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決戦

黒い蜂の竜巻が依然として街全体を覆っていく。

大魔王の起こした天災とも呼べる所業に対し、人々はただただ逃げ惑い、抵抗する事すら出来ない。


私は台風の中心に光る赤い核に対し、弓矢を放つ。

しかし弓矢は強風に圧され、速度を緩めて核に到達することなく地面に落ちてしまった。


光の矢を先程のように最大出力で放てば、街の人々ごと巻き込んでしまう事をあの悪辣な魔王は分かっているのだろう。

魔王は竜巻状態のまま、街中に留まり続け、関係ない人々を襲っていた。


「この世界は大魔王が貰い受ける!」


黒い蜂が鎧姿の兵士の死体に潜り込んだかと思うと、彼らは生き返った。

厳密には死体のまま操られた、死霊魔術ネクロマンシーの状態である。

鎧の騎士は逃げ遅れた人々に襲い掛からんと、剣を振り回す。


「危ない!」


剣の一撃を、手甲が止めた。

メイが家族を助け、鉄の鎧を拳撃で砕く。


「遅れてすみません、聖女様!」


後方からスミスとロドリグが指揮する別動隊がやってくる。

彼等は迅速に逃げ遅れた人々の避難活動を行っていく。


「怪我人はこちらに任せてくだせえ!

遠慮なくあんな奴ぶっ飛ばしてください!」


スミスとロドリグは”担架”を使い、クロウたちを運んでいく。

兵士たちも操られた死体たちと、鍔迫り合いで戦っている。


「でも……街中であんな威力の矢を放ったら……」


削れた山脈を見て、私は戸惑いながら言う。

街の住人は非難するにせよ、この街一帯すべては消し飛ぶだろう。

そうすれば彼らの住む場所は無くなってしまう。


「……また作り直せるさ」


クロウが担架に運ばれながら、答える。


「クロウ様!こんな大怪我で動いちゃ駄目でさ……」


スミスの言葉を無視して、彼は私に身体を寄せて、話しかける。


「俺たちが……いや、もはや俺たちの命すら必要ないのかもしれない。

”聖女さえ生きていれば”この世界は何度でもやり直せる。

……君が作った世界を君が自らの手で壊すのなら、誰も文句は言えないさ」


「クロウ……」


「……頼んだぞ」


クロウは担架に戻り、目を閉じた。

スミスとロドリグは私に一礼すると、彼を運んでいく。

しばらくして街中の住人の避難が完了すると、私は再び弓矢を構えた。


「止めろ!」


それに気づいた魔王は号令を出し、砂地からサンドワームを、森からワーウルフの群れを呼び出す。

死体の鎧騎士含め、街中に次々とモンスターが侵入していく。


『僕たちのリソースも最大限割きます!あの無法者を追い払ってください!』


空間が分解していき、ルーミィたちが続々と私に集結していく。

それは一つの光になり、瞬く間に大きな満月のようになった。


「人間風情が!」


魔王の放つ闇の波動は、まばゆい光によって打ち消された。

私はさらに弓を番う力を込め、一点に狙いを集中する。

バリアで守られる外側でモンスターたちに攻撃され、先ほど魔王に斬られた怪我のせいもあって、照準がブレていく。

……駄目だ、このままじゃ当てられない!


「うおおおおおお!」


モンスターたちは次々と切り伏せられた。

目の前にはレオンが立っていた。


「レオン!?…………運ばれたんじゃ……」


「アホ抜かせ!このまま良いとこなしじゃ男がすたるわ!……見ぃ」


レオンは懐から錆びた剣を取り出し、私に見せた。


「キアタに代々伝わる魔王を封じたとされる聖剣や。

国宝として飾られとったのを、どさくさに紛れて持って行ってたんやで」


レオンは聖剣を渡して、答える。


「錆びとるけど……直せるやろ?」


私はこくりと頷くと、彼から聖剣を受け取った。


「……これでワイもキアタの”勇者”として役目を果たせたやろか?

……じゃあな、生きてたらまた会おうで」


レオンはモンスターの残党を倒しに、剣を振り回しながら向かっていった。


「こっちやアホども!まとめて相手になったるから、かかってこんかい!」


彼はモンスターの囮になり、モンスターを引き連れていく。

私の周りにモンスターはいなくなり、目の前には魔王だけとなった。

魔王マクバーはもう意味が無いと思ったのか、竜巻形態から人間態へと姿を戻した。


「……こんなちっぽけな剣で何が出来る」


私はスキルビルドで丸い泡を作り、それを錆びた剣に埋め込む。

するとあっという間に剣は本来の姿である聖剣に戻った。

月の輝きのような金色の装飾と、古くより魔を祓うとされる藍色のうるしが塗られた柄。

柄をおもむろに抜き出すと、水鏡のように美しい刀身が姿を見せた。


「ほう、確かにそれを使えば我を退けられるかもしれぬな、しかし当たらなければ何の意味も無い。

我が元気な限り、何度でも避けてやる」


「……黙れ」


私は魔王に視線を向けたまま、聖剣を矢として弓に番えた。


「お前は、絶対に倒してみせる」

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