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恋のライバル!?

アドルノの家には居候が増えすぎてしまったため、いくら大きな屋敷とはいえ、部屋割りに苦労することになった。

そこで屋敷では大掃除をすることになった。

アスト、アドルノ、リカルド、パトリシアのいつものメンバーと、新たに加わることになったパトリックとリリーの部屋も割り当てないといけない。

これまで使っていなかった部屋はほこりをかぶっていたので掃除をすることになった。

ついでに他の部屋もこの際に、ということで、屋敷全体の掃除に取りかかった。

他には洗濯も必要だ。

全部で六人ぶんもある。

全自動洗濯機などない時代なので、これは大変な重労働である。


幸い、部屋は六人全員に割り当てられることになった。


掃除はいつものパーティー四名が担当し、洗濯はパトリックとリリーが担当した。


田舎出身のパトリックは存外に洗濯の手際がよかった。

それはリリーも同じだった。

ふたりは楽しく談笑しながら服を水洗いしている。


掃除のほうは細かい作業をアストとアドルノが担当し、いつも態度がでかくてずぼらなパトリシアとリカルドは雑巾がけに取りかかった。

「おらおらああああ!」

服を腕まくりして雑巾がけに取りかかるリカルドはいかにも威勢がいい。

パトリシアは・・・廊下の床に座ってだるそうにサボっていた。

「はあ、こんなことしてないで早く冒険に出掛けましょうよー」

「これも鍛練のうちと思って真面目にやれ!」

リカルドの一喝がパトリシアに飛ぶ。

「はあ、これだから脳筋は」

「あ、なんか言ったか?」

「別にい」


アドルノとアストは各部屋にしまってあるゴミやら必要なくなったものを屋敷の玄関に搬出している。

「アドルノ。このかわいい人形はどうするのだ?」

「はわわ!そ、それは!わたしの大事なコレクションだ!」

「ああん?これがあ?」

「さ、さわるなあ!」

と言ってアドルノはあわててアストの手元から人形を取り戻した。

くりくりとした目元が印象的なバービー人形のような相貌をしたコレクションだ。

「はあ。で、この壊れかけの椅子は?」

「無論、外だ」

「はいよ」

アストは椅子を持って玄関に向かった。

玄関ホールは、玄関入って左右に螺旋した階段があり、二階へと通じている。

よくある洋館といった風情だ。

その階段を、椅子を持ちながらアストは階下へおりてゆく。


「アストさまぁ」

突如、洗濯室のほうからリリーの声が聞こえてきた。

アストはすぐにリリーに聞こえるように大声で返事をした。

「なんだ、どうした?」

「それが、どれがどなたの服かわからないんです」

「ああ、ちょっとまってくれ」

アストは急いで玄関のさきに積まれたゴミ山のそばに椅子を置き去りにすると、一階のキッチンの横にある洗濯室へと急いだ。


洗濯室に着くと、そこではパトリックが洗濯をし、リリーはすでに一部の服装を畳み始めているところだった。

午前中に干しておいた洗濯物のうち、薄手のものはすでに乾きつつあるようだった。

「おお、どの服だ」

「このへん全部、わかりません」

女性物の服だけは二つに分けてまとめられていた。

女はリリーとパトリシアしかいないので、リリーにとって女物の服は、自分のものでなければパトリシアのものと区別がつくのだろう。

当然、男物はわからないらしい。

「じゃあ、洗濯ものたたむの、俺も手伝うよ」

「ほんとですか、ありがとうございます」

そう言うとリリーは正座しながら三つ指をついてアストにお辞儀をした。

お辞儀をしたとき、小さな胸の谷間が服の隙間から見えた。

「えーと、これはリカルドのだ。これもたぶんリカルド」

「たぶん?」

リリーは小首をかしげて聞いた。

「俺も自分のもの以外はそんなにわからんよ。まあどうせあとで自分のはみんな勝手に取っていくだろ」

