表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

29/40

東のダンジョンへ

アストは回復系、攻撃強化系の魔法が使え、水晶玉で敵を殲滅する。

リカルドはわかりやすいタイプで、魔法は使えないが、その大きな薙刀なぎなたで敵を撃滅する。攻撃系のスキルもたくさん持っている。そして基本は前衛にいる。

同じく前衛によくいるのがパトリシアで、攻撃系の魔法ならそのほとんどの属性の魔法を扱える。これだけでいかに彼女がすごい魔法使いであるかがわかるというものだ。

得意なのは水系のようだが、アストが刺客に狙われたときに周囲を明るく照らすのに使った「ブライトライト」のような便利な魔法も一部使える。

最後にアドルノだが、彼はディフェンス系の魔法しか使えない。

回復魔法も使えないのだ。

ではなぜこのパーティーにいるのかというと、戦況を読む的確さがあるからだ。

戦闘前の戦略面もそうだが、戦闘中の戦術面でも彼ほど状況を的確に読める者はそうそういない。


最初、アドルノはなかなか冒険者として誰かとパーティーを組むことができなかったが、たまたま駆け出しで冒険者をやり始めたアストに目をつけられた。

彼の状況判断の的確さに気がついたアスト。その後に勧誘したリカルド、パトリシアは、「アドルノはディフェンスしかできない」と知ったときに役に立つのかな?という反応を見せたが、アストは大いに説得して、「まあ見とけよ」と一言だけ言った。

果たして、ある難しいエリアボスをアドルノの的確な指示で攻略して以降、リカルドもパトリシアもアドルノの能力の高さを認めるようになったのだった。

そして、今ではアドルノは、若くして(二十六歳)一国の参謀総長というわけだ。


東のダンジョンというのは、ロズベルグ連邦とハミルトン公国のほぼ境目にある。

といっても、ロズベルグの首都、いつもアストたちのいる街から北東に百キロほど行ったところにある。

ロズベルグの首都から真東に四十キロ弱行ったところにあるのがセバスチャンの地下要塞で、ロズベルグの首都から地下要塞までは平原が広がっており、そこは非武装中立地帯と決まっている。

しかしロズベルグ連邦の北方、セバスチャン要塞の北側の海に接した地域ははるか昔かられっきとしたロズベルグ連邦の領土である。

東のダンジョンはそのあたり、ロズベルグ連邦の北東にある。

そしてダンジョンから東に五キロも行かないところに山脈があり、そこがロズベルグとハミルトンの国境となっている。

北の海にはそれぞれの国の軍船が行き来しており、見張りをつづけている。


いまアストたち一行は、東のダンジョンを目指している。

アドルノはすでにこの時点でセバスチャン要塞を落とすことしか考えていなかった。

そのために、できることはなんでもするつもりだった。

この段階でもはや倒す必要のない東のダンジョンの最下層にいるエリアボスを倒すというのも、その行動の一貫であった。


参謀本部を出発してから四日後、アドルノたちは東のダンジョンに到着した。

このダンジョンはほぼ攻略されているとはいえ、まだところどころに敵が散見される。

とはいえ、アドルノたちを見てもほとんどの敵は襲いかかってこようとすらしなかった。

モンスターたちでさえも、彼らが只者ではないことを見抜いているのかもしれない。

「なんだ。張り合いがないなあ」

そう言ったのは、白いレオタードのインナーに、胸を露出させたグレーのアーマーを着たパトリシアだ。

久しぶりの冒険者の衣装に気合いが入っているところだったが、敵が攻撃してこないのでがっかりしているらしい。

彼女は冒険者のときには白い皮の手袋に、ふだんはあまり使わないが護身用に剣を捧げ持っている。

リカルドもアストも冒険者用のアーマーを着ているが、アドルノだけはなぜかふだん着用している緑色の軍服で来ている。


ダンジョンの下へ下へと潜る。

百階層はそう簡単にたどりつけるものではない。

途中、休憩をとりながらゆっくりとくだる。

そうして、九十階層に到達したところで作戦会議が開かれた。

「アスト、この前も言った通り、百階層のボスについては知っているな?」

アドルノはいきなり核心に迫った。

以前にアストが百階層のエリアボスについて知っているような口ぶりで話しているのを覚えていたからだ。

「ああ。でもどんな形をしてるかということと、皮膚が固いことくらいしか知らないよ」

「まあそうだろうな」

「そりゃそうだろう。九十九階層のやつを倒したのがついこの前なんだ。基本は誰も百階層のやつと出会ってないだろうからな」

リカルドが話に割って入った。

「スチュワートってやつを除いてな」

不適な笑みを浮かべながらそう言ったのはアドルノだった。

「ねえアストさん、どんな形をしたやつなの?」

「見た目は巨大な亀、らしい」

「亀?亀って、あの、甲羅を背負った四本足のやつ?」

「そう。その亀だよ」

「そんな形してるのに、強いんだ」

「わかってるのは、頭が弱点ということだけだ。でも、その頭もかなり固いらしい」

「そういうことだ。だからアストの水晶の攻撃も通用しないかもしれない」

「だから、あたしの魔法で凍らせて、それからアストさんの水晶で頭を砕くわけね」

「そのとおり・・・ただ、そううまくいくかどうか、わかんないけどな」

「なにしろ百階層のボスだからな。九十九階のやつもアスト抜きだと、俺たちだけでは無理だった。でも今回はアストがいる。なんとかなるだろ!」

リカルドはそう言うとがははは!と笑ったが、他の三人は曖昧な表情をした。

どんな形のボスなのかということと、弱点しかわかっていない。

いや、弱点がわかっているだけでもかなり貴重な情報ではある。

しかし、巨大な亀の形をしたやつが、いったいどんな攻撃を仕掛けてくるのか、どんな動きをするのか。

皆目検討もつかない。

弱点がわかっているだけで簡単に倒せる相手でないことだけは明白だった。

しかし、アドルノにはある決意があった。

絶対にそいつだけは倒さないといけない。

この戦いが、ロズベルグ連邦の命運を決めることは間違いないと見ていたからだ。

「よし!行こう!」


九十九階層に到達した。

ここはアストがロズベルグ連邦の城門前で撃破した「黄泉のドラゴン」のいた場所だ。

地下にやたらと広い空間が広がっている。

ちょうどドラゴンが自由に飛び回ることができるくらいの広さだ。

そこの一番奥にある下り坂をくだってゆく一行。

その先に待ち構えていたのは。


巨大な亀だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