エピローグ
その後、ロズベルグ連邦はハミルトン公国の首都にまで攻勢をかけ、これを陥落せしめた。
セバスチャン城塞に防衛力の大半を割いていたハミルトン公国からは、それほどの抵抗を受けることなく、戦いは終わった。
また、懸念されていた南方の革命勢力は、革命軍に恐れを抱いていた連合軍によって南方の会戦で大敗北をさせられた。これにより、革命勢力はもとの出身の領地まで巻き返され、その勢力は解体された。
こうして革命軍からの脅威がなくなったロズベルグ連邦にも、平和が訪れた。
しかし、時代は国民の男子ひとりひとりが兵士となる時代へと突入。
人々はまだ気がついていなかったが、世界大戦の足音が着々と近づきつつあった。
そんなある日。
ロズベルグ連邦のアドルノ邸にて。
アストはソファに座ってぼんやりと天井からぶら下がっているシャンデリアを見ていた。
その視界を、パトリシアの胸と顔がさえぎる。
「アストさん、どしたの?」
「いや、別に、なんか気が抜けちゃってね」
パトリシアは右手ひとさし指を右頬に当てると応えた。
「そうですね。あんなに激しい戦闘が続いてたのに、一気に平和になりましたからね」
「なんだ、暇になったってのか?」
そう言ったのは、いま部屋に入ってきたリカルドだった。
アストは前足を踏ん張って、ソファの前のほうに座った。
「まあ、そういうことだな」
「じゃあ、行くか?久しぶりに」
そう言ったのは、こちらもいま部屋に入ってきたばかりのアドルノだった。
「どこ行くの?アドさん」
パトリシアは不思議そうにアドルノのことを見ている。
「決まってるじゃないか、冒険だよ」
「ええ?冒険?」
「また冒険者に戻るのか?」
そう応えたのはアスト。
「ああ」
「でも、あたしたちの国にあるダンジョンって、もう全部攻略しちゃったじゃないですか」
「併合したばかりのハミルトン公国には、まだ攻略が終わってないダンジョンが残ってるぞ」
「ハミルトンまで行くのか?」
アストが素っ頓狂な声をあげる。
「ああ。嫌か?」
「嫌じゃないけど、急だな」
「やったあああ!またアストさんと冒険できるんだね!」
そう言うと、パトリシアはソファに座っているアストのもとまで行ってしゃがみ、アストの右腕に両手でしがみついた。
「ほら、みんな、支度しようぜえ」
右腕のこぶしを左手で露出させたリカルドがそう言う。
「え、もう決まりなのか?」
アストはたじろいでいる。
「ね、いきましょ、アストさん」
パトリシアがアストの鼻先にまで顔を近づけて言う。
「あ、ああ、わかったよ」
アストは一瞬だけ心の中で思った。
(もしかしたら、これが最後の冒険になるかもしれないもんな)
「よし、じゃあ、行こうぜ」
アストは言った。
おしまい




