第0話 プロローグ
社会人4年目の春
こんな事になるのならあの時こうしていれば良かった、等と考えても目の前の状況は変わることは無かった。
俺は雨で桜が舞う間も無く地面に激突するようなそんな帰り道に、自分の過去を振り返るしか出来なかった。
現実というものは非情である。現実は厳しく辛い。劣悪な環境に身を寄せていて、少しでも夢を見れば「現実を見ろ」と声を揃えて喚き。それがあたかもこの世の理と言わんばかりなのである。
そんなことをダラダラと考えながら学校に向かい帆を進めていると「おーい!」と背中に声を投げつけられた。
やめてくれ、せめてもっと近くに来るとかさ、なんなら声をかけないでくれ。
と考えている途中でその声の主に肩を掴まれた。自慢ではないが俺はあまりガタイは良くない。ランクで言えば中の下…いや、下の上くらいなのである。そんな俺の肩を掴んでブンブン振り回されるのだから溜まったものでは無い。
「やめてくれ。俺はお前みたいに体だけが取り柄じゃないんだよ。もう少し賢人をいたわってくれ。」
面倒だが仕方ない。対応しよう。これ以上肩を掴まれたらはずれちゃうし。
「あっ!ごめんな!アキの体がそんな大病だったなんて…。あと余命ってどれくらいなんだ??」
目をキラキラさせながらこっちを見てくる。
「そもそもなぁ、高倉。俺の名前はアキじゃねぇ…なんでそんな根本的なところから違っちゃうんだよ。あとなぁ『賢人』って病気じゃ無いからね??」
目がキラキラしてたのは気のせいだと思いたい。そもそもこいつと出会ってしまったのがこの俺、「双葉秋夜」の人生設計上での大きなミスのひとつなのである。
あれは入学式の日のことだった。