「え、そんないい加減なことでは、申し訳ありません」

「いいんだよ。どうせ誰も気にしないよ」

「そんなものでしょうか。殿方のことはよくわかりません」

「ああ、俺もテキトーに自分で取るから、雑にたたんでおいてください」

と、そばで洗濯しているパトリックが言う。

「わ、わかりました」

リリーは少し申し訳なさそうだ。

「リリーちゃん。気にしなくていいよ。男の服装なんてそんなもんさ」

「あの・・・こんなこと言っては失礼かもしれませんが」

「ん?なんだい?」

「アスト様。そのへんは、こう、もうちょっと神経質な方なのかと思っておりました」

「え、そうかい?そんなことないよ?」

「あ、こ、これは・・・ほんとうに失礼なことを・・・」

「いいって、いいって、ほんとに気にしてないから」

パトリックも交えて、アストとリリーは楽しく会話しながら服をたたんでいった。

そこへ、掃除をサボっていたパトリシアがやってきた。

「ふわああ・・・だるいったらありゃしない・・・あっ・・・」

パトリシアは背伸びしながら洗濯室の前を横切ろうとしたが、リリーとアストが楽しそうに会話しているのを目撃してしまった。

パトリシアに気づくアスト。

「おお、パティ。君も洗濯手伝ってくれないか?」

「き・・・き・・・き・・・」

「ん?」

アストは何か嫌な予感がした。

が、遅かった。

「どうなされたのですか?パトリシア様」

リリーは心底楽しそうに笑顔でパトリシアに応対した。

「き・さ・ま~~・・・

よくもアストさんと・・・」

パトリシアの目はらんらんと怒りの炎を燃やしている。

「わーーーー!やめろ!パティ!」

怒怒怒(どどど)ファイヤああああああああああああ!!!!」

それはパトリシアの扱える炎系の攻撃魔法だった。



アドルノ邸の火事は正気を取り戻したパトリシアが自身の水系魔法で鎮火させることになった。


「パティ~・・・

おまえ・・・

ひとんちを放火してんじゃねーよ!」

「ごごごご、ごめんなさい!」

パトリシアはアドルノに向かって仏像を拝むみたいに両手のひらを合わせてひたすら平謝りしている。


「あーあ・・・俺の服が・・・消し炭だぜ・・・」

アストはちりぢりになった髪の毛のまま、自分のだか誰のだかわからない服の消し炭を見て涙目になっている。

「ふ、服はわたしが全部弁償します!それくらいのお金ならあるし!」

「頼む」

アドルノは無表情で答えた。


しかし、なぜか頬を真っ黒にさせているパトリックはひとりだけ感動していた。

「すごいです!パトリシアさん!あんなすごい魔法、初めて見ました!」

「え、そ、そう?ならいいかな?」

「いいわけねーだろ!」

というのはいつものようにひたいに青筋をたてているリカルドだ。

「うわあああああ、ごめんなさいいいいいい」

パトリシアは両手で頭を抱えてしまった。

リリーも顔中真っ黒になりながら、ひっくひっくとすすり泣いている。

「こ・・・こわがっだですうううう」

「ご、ごめんね、リリーちゃん。ほんとにごめん」

と、さきほどまでの恋敵(?)に平謝りするパトリシア。

アストはリリーとパトリシアを交互に見て思った。

リリーはまだ泣いている。

(そういやパティが泣いてるところって、見たことないな)

パトリシアは確かにおっちょこちょいで態度はでかくて女の子らしくはないが、泣いているところを見たことがない。

どこまでも男っぽいというか。

いや、体つきだけはものすごい女だけど。

アストの頭の中に、あの前に突き出た巨乳、そしてドレスのスリットから覗いている白い太ももが浮かび上がった。

そこまで考えて(なんて不純なことを)と思ったアストはひとりで頭をぶんぶんと振ったのであった。

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