

神父の言葉に二人は「誓います」と答え、お互い恥ずかしそうに顔を見合せながら、キスをした。

会場は大きな拍手に包まれる。


「ドロシーちゃんを幸せにしたってな!」


「こういった儀式の場は初めて来ましたが、中々悪くないものですね」


レオンとアイゼンはドロシー達を笑顔で迎え入れながら、答える。


「……クロウ、儂は……儂は……嬉しくて……、うおおおおおん!」


柄にもなく男泣きをするカーン王に対し、クロウは優しく肩を叩く。


「俺も親父の気持ち、全然理解して無かった。……これからは親孝行させてくれ」


その言葉にカーン王は余計に泣きだした。

私は王子が王を慰める光景をぼーっと眺めていると、メイが話しかけてきた。


「すみません、あの時はわたくしのリサーチ不足でして。

カーン王の女遊びの件については、ただのデマだったようです

……どうやら聖女様が婚約破棄された後に、聖女様の後釜としてクロウ様の嫁候補を探していただけの事でした」


メイは静かに謝ると、私は黙って首を振った。


「あれからも色々悩んでいたそうなので……侍女であるわたくしが気付いてさえいれば……」


「……皆迄言うな」


カーン王は私達の会話を聞いていたらしく、話に割り込んできた。


「本当に謝らなければいけないのは儂だ。部下に妙な憶測が広まるような行動をしたあげく、無実の罪で危うく聖女様に手を掛けるところであった。この罪は一生を賭けて償うつもりである」


「カーン王……そんな、一生だなんて大袈裟な」


「これからも聖女様がこの国を好きでいられるよう、尽力する。

……それで構わぬか?」


私はその言葉に大きく「はい!」と答え、手招きするクロウの方へと向かった。

私達はお互いを見つめ、会話する。


「君といると本当に飽きないよ」


「それって……良い意味で言ってる?」


「どっちだと思う?」


私が小さく「……いじわる」とつぶやくと、クロウは私の身体をひょいと持って、抱っこした。


「ちょ……ちょっと!?」


「ハネムーンだ!」


珍しく彼は子供のようにはしゃいでいる。

トカゲ馬に私を乗せると、兵団と一緒に街中を歩きだす。


……ちょっと晒し者みたいで嫌かも。

王族だしこれが普通なのかもしれないが。

でも、恥ずかしい。


私は顔を伏せながら、街中の住民たちに歓喜の声を浴びせられ、祝福されていた。

クロウは私の頭を撫でながら、静かに話しかける。


「……この世界は平和になった。世界の主……かつての君が望んでいた勇者の冒険譚はもう期待できない。

……それでもこの世界を好きでいてくれるか?」


その言葉に私は彼の身に背中を預けながら返答する。


「勿論、どんな状況になっても貴方が私にとって”勇者”なのは変わらないよ。

……これからもよろしくね、クロウ」


私の答えを聞いたクロウは口元を緩めて微笑むと、


「よし、今日はとびきり羽根を伸ばそう」


そう言って行列の最前線へと躍り出た。



この世界に脅威はいなくなった。

勇者が魔王を倒す使命も、そんな肩書きも必要でなくなった。

これからずっとこの世界の住人は安寧のまま生き続けるのでしょう。


……そんな物語はつまらない?

いいの、私にとってはそれが幸せなんだから。

私は城に到達するまで、彼の背中の温かみを実感し続けた。


――勇者クロウ。

残念ながら、勇者の冒険はここで終わってしまった。


――これからは何も起こらない平和な世の中を聖女わたしと共に過ごすが良い。





【SHAING FANTAGIA】




♪ いかにもなクラシック調の曲も流れている




ふと遠くの空を見たら、でかでかとしたフォントが視線に映り込んだ。


……Oh、まさか一番消したかった黒歴史が消えてなかった。

くぅ~、まるで余韻が台無しです。


私が顔を伏せて恥ずかしがっていると、遠くの空でルーミィたちが密かに笑みを浮かべて、正しいスペルへと直していった。




【SHINING FANTASIA】




♪ いかにもなクラシック調のエンディング曲が流れ、物語は幕を閉じる


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