表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

26/47

メイドとの夜会

「ヨーミル村へようこそ、旅人さん」


ヨーミル村の宿屋に辿りついた私達は、早速部屋を借りる。

ふと窓の外を覗くと、辺りは既に日が落ちて薄暗くなっていた。


「夕食がご用意できております、食堂までお越しください」


私達が食堂に行くと、皿一杯に芋が盛られていた。


「これは……芋だな」


「蒸かした芋ですね」


私達は皿に盛られ、湯気が湧きたつそれをまじまじと見つめる。

それらはまさに芋としか言いようのない食べ物だ。

一見茶色いようだが、ほのかに紫がかっているようにも見える。


「……なんの芋なんですか?」


「ヨーミル名物のナゾノイモです」


『なるほど~、ここで実際にあるジャガイモとかサツマイモとかの品種を言っちゃうと、ジャガイモは中世に無い~とか、この異世界に薩摩さつまがあるのか~……なんてツッコミが入っちゃいますからね~』


……今更だけれども、なんてメタいことを言う妖精なんだ。

一体誰のツッコミが入るというのだろう。


私達は蒸かしたナゾノイモを黙々と食べ、各自借りた部屋へと向かっていった。



(……せめてバターが欲しかったな)


私が部屋のベッドに寝転がり、ゆっくりしていると。


……トントン。


私の部屋のドアからノックの音。


「お時間よろしいでしょうか?」


メイの声だ。

……ああ、何となく来るかなと思ってたよ。


私は身も心も身構えつつも「どうぞ」とメイを招き入れた。


「……ご休憩中すみません。……どうも眠れないもので」


「私を一体どうしようって言うんですか?」


この際、はっきり嫌と言ってやろうと思い、私は顔をしかめつつ答えた。

しかしメイはきょとんとした表情を浮かべ、窓の近くへと歩いていってしまう。


……なんだか思っていた展開と違うぞ?

メイは夜風を浴びながら、こちらを見ずに話し始めた。


「……これから言う事はただのメイドの独り言です。

聞いていただけますか?」


独り言を聞いてくれとは一体どういうことなのだろう。

私は軽く頷き、彼女の愚痴を聞くことにした。


「マナ・カーン王国の王妃……カーン様の内室うちしつの方は結婚してクロウ様を産んだ後、すぐに亡くなられたのはご存知ですね?」


ご存じ無いけど、クロウの幼馴染のドロシーが存じていないと不自然なのでここは合わせておこう。

私は出来る限り憂いを帯びた顔をして、彼女の話を静聴する。


「その時ばかりはカーン様は酷く悲しみましたが……悲しみを乗り越え、男手ひとつで一人息子のクロウ様を立派に育て上げた……これは表向きの話です」


「表向きって……どういう意味?」


「カーン様は王妃様に先立たれ、寂しかったのでしょう。

次代の王妃候補を探すために裏では側室を作り、夜な夜な城の女性に手を掛けていたのです。

次第に従者やメイドにまで手が及んで……時には街の住人すらも」


……あの親父、すかした態度を取っていた裏でそんな大胆な行為をしていたのか。


「もしかしてメイも……?」


「私は王と関係を持ってはおりません。

……関係を持つ前に逃げてきましたから」


「もしかして私とスミスについてきたのって……それが理由?」


「はい……カーン様には結婚まで申し込まれましたが……わたくしのような侍女風情がとてもじゃないですがそんな大きな責任を負うことは出来ません………」


なるほど、馬車で結婚がどうとか言っていた理由はこのことだったのか。


「わたくしの勝手で、逃げる言い訳に都合良く聖女様を使ってしまいました。改めてこの場で謝らせてください。………申し訳ありませんでした」


深々と頭を下げるメイに対し、私は逆に首を左右に大きく振って謝る。


「こっちこそ……誤解していてごめんなさい」


「誤解?」


「えっと……その……私の事が……好き……なのかと」


「……ふふっ」


その事を聞き、私の勘違いに察したメイは息を漏らすようにくすくすと笑った。


「な、なにかおかしいこと言った?」


「聖女様は早とちりですね。

好きなのは好きですけど、あくまでも従者としてですよ?」


「……ははは、そ、そうだよね」


私が困惑しているのに対して、いたずらに笑う彼女は今までにないくらい穏やかな表情をしていた。

……何となく気恥ずかしくなってきたので話題を逸らすことにしよう。


「それにしても、よく私の偽物を見破れたね」


あれだけ本物そっくりに作ったんだし、うまく出し抜けたと思ったのだが。

メイは「ああ、あの時の」と言い、答える。


「確かにあの方は聖女様にそっくりでしたが………わたくしは聖女様を昔からお世話する身です。

すぐに別人だと分かりましたよ」


「……マジですか」


「大マジです。まあ、他の兵士たちではおおよそ見分けが付かないでしょうから、当分はあの偽物さんが代わりを務めていても大丈夫だと思います」


まさかそんな理由で見破られていたとは。

メイドの観察眼、恐るべし。


「……まず睫毛まつげの長さが違いました。それに手を握った時の感触も」


……ん?


「唇を触った時の感触も、……そういえば体型も微妙に違いましたね。

本物の方がもっとふっくらとした肉付きをしていたはずです」


あの……。

偽物とはいえ、めちゃくちゃ色んなところ触ってます?


私の事好きってLikeライクの意味ですよね?

本当にLOVEラブじゃないんですよね?


満面の笑みで細かい特徴を答えていくメイドさんへの疑惑が抜けないまま、私はその場で立ち尽くす事しか出来なかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