パーティへの誘い
この物語は主人公である高校生ハジメが、異世界に転生した話です。転生して社会のルールが全く変わったことによってハジメの中にある社会不適合サイコパスが姿を現した時、物語が大きく動き出します。
彼が選び取る「大事なもの」とは何か、そしてそれ以外を切り捨てることで生まれる新たな世界とはどのようなものか。読者は、異界へと誘う不思議な本を手にした若者と共に、異世界の扉を開きます。彼を待ち受けるのは、美しい風景と謎めいた村、そしてその裏に隠された驚愕の現実。
振り返ることのできない一歩を踏み出したとき、彼の目の前に広がるのは未だ見ぬ世界。古い知識と新たな体験が交錯するこの物語を通して、読者もまた、自分自身の心の選択を問い直す旅に出ることでしょう。どうぞお楽しみください。っと言いたいところですが初めて書くので説明とか描写が雑です。すいませんとしか言えませんがまぁ物好きな方は読んでってください。
全く世の中はどうかしている。俺は世間から「狂人」や「社会不適合者」と言われるが、俺にとって重要なのは、大事なものを選び取ること。そしてさらに大事なのは、それ以外を切り捨てることだ。
午前2時。暗闇と静寂が支配する階段を、一歩一歩音を立てながら降りていった。階段の音がコツコツと響き、その音だけが空間に広がる。しばらく進むと、人ひとり通れるくらいの通路から声が漏れ聞こえてきた。
「おい、やめろ!そんなことして…どうなっても知らんぞ…ぐぁ!!」
声の調子から察するに、まだ抵抗する気力は残っているようだ。拷問が始まってから30分も経っていない。しかし、この男にはどうしても情報を吐かせなければならない。それが俺がここに来た理由だ。
通路の最奥にある鉄の扉は錆びつき、ところどころ凹みや傷が目立つ。この世界には用途ごとに数百種類もの鉄があるそうだが、この扉に使われている鉄は、重さはあるものの、頑丈さや耐久性にはあまり優れていないようだ。そんなことを考えながらドアノブを握ると、冷えた外気が手のひらに伝わる。意識を集中させなければ。夜明けまでにはすべて終わらせる必要がある。
重厚な音を立てて扉を開くと、中には血と金属と、場違いな花の香りが混じった空気が漂っていた。血と鉄臭さの元は、暗がりの中、椅子に縛られて血まみれになっている男だ。一方、花の香りは、そこに立つルナ・ノクターンのものだろう。彼女は、この男をここまで追い詰めた人物でもある。ルナは椅子に縛られた男の右横に立ち、広い室内には他にも数人、俺を待ち構える幹部たちがいた。重要な会合にふさわしく、全幹部が集まっているはずだ。
「お待ちしておりました。」
部屋の全員が一斉に俺に向かって頭を下げる。俺は彼らに微笑を返す。夜明けまで残り数時間、これから始まるのは深夜に繰り広げられる秘密のパーティーだ。楽しみで仕方がないだろう?
