第2話 揺るがぬリアル (前編)
景色からは桃色は消え、早くも緑が目立ち始めた。気だるい体を何とか前へ運ぶ早朝。
「はぁー…」
入学式の一件からはや1週間、全く見慣れていない通学路を自転車で通学中に我慢できずにため息をつきながら進んでいく。
別に坂道が辛いとか朝が苦手とかでは無い。
これから始まる生活を思っての事だった。
実を言うと入学式から5日の間俺は学校に行っていなかった。いや"行けなかった"が正しい表現だろう。
入学式が終了し、それぞれが参列者と帰路に着いていく。
そんな中俺は1人最寄りのバス停に向かった。
晴れて高校生になったのだが、我が家の馬鹿げた家訓によって一人暮らしを余儀なくされてしまったのである。
そうこうしてるうちに一人暮らし用にと両親から与えられた住まいに着き、明日からの生活を考え、どんよりした気持ちで夕食をすませた。
なんだか気だるい…心做しか足取りも重いような気がしてきた。
妙なところでプラス思考な俺は、
「明日になれば嫌でも学校に行くだろう。」
と結論付け、就寝のための用意を終えベッドに潜り込んだ。そこまでは覚えている。
しかし昨夜のプラス思考だと考えていたものは、ただ思考を放棄したが故に半ば投げやりな、適当なものだったと知るのは次の日の早朝のことであった。




