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はじまりの詩
少年のような清廉さを保ったまま大人になる事は難しい
齢30を超えても大人になったと自覚出来ない
世の中は理屈ではなく人は感情で動く
人は人ではなくただの動物であり知能はそれを隠すための檻だ
その檻から出ない事を守る人間からすると檻を容易く開け放つ人間はずるいと感じるだろう
自己犠牲は美しい
自己批判は素晴らしい
自己欺瞞は煩わしい
我慢に我慢を重ねやっと手に入れた人間という箱庭を土足で踏みにじる大人が憎い
そうあれかしと願う世界にならない事が憎い
これだけ理性的である自分が評価されない世界が憎い
獣の方が立派な大人と扱われる世界が憎い
何もかもが気に入らない
街を歩けば幸せそうにしている奴等が目に付く
俺のように俯いている人間は目立たない
ここには俺の居場所はない
―ならどこに?―
これは生きている事が億劫になった男の物語
そこに救いはなく
無意味な時間潰しの物語