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さて、この物語の始まりは、ある高校生が学校の図書室で、何気なく手に取った一冊の本から始まる。
「もう1年以上ここに通っているけど、こんな本あったかな?」
僕は分厚くて大きな本を開いてみた。すると、まるで古い木を湿らせたかのような懐かしい匂いが漂ってくる。この本、きっと何年も誰も開かなかったに違いない。ページをぺらぺらとめくってみると、どのページにも波線のような模様がひたすら続いている。
「何だこの本。これは文字だよな。一体何語で書かれているんだ?」
挿絵も所々に掲載されている。大きな塔、鎧のような形、そして魔法陣のような円形の図など、様々な絵が波線だらけのページの中から現れる。文字は読めないが、この本、なかなか面白そうだ。
僕の好奇心はどんどん掻き立てられ、ページを進めていくと、ついに最後のページにたどり着く。そこには大きな地図が見開きで描かれていた。中央の大陸を中心に、海を隔てて四つの大陸が周りを囲んでいる。どの大陸もだいたい同じくらいの大きさだ。この本はきっとファンタジーの物語なのだろう…指輪物語やハリー・ポッターのような。でも、どことなくSF要素があるのかもしれない。気付かない間にこの本に興味を強く惹かれていた僕は、その地図をじっと見つめ、新しい世界に飛び込んで冒険を繰り広げている自分を想像していた。涼しいそよ風が吹く中で、新しい冒険が始まる。なんてワクワクするんだろう。
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「さぁ、冒険の始まりだ!」
「わっ!どうしたの、突然叫んで!」
隣から声をかけられ、驚いて僕は反射的に飛び退いた。この図書室に他にも人がいたとは思わなかった。目の前には、僕が見た事もないような魅力的な女の子が立っている。しかし本当に驚いたのはそれだけではない――涼しいそよ風と目の前に広がる大自然…。
「えっ?えっ?ここはどこ!?」
キョロキョロしながら周囲を見渡す僕に、女の子は少し驚きと心配そうな表情を浮かべながら見つめてきた。
「あなた、大丈夫?さっきまでぼーっとしてたかと思ったら、いきなり叫び出して。」
「いや…えっと、ここってどこですか?」
落ち着け、ハジメ。これは夢だ。学校の図書室で不思議な本を見ていたら、その中に入り込んでしまったように感じてたから、これはきっと妄想に過ぎないんだ。
「…あなた、本当に大丈夫?ここはリヴァーフェル港の近くにある星影の丘よ。」
「リバー…?港…?」(潮風を感じる)
僕は後ろを振り返り、目を大きく開いた。そこには美しい海が広がっており、陽光が地平線をガラスの破片のようにキラキラと輝かせている。彼が立っているのは、海から30メートルほどの切り立った崖の上で、草が一面に膝丈まで伸びていた。高い木は遠くに見え、青空はどこまでも続いでいる。
(なんて心地のいい場所なんだ)
我に返り、彼女を見ると、その青い髪が風に乗って軽やかに揺れていた。彼女は微笑みを浮かべ、僕の目を見返す。その瞳は吸い込まれそうなくらい透き通っていて目が眩むほど美しい。思わず目を逸らす僕に彼女は言う。
「変な人ね。さっきまで慌てて訳の分からないことを言っていたと思ったら、急に静かになって海を見つめてるなんて。」
「す、すみません。ちょっと頭が混乱していて…」
彼は一度深呼吸して、自分を落ち着かせ心を整えた。「えっと、僕はハジメっていいます。よろしければ、お名前を教えていただけませんか?」
「ハジメ君…変わった名前ね。私はアイリーン、よろしくね。」
この雰囲気に日本の名前は少し浮いてるかもしれないな、などと納得しつつ、彼は彼女と握手を交わした。その瞬間、風が一際強く吹き、彼女は舞い上がる髪を押さえつけ、僕はその仕草をじっと見ていた。
(綺麗な人だけど意外と歳は近そうだ)
「えっと、アイリーンさんはこの辺の方なんですか?」
「そうよ。近くに村があってそこに住んでるの。あなたどこか他の国から来て船で到着したばかりって感じね」
「そうそう。そうなんですよ。ずっとずーっと遠くの国からこの土地の文化を調査するために派遣されたんですけど右も左もわからず途方に暮れていたところなんですよええ」
「そっそうなの。じゃあ村の方まで案内するわ」
捲し立てるように話し続ける僕に若干引き気味のアイリーンは答える。
「ありがとうございます。アイリーンさん」
「アイリでいいわ。村ではそう呼ばれてるの」
振り返って笑顔でそう言う彼女の微笑みとその向こうに広がる丘や山や空を見ながら僕は気づいた。どうやら僕は異世界に来てしまったらしいということに。
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「さて。村まで案内してもらえたはいいけどこれからどうするか」
僕は今宿屋のベッドに腕を組んで座りながら思考を巡らせている。まず順を追って考えていくと、僕は放課後の学校の図書室で見知らぬ本を手に取っていた。そして気づいたらこの世界に飛ばされてきた。あまり詳しくはわからないがこの村に暮らしている人たちの服装や建物はヨーロッパ風なんだが、どこかSF映画で見たような雰囲気を思わせる。そしてなぜか言葉が通じる。
「一体何が起きているのか。」
ぼんやり考えていてもしょうがないので外に出てみるとすっかり日が暮れて辺りは暗くなっていた。
(しかしここは自然も豊かで空気も綺麗だな)
腕を伸ばしながら夜の涼しい空気を思いっきり吸い、まだ輪郭だけはぼんやり見える黒くて大きな山脈を見ながらそう思っていた僕はふと大きな山の向こう側に灯りが灯っているのを見つける。
「あんなところにも人がいるんだな」
山に気を取られていると後ろから声がした。
「こんばんわハジメ君」
「うわっびっくりした。アイリーンさん・・・じゃなくてアイリか」
「昼間から本当に驚いてばっかり。それにまさか財布を荷物ごと無くすなんて」
「ハハハ、本当についてないです」
そう、村に着いたはいいがこの国のお金を持っていないことに気づいた僕は行きの船で財布を荷物ごと無くしたということにしたのである。と言うことで当面は金策を考えながら元の世界に戻る方法を探すことになりそうだ。
とアイリが少し硬い表情になり質問する。
「そういえば港で調査をしにこの土地にきたって言ってたよね。何を調査しているの」
(あーそういえばノリに任せてそんなことを口走っていたなぁ・・・。ていうか突然この張り詰めた空気は一体)
「えっとこの国の・・・金属、そう金属についての調査をしに来たんですよ!」
「へぇ、そっそうなんだ」
アイリは少し気まずそうにそう答える。(あれ僕なんか変なこと言ったかな?)
