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お買い物

「……雰囲気こそ暗いですが、なんだか活気がありますね」


「今の期間はキアタ聖皇国の生誕記念祭だからな。普段より人の数も多いだろうぜ」


メイの質問に対し、スミスは旅人の宿舎に備えられた馬房にトカゲ馬を預けながら答える。


「当然人の出入りが多くなる分普段よりも治安も悪くなる。……だからマナ・カーン王国の兵隊たちも警備としてキアタに派遣されているというわけだ」


「他国の兵士がキアタを守るんですか?」


「マナ・カーンとキアタは昔から親密な関係にある同盟国でね、お互いに必要あれば扶助する仲なんですよ。……お嬢は歴史の勉強はまだまだ落第点みたいでやすね」


「……」


今度は私の質問に対し、スミスはすらすらと答える。

いやいや、この世界の国の歴史とか当時このゲームを作った私ですら存じ上げていませんけど?

単純に雪国の王国としか設定してませんけども?

勝手に生えてきた記録を急に押し付けられても困るんですけれども?


私は心の中で卑屈に文句を言いながら、メイと一緒に馬車から降りる。

スミスは宿舎に入り、早々と受付を済ませると外に出てきた。


「お嬢はクロウ様を探すんでしたかね?クロウ様は今頃キアタ城の中で警備をしていると思いやすよ」


「じゃあすぐにでも城に……」


「待って下さい、急に”知らない旅人”が城に行っても追い返されるだけです。

聖女が抜け出してここまでやってきていると知れ渡ったらそれこそ大事おおごとですぜ」


「確かに……だったらどうしたら……」


私が言い淀むと、スミスは街の家の壁に張り出されているポスターを指差す。

そこには「社交パーティーをキアタ城で開催します。誰でも身分問わずお越しください」と書かれている。


社交パーティかぁ……。

なんだかマナ・カーンでの披露宴を思い出すなあ。


「……夕方から祝宴は開催されるみたいですぜ。せっかくの機会だし、とびっきりおめかしして彼氏を迎え入れるのもいいんじゃないですか、お嬢さん?」


「確かにその方が怪しまれずに忍び込めますね……。

……あとクロウは別に彼氏とかではないです」


「そうでやしたか、俺ぁてっきりそうだと……まあ、別にいいですがねえ」


スミスはこれ以上ないくらい顔をにやつかせながら私の方を見ていた。

……そろそろ不敬罪で処してやろうかな。


「では、わたくしはドロシー様のパーティー用のドレスを見繕うために一緒に買い物してきます。……スミスも来ますか?」


「俺はパスだ、パーティーなんて柄じゃねえし。……宿でゆっくりと火酒をあおる方がいいやい」


メイの言葉にスミスは答えると、すぐに宿の方へと入って行ってしまった。

何となくメイは寂しそうな顔をしていた気がしたが、すぐに私の方に振り向いて言う。


「では二人で参りましょう、この街には良い店が沢山あるみたいですよ」


私はメイと共に、粉雪がしんしんと舞う街中を歩いていった。



――数時間後。


「うふふ、聖女様は何を着ても似合いますね」


……これで何件目だろう。私はメイに店を巡っては色んな服装に着せ替えられている。

こんな事なら自分で直ぐにぱっと決めれば良かった。私も優柔不断なもので、メイに言われるがまま行動した結果、早数時間も経ってしまった。


「やっぱり聖女様は艶やかな赤色が似合いますね……いや、シックな青色で大人っぽいイメージもありですね……いや、敢えてここは落ち着いた緑色なんかを……さらに差し色で……」


「あの……メイさん?……このままだと社交パーティーの時間に間に合いませんよ?」


「……! す、すみません!つい夢中になってしまいました!」


……全く、着せ替え人形じゃないんだから。

 

「メイさんも私ばかりじゃなくて自分のドレスを選んできてください」


「え?わたくしのですか?」


「当然です、せっかくですから一緒にパーティーに参加して楽しみましょうよ」


メイは少し考えた後、こくりと頷き自分のドレスを選びに行った。

ふう……やっと解放された。

ようやく落ち着いて自分で服装を選ぶことができる。


私は白を基調としたフリルの付いたドレスを選び、服飾店の店員にお金を払って購入した。

ふふふ、我ながら良いチョイスだ、中々可愛いぞ私。

そう自画自賛していると、メイも服装が決まったらしく、着替えてこちらに歩いてきた。


「……こんな感じで良いのですか?

なにぶんパーティーに参加するのは初めてなもので」


メイの着ているドレスは背中が大きく開いているデザインで、胸元の谷間も強調するように露出されていた。

さらに太腿ふとももが大胆に見えるくらいスリットが深く開いており、しかも網タイツにガーターベルトまで付いていて、彼女の脚線美が遺憾無く発揮されていた。


……正直言って滅茶苦茶………魅力的だ。

悔しいがどんな男もきっと彼女に誘惑されてしまうだろう。


「……負けた」


私はポツリと敗北を宣言し、自分の色気の無さを恨みつつ、心の中で血涙を流した。

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