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橋の怪物

「モンスターは橋の近くを巣にしているようじゃから、気を付けておくれ」


村長にそう言われて数時間後、私たちは問題の橋の場所までやってきていた。

一見何も変哲も無い山道だ。

橋はロープが千切れ、崖下にまで落ちてしまっている。

モンスターの気配は今のところ無い。


「とりあえず橋を直します」


私は建築魔法スキルビルドを発動し、丸太のような形にするとそれを対岸に倒れさせ、渡らせる。


「おお、もうこれで渡れるな」


「まだです……ちゃんと通りやすいようにしないと」


私はさらにスキルビルドで命綱を作り、身体に結んだ。

そしてスミスとメイに引っ張ってもらい、身体を支えられながら少しずつ丸太を渡り、それを本来の橋っぽい形に引き伸ばしていく。


……今まで色んなものを作ってきた経験からなのか、大分効率が上がっている気がする。私は橋を形作っていき、ものの数分で対岸に到着すると、2人を遠くから手招きする。


「さすが聖女様、前よりもずっと良い丈夫な橋が出来たのでは無いでしょうか」


「おう、町の木こりが何日もかかる作業をこんな短時間で終わらせるなんて、さすがだぜ」


2人は私をべた褒めしつつ、橋を渡る。

こんな簡単なことで褒められるなんて、気恥ずかしいな。


ーー瞬間。


「ウルルルァ!」


けたたましい雄叫びと共に橋の下から怪物が現れた。

熊のような体毛、虎の牙、ライオンのたてがみ、蛇の頭の尻尾。……村長の言った通りの見た目の怪物が崖を登ってこちらに襲いかかってきた。


「げっ!ありゃ、キメラだ!……なるほど、村長はこいつのことを言っていたのか!」


「逃げましょう!」


メイがそう言った先、すぐ後ろまでキメラは追いついてきていた。キメラは橋を食いちぎり、2人を崖下に落とそうとする。


「走って!」


私が叫ぶ間もなく、スミスとメイは足場を踏み外し、落ちていく。


「うおおお!」


咄嗟にスミスはメイの手を掴み、崖に掴まった。


「二人とも!」 


「大丈夫だ!……このまま引っ張ってくれ!」


スミスは私に繋がっている命綱を軽く引っ張りながら答える。

……え?……大人2人分を私の力だけで引き揚げろって?

そりゃ無茶ですよスミスさん。


キメラは崖下でうろうろとして様子を伺っている。

このままではあいつの餌になるのも時間の問題だ。


「……スミス、聖女様のことをよろしくお願いします」


「メイ?……何言って?」


メイは軽く微笑むと、スミスの手を振り切り、その手を離させた。そのまま彼女は崖から転がっていき、キメラの前まで滑り込む。


「な……なにをやって……!?」


「スミスさん!引き揚げますよ!」


私は全力でスミスの身体を引き揚げる。

しかし大人1人を持ち上げるだけでも、私の小さな体躯では難しく、身体が悲鳴を上げていた。


「うわあああ!」


私は叫びながら気合いを込めると、命綱の性質がゴムのようになり、ビヨーンとスミスを崖上まで跳ね上げた。


「……っ!」


スミスが飛んでいった勢いで私は大きくつんのめって地面に叩きつけられる。


「お嬢!すまねえ、大丈夫か!」


上手く衝撃を逃がすように転がったスミスは素早く起き上がり、身体を打った私を介抱する。


「私は大丈夫……それよりメイさんを……痛っ……」


私は両手が痛む感覚に気づき、視線を自分の手に向ける。さっき身体を打った時、咄嗟に手で庇い、捻ってしまったらしく、痺れるような痛みが腕全体を支配していた。


……回復魔法を使えるのはメイだけだ。

そしてそのメイは1人、崖下でキメラに襲われそうになっている。


「……キメラとるのは初めてでありますね」


メイはファイティングポーズを取りながら、キメラと距離を取り、様子を伺っていた。 


……どうしよう。

私が軽率に2人を招いたばっかりにこんなことに。

この手の怪我じゃスキルビルドも上手く扱えないし、もしかして滅茶苦茶大ピンチなんじゃ……。


私はスミスに接ぎ木で応急処置をしてもらいながら、この緊急事態に青ざめていた。

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