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気になると言えばこの村には一人ちょっと怖そうな人がいる。いつもローブを着てフードを被った男ブラッドだ。右目を横断するような切り傷がついた明らかにヤバいオーラを漂わせた男である。僕が目の前を通るたびに俺に近寄るなオーラを放ってくる。ちなみに話したことはない。
「こえぇなんなんだあのおっさん」
「ブラッドさんのこと?まぁ見た目は怖いけどすっごくいい人だよ」
僕と並んで歩く少女ライラは元気な声でそう言う。ライラは癒し枠としてこの村と転生して混乱している僕の心を癒してくれている大事な存在なのだ。
「そうなのか?僕だけまるでモンスターでも見るような目で見られてるんだけど」
「あはは!ハジメお兄ちゃんがモンスターなんて弱そー」
「ははは・・・どっからどう見ても草食系の貧弱な体だからね」
「山のモンスターと戦ったら1発で吹っ飛んじゃうね」
この村の北の方には美しい山々が屹立しているがそこには恐ろしいモンスターが出るのだとか。なので山の方には近寄らないようにしているのだが、最初知らないで山に散歩に行こうとした時はアイリ含め村の人々に無茶苦茶止められた。
「村の北の方はどうなってんだろうな」
「ライラも行ったことないんだよね」
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そしてある朝ライラがいなくなった。
みんなで探したが見つからない。
「もしかして製造…山の方に行ったんじゃないか…」
ん?今製造とか言ってたか?
みんなで北の山の麓に行くとライラがいる
「そのボタンを押しちゃダメ」
と先ほどまでの美しい山が一瞬で消えた。というかここら一帯の自然が一瞬で消えた。代わりに現れたのは大きな工場。
そして中ではSF映画に出てくるような銃やデカいロボットが大量にある。
「なんじゃこりゃ!」
驚くハジメに向けてアイリは気まずそうに言ってきた。
「実は私たち武器を密造してるんだよね。と言うことで」
その瞬間ハジメは反射的に後ろに仰け反った。それとほぼ同時に頬を熱く焼けるような痛みが襲ってくる。首を狙ったアイリのナイフが避けたハジメの頬を切ったのだ。
「死んで」
冷たくそういうアイリの目は暗く魂のない暗く虚ろな表情になっていた。
ハジメはその時ようやく理解した。(なるほどあの頑なに山に行くなという村の人たちの言動。たまに港から運ばれてくるコンテナ。そして不思議だったんだ。この村の人たちは昼間全く姿が見えなくなる人がいるけど、一体どこに行ってるんだろうって。この工場で夜まで武器を作っていたんだな)
「アイリお姉ちゃんやめて」
そう叫びながらアイリに抱きついて止めようとするライラ。アイリもなんだか気まずそうにしているが止まる気配はない。
(どうやら僕を狙うのはやめてくれないみたいだな。こんな状況・・・)
「最高じゃないか!!!」
顔を見合わせるアイリとライラ「「えっ?」」
そう、僕らのパーティーはこれからなのだ。