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公国の訓練事情

ところ変わってここはハミルトン公国。

アストが冒険者のメンバーから追放されたあと、ハミルトン公国もロズベルグ連邦にならって各地に点在するダンジョンの閉鎖を決定した。

これにより、事実上失業した冒険者たちは、それぞれの母国に帰るか、さもなければハミルトン公国の軍隊に所属することとなった。

アストを追放したマックスたちも例に漏れず、軍人になったのである。


ある日のこと、軍では演習を行うことになった。

鉄砲や大砲の実弾は使わない演習である。

敵との戦闘を見越して模擬戦用の陣地を構築し、白組と赤組に分かれて戦争の実践訓練を行うことになった。

マックスたちもこれに参加したのである。


マックス、ヒュルケン、以上が男二名。

女は、アストの水晶玉の攻撃がかすって怪我をしたものの今ではすっかり回復して復帰した魔法使いのミランと、アストの代わりにパーティーに参加することになった女魔法使いのこちらも女二名だ。


最初、演習前に、この四人は軍のどこかの部隊に所属するように言われていた。

しかしマックスはこれをいやがった。

「俺たちみたいに魔法やスキルを使える者がおまえたちみたいな雑兵ぞうひょうと一緒に戦えるかよ」

「なんだとマックス!貴様!いまは軍人なのだぞ!命令に従え」

マックスの上官にあたることになった人物が言った。

「ああ、演習には参加してやるが、俺たちは魔法やらいろんなスキルやらを使えるんだ。槍や剣を振り回しているだけのおまえらがいたら、足手まといだぜ」

「言ったな。鉄砲隊に襲われてもそう言い張れるのかな?」

「そんなの、俺たちの魔法で一網打尽にしてやるぜ」

「そうか。ならばおまえたちは四人だけで行動するがいい。あとで泣きを見ても知らんぞ」

(ふん。くだらん捨てぜりふをはきやがって)

マックスは余裕綽々だった。


演習が始まると四人は悠々と敵陣地を目指した。

今日はオーソドックスな平地戦である。

木々や大きな岩のあるところは敵が隠れていないかを警戒する。

草むらも同様だ。

いくら余裕綽々といっても、さすがに闘いなれたマックスたち、そのへんはぬかりなかった。


しかし。


「確保おおおおおおおお!」

マックスたちの近くでどこからともなく大声が鳴り響いた。


マックスは驚いてあたりを見回した。

すぐ近くの草むらの中から、鉄砲をもった兵隊たちが二十名ほど現れた。傍らには、ひとりだけ身分の高そうな服を着た指揮官らしい男が立っている。

「おまえたち、全員死亡だぞ」

指揮官らしい男はマックスたち四人のパーティーにそう告げた。

「え?え?くさむらの中から隠れて!卑怯じゃねえか!」

「卑怯とか言う暇もなく、実践だったらおまえたちは死んでたぞ。」

「ひ、卑怯だ!」

マックスは納得いっていないらしく、ひたすら吠えている。

「吠えても無駄だ。今日のおまえたち四人の演習はここで終わりだ」

「そんなああああああ!」

ミランとヒュルケンも青ざめたまま、その場に呆然と立ち尽くしていた。

「魔法が使えるからといい気になっているからそのような目に遭うのだ。時代はもう変わったのだぞ!現実を見ろ!」

マックスはそう一喝されると、それ以上何も言わず、しょげかえってしまった。


鉄砲隊の隠れていた草むらの奥から突如、ある人物が姿を現した。

その人物は、右手に、ちょうど手の中に収まるほどの大きさの水晶玉を持っていた。

「スチュワート卿!」

そのひげづらの人物を見たマックスは絶叫した。

スチュワート卿、アストが所属していたギルドのギルド長を務めていた人物だ。

「おまえたち、そんなことでは戦場ですぐに死んでしまうぞ」

そう言うと、スチュワート卿はさっさとどこかに向かって歩いていってしまった。


その横で、アストの代わりにマックスたちのパーティーに加わることになった新しい魔法使いの女だけは、本気で悔しそうに、歯ぎしりしていた。

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