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交易路

「若さか………若さって言うのは失くしてから大切な物だと気付くんだぜ?」


スミスはキャンプ後の焚き火の始末をしながら、しみじみと答える。

……いや、そういう意味で言った言葉では無いんだけども。


「これから先はどういったルートで行くのですか?」


メイは食べ終わった皿を片づけながら、スミスに問う。


「このまま迷いの森にある交易路を真っすぐ行けば、キアタ聖皇国の国境まですぐだよ」


「恥ずかしながら私はそんな道がある事を初めて聞きました」


「お嬢の活躍のお陰で数年ぶりに開通したんだ、またとない機会だし、利用しない手は無いだろ?」


「しかし交易路となると、人通りが多そうですね……城の者や関係者に出会えば通報されないでしょうか?」


「その辺については大丈夫だろう。

クロウ様の部隊はさらに先に進んでしまっているだろうし、出会っても街の商人くらいだ。

奴らはいざという時、お金さえ握らせれば秘密は守ってくれる」


「……随分現金なのですね」


「商人ってのはそういう性分なんだ。お嬢もそれで構わなないか?」


「私はただついていくだけだけど……」


「だけど?」


「……そのお嬢って呼び方何です?さっきから気になっていたんですけど」


私の疑問にスミスは笑って答える。


「そりゃ聖女様って呼び方はちょっと余所余所しいじゃないですか。

俺たちは旅路を共にするパーティを組んだ時点で大事な仲間となったのです。

……なので命を救っていただいた敬意も込めて、お嬢と呼ばせていただきやす」


「……はぁ」


「失礼だと思うのなら呼びませんが……」


「いや、別にいいんだけど……。ちょっと慣れないかなと思っただけ」


なんだかスミスがやけに私に対して優しい気がする。

元々聖女として気を使ってくれているのは分かるのだけれども、忠誠とはまた違った……例えるなら信頼を感じる気がする。


『命を救ったことで好感度がグーンと上がってるみたいですね』


耳元でルーミィがそう言った。

……おいおい、私が作ったのはそういう類のゲームじゃないって前にも言ったはずなのに。

第一なんで理想の王子様には振られて、鍛冶屋のおっさんに好かれなならんのだ?


「聖女様、それでは参りましょうか」


メイはキャンプ用品を片づけ終わり、馬車に詰め終わったところだった。

私達は馬車に乗り込み、スミスはトカゲ馬を操って小気味よく荷車を走らせた。


……メイは私の後ろにがっちりと張り付き、身体に抱き着くように支えている。


「……メイさん?」


……ち、近い。

後頭部がメイの顔にぶつかりそうな距離だ。


「聖女様は私がお守りいたします」


『彼女は何故か最初から好感度MAXみたいだね』


なんでぇーーーー!?

私の耳元はルーミィの声とメイの息遣いで混線する。

何だかメイの顔は赤いし、耳はこそばゆいし、息遣いが段々荒くなっている気がした。


わ、私にそっちの趣味は無いんですけれど!?


「聖女様……」


「ひゃ……はいぃ!?」


「……もし結婚することになったら、あなただったらどうします?」


たすけてぇええええええ!?


私がSOSのコールをスミスに送るも、彼はきょとんとした顔ですぐに運転に戻りやがった。


……うう、お世話されてる手前、彼女を無下には出来ない。

私は街道を抜けるまで、気が気でないまま彼女に抱き着かれ続けていた。





迷いの森はすっかり開拓され、馬車が余裕で通れるほどの道が出来ていた。

地面も丸石と砂利で舗装され、以前の悪路とはえらい違いである。

スミスは国境前を守っている兵士に軽く挨拶しながら馬車を走らせ、その場を通り抜けていく。


「ここから先はキアタ聖皇国の領地だ。

寒い地方だから服はちゃんと着込んでおきな」


……ずっと背中にメイの熱を感じているせいか、むしろ暑いくらいなのだが。


「この先に”ヨーミル”という村がある。今日はそこで宿をとって休もう」


しばらくして村が見えてきた。

何の変哲もない村だ。

ヨーミル…………よう見る村って…………コト!?


親父ギャグとメイのホールドによる寒暖差に悩まされながら、私達を乗せた馬車は寄宿舎に備え付けられた馬房へと入っていった。

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