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会議

アドルノは会議室のドアを開けた。

昨日も朝から会議、午後からは決闘。

そして夜にはどんちゃん騒ぎをしたというのに今日も朝から参謀本部にはひとが大勢詰めかけていた。

相変わらず狭い本部。しかも木製の建物の床はところどころわずかに隙間があったりする。ちょっとボロい。

この国の軍隊事情をよく表している現場なのかもしれない。

白いひげづらの参謀本部長であるプロストが口火を切った。

「さて、本日は他でもない。我が国では革命勢力に対する脅威から国を守るためにここまで軍の修練に励み、場合によってはハミルトン公国への宣戦を布告せんものとここまで活動してきたわけだが、以後はハミルトンへの宣戦は布告しない方針でいこうと思うが、皆の者はどう思うか?」

急なことだった。

アドルノは難しい立場に立たされている。

アドルノはプロスト総長の属する部族との調整役を買ってでている。

どういうことか説明しよう。

このロズベルグ連邦は三つの部族が連合して共和制を敷いている国家だ。

三部族を統べる、いわば大統領の職務を遂行する人間は三部族の中から順番に選ばれ、参謀総長も同じタイミングで常に交代してきた。

統領と参謀総長が同時に同じ部族から選抜されることはない。

いまは参謀総長をプロストが所属する部族が勤めており、統領はプロストでもアドルノでもないもうひとつの部族の者が勤めている。

今回の革命軍に対して軍備増強を図るためにもプロストの部族との交渉にあたったのはアドルノだ。

その部族から選出された参謀総長のプロストが、今度はハミルトンへの宣戦は布告しないと言い出した。

アドルノは軍備増強の際にはプロストの部族から相当の譲歩を引き出した立場だ。

なにしろアドルノの所属する部族は三部族の中でも国内で最も人数が少なく、国内での発言には常に気を遣ってきた立場だ。

いまここでプロストの言い分にさらにケチをつけることは、プロストの部族へのさらなる要求ということになり、自らの所属する部族への顔向けがしにくくなる。

つまりアドルノの参謀次長としての立場もあやうくなるかもしれないのだ。

アドルノは自分の身分が降格させられることくらいは別になんとも思わないかもしれない。

しかし、この国を守るためには、まだやらなければならないことが多すぎる。

ここでプロストに反抗することは、長い目で見れば自国の不利益になりかねないのだ。


アドルノは沈黙している。

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