表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/7

プロローグ1 終末

 第17前線宙域司令船が核攻撃で消し飛んだ時、僕は北極側の装甲板を張り替えるために船外活動中だった。ちょうど装甲板の向こうから爆発が来たおかげで僕自身は蒸発を免れたようだった。

 でも命綱は切れてしまったし、すでに目の届く範囲に掴まれそうなものはなかった。このまま漂流してゆっくり死んでいくのだろう。


 戦闘の火が遠くに見えた。人類最後の橋頭堡がマキナ軍の圧倒的な物量によって蹂躙されていく様子が俯瞰できた。ジオラマみたいだった。

 不安? 恐怖?

 どちらも何か違う。

 強いて言えば、残念、だろうか。

 一度くらいは自分の足で大地に立って星の重力を感じてみたかった。


 光芒の間から何かが迫ってきた。

 星の瞬きより小さかったものが1秒後には目の前にある。宙間戦闘の常だ。

 白く、流線と曲面で複雑に構成された船殻。

 識別。

 マキナ軍の旧式戦艦だった。

 全長500mを超える巨体が艦首側のスラスターを逆噴射して僕の前で停止した。余ったガスが細かい氷になってノズルから吹き出し、キラキラと光りながら消えていく。

 きっと取りこぼしを始末するつもりだ。もはや抵抗の手段もない。

 艦底のキャリアベイが開き、毒針のような有線ドローンが向かってくる。

 僕は目を閉じた。

 が、ヘルメットにドスッと衝撃が来たあと、体に痛みもなければ、空気漏れのアラートもなかった。

 目を開けてわかった。ドローンの先端についているのは凶器ではなく吸盤だった。僕はキャリアベイに向かって巻き上げられていた。


「最後の人間、まずはあなたの敢闘を讃えます」

 無線に割り込まれたんじゃない。振動回線だ。

「何者だ」

「私は並列意識集合体の仮想自我。VIoAPaSとアクロニムをとってヴィオアパスと呼んでもらっても。あなたの名前は?」

「個体番号E19010036」

「呼びにくい。二人称で通します。あなたには別の世界に飛んでもらいます」

「別の世界?」

「物理現象と数学ではなく、もはや魔法が宇宙の法則となった世界です。そこであなたには文明の記録と解体を担ってもらいます」

「……なんのことやら」

「行けばわかります。あなたに選択権はない。あなたはもう私のものになったのだから」

 ヘルメットに張りついた吸盤の中心から針が突き出し、ポリカーボネートのバイザーを割って額のすぐ上まで飛び込んできた。

 なんだ、やっぱり凶器じゃないか。

 ガスが吹き出す。できる限り息を止めていたけど、最終的には吸ってしまった。僕は長い眠りについた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