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公国の訓練事情・その2

ハミルトン公国においてアストを冒険者のパーティーから追放した張本人、マックスは最初、軍の訓練に苦労していたが、次第に演習においても力を発揮するようになっていた。

それはマックス以外の、アストの元パーティーたちも同じだった。

「よお。だいぶ鉄砲にも対応できるようになったじゃねえか」

「ふん。もともと俺たちは凄腕の冒険者だったんですよ。甘くみてもらっては困ります」

「へっ、そうかよ」

マックスと話していたスチュワート卿はそう答えた。

スチュワート卿はアストが追放されてしまった際に、最後にハミルトン公国側で所属していたギルドのギルド長を努めていた伝説の魔法使いである。

右手には、ちょうど手の平に収まるサイズの水晶を所持している。


マックスたちもセバスチャン要塞の攻防戦に参加することが決まっている。

マックスは張り切っていた。

(アストよ。おまえがどんなすごい使い手なのか知らないが、俺の力で息の根を止めてやるぜ!)

「ねえ、アストがロズベルグ連邦側にいるっってのはほんとうなの?」

マックスにそう聞いてきたのは、マックスと同じくアストを冒険者のメンバーから追放したミランという女剣士だ。

アストの放った水晶の攻撃が運悪くアストの前を横切ったミランに当たってしまったのがアストを追放するきっかけになってしまったという、あの女だ。

「ああ。あの水晶でぶいぶい言わせてるって噂だ」

「ふーん。あの役立たずがね」

「油断しないほうがいいぜ、マックス、ミラン」

そう声をかけてきたのは同じくアストを追放したメンバー、ヒュルケンという男の魔法使いだ。

「アストはこちらに寝返るはずだった向こうの参謀総長の馬車の列をたったひとりで倒したという噂だ」

「はん!あくまで噂でしょ。そんなことひとりでできっこないでしょ」

ミランは吐き捨てるように言った。

「油断しないほうがいいのはアストだけじゃないぞ。向こうには凄腕の戦士、凄腕の魔法使いがついてるという」

「戦士ならこっちにはマックス。魔法使いならあんたがいるじゃない、ヒュルケン。それに、凄腕というなら、こっちにはソフィアもいるし」

「ミラン。アストのことをよく思っていないのはわかるが、アストと組んでいる冒険者のメンバーは相当な腕の持ち主であるのは間違いないよ。でないと、隣の国にまで噂が広まるなんて、ありえないだろう?」

ヒュルケンはミランをたしなめた。

「ふん。気に入らないね。誰だか知らないけど、その凄腕の魔法使いってやつは、あたしが片付けてやる。必ず!」

「ああ。俺はその凄腕の戦士ってやつを。そして、アストを!この手で地獄に送ってやるぜ」

マックスはヒュルケンに対して不敵な笑みを見せた。

追放されたアストの代わりにパーティーに加わった女魔法使いのソフィアは、不安そうにつぶやいた。

「でも、凄腕の戦士に凄腕の魔法使いでしょう?油断しないほうがいいんじゃないですか?どれくらいの実力かわかりませんし」

「ふん。あくまで噂だろ。話が膨らみすぎてるだけだろう」

マックスは終始、苦々しそうな口調で答えている。

「確かに話が膨らみすぎているだけかもしれません。でも隣の国まで噂になるくらいすごい相手ということでもあります」

「そうだぜ。ソフィアの言うとおりだ。くれぐれも油断するなよ」

「言われなくてもわかってるさ」

そう言うと、マックスはヒュルケンたちに背を向けて、ロズベルグ連邦の方角を向いて心の中でささやいた。

(アストよ。おまえの息の根を止めてやるぜ!)

ソフィアはひとりつぶやいた。

「凄腕の戦士に、凄腕の魔法使い。いったい、どんなひとたちなのでしょうか。気になります」

それは魔法使いとしてヒュルケンも同じ思いだった。ヒュルケンはつぶやいた。

「もしも、俺たちの手に負えないような相手だったら・・・」

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