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同居と子作りと!?

アドルノの屋敷には居候がやたらと多くなってしまった。


「この度は、我々がアスト様の命を狙ったのに、逆に命まで救っていただいて、おまけにこんな立派なお屋敷に居候させてもらえて。なんとお礼を言っていいか。自分には過分でありまして。ほんとうに、なんと言っていいのか・・・」

アドルノの家に着くなり、パトリックは床に頭をつけて土下座し、ひたすら謝り続けた。

アドルノは平常心で彼を諭した。

「頭をあげてくれ、パトリックくん。ここは今日から君の家になるのだから、堅苦しいあいさつは抜きだ」

「いえ!それではわたしの気持ちが納得いたしません!」

リリーもパトリックの隣で土下座している。

「ほんとうに、申し訳ありませんでした。いえ、あの・・・ありがとうございました」

リリーも頭の中がパンクしそうなのかもしれない。

「わたし、アスト様のためなら、なんでもいたします!なんでも!なんでも!」

パトリシアはその言葉になんとなく引っ掛かるものを感じた。

「ちょっと、アストさんに手を出したら、ただじゃすまないよ」

パトリシアは顔は笑っているが、おでこに青筋をたてて口はわなわなと震えている。

「そんな!手を出すなんて!お手伝いをするだけです!どんなことでもします!」

「どんなことって、たとえば、なんだい?」

パトリシアはなおも顔は笑っているが、態度が笑っていない。イライラしているのか、組んだ腕の左手ひと差し指をとんとんと落ち着きなく動かしている。

「アスト様の身の回りのことだったらなんでもします!掃除に洗濯!もしもアスト様がお望みとあれば、夜のお相手だって」

「はあああああ!!なんですってーーー!!このアマああああああ!!!」

パトリシアはリリーにつかみかからんばかりの勢いでドタドタと彼女に近づいていった。

「やめろ!」

それをアストが間に割って入って押し止める。

が、パトリシアの勢いが強すぎて、パトリシアに押されたアストはリリーの体のほうに覆いかぶさる形で倒れてしまった。

「うわ!」

「あれ!」

「いたたたた」

「ああ!アストさん!申し訳ありません!」

そう言ってパトリシアは急いでアストを抱き起こそうとしたが、そこで彼女が見たものは。

「ひ、ひあああ!!」

倒れたアストの手元は、ちょうどリリーの服の胸元のところにあって、リリーの両胸をしっかりと両手でつかんでしまっている格好になっていた。

「あ、あ・・・アストさん!」

「いってえええ・・・うわ!」

体勢を建て直したアストは、自分の手元を見て思いっきり手を引っ込めた。

パトリシアはアストのうしろで歯をぎりぎりと言わせ、目元はらんらんと怒りの炎に輝かせている。

パトリシアはつり目が印象的な元気な女性という風情だが、リリーはまだ子供のような華奢な体で、しかも垂れ目で胸も小さいので、本当に子供っぽく見える。

そこへアドルノがパトリシアにとって余計なことを言う。

「おおそうだアスト。おまえ水晶の継承者として跡継ぎをもうけないといけないだろう?リリーにお願いしたらどうだ?」

実に飄々と言うアドルノだったが、

「いでででで」

アドルノの左右の口許は、アドルノのすぐ後ろにいたパトリシアの両手で思いきり横に引っ張られてしまった。

「どの口が言うんですか!どの口が!」

「リリーくん。大丈夫かい?」

自分が押し潰してしまったリリーのことを心配して、アストは右手をリリーに差し出した。

「いえ、大したことありませんので。これでも体は丈夫ですから」

と言って、アストの差し出した右手に対して自分の右手を差し出すリリー。

リリーの手を取りながらアストは心の中で思った。

(体は丈夫といっても、こんなに華奢じゃないか)

「あ、ああ!アストさんの手を!ムキーーー!!」

パトリシアは怒り狂っている。

「ふぉい。おふぉるのはひいはな、そのへをはなひてはら」

パトリシアはアドルノの口を引っ張ったままだ。

「あ、すみません、アドさん」

急に真顔になったパトリシアはアドルノを解放した。

「アド」というのはアドルノの愛称だ。パトリシアが好んでそう呼んでいる。

そこでようやく事態を見守っていたリカルドが口を開く。

「なあ、おまえたち。おまえたちにアストを殺すよう指令を出したのはプロスト総長なんだろう?なんで最後まで黙ってたんだ?」

パトリックとリリーは床に正座したまま顔を見合わせた。

「俺は、黙っておいたら、田舎の両親と、兄弟たちの面倒を一生見る、と言われました」

「あ、それは、わたしも、同じです」

(なるほど。ふたりは家系が貧しいわけか。総長はそこにつけこんだわけか)

アストはようやく納得した。

「けっ。ひとの弱みにつけこみやがって。きたねえやろうだ」

リカルドはいまいましそうに歯を食いしばると腕組みをして顔を背けた。

「それより!」

今度はパトリックが大声をあげた。

「アスト様!俺を!俺を、弟子にしてください」

「でしいいい!?」

あまりに突然のことにアストは素っ頓狂な声をあげた。

アストたち四人はパトリックの急な申し出に目をぱちくりさせてそれぞれ目を見合わせた。

「俺、生意気にも、勝てっこないのにアスト様に決闘を申し込みました。そんでご自宅まで行ってまたやられて。おまけに最後は命まで助けてもらって。おらあ、もう感動しちまって」

パトリックは鼻水と涙をずるずると流している。

そしてなぜか口調が急に田舎くさくなった。

「ど、どうか!おらを弟子にしてくだせえ」

そう言うと、パトリックはアストの足にしがみついた。

(はあ。やれやれ。なんだかわけのわからん展開になってきたな)

そう思って、アストはアドルノ邸の天井を見上げた。

豪華なシャンデリアがひときわ光を放っていた。

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