無
誰かをただ一身に愛したかった
ただ純粋に誰かを想いたかった
愛を題材とした作品を見ても
大勢の人のように泣けない自分が空しくて
その空しさで泣いた夜
欠陥品である自分が大勢の人に囲まれて
生きていかなければならない苦しさに泣いた朝
幸せになりたい、そんなものじゃなく
ただ無邪気に誰かを愛したい
自分のどうしようもない無情さを埋めたい
心がさけんでいうことをきかない
愛したことがないわけじゃない
手をつないで、抱き合って
この時間が永遠にあればいいのにと願った夕焼け
でも、自分にない強い感情に
怖くなって突き放した夕闇
自分の薄っぺらさに気付いてもなお
誰かを愛し愛されたいと願うことが
罪のように思えて身動きがとれない
そんな自分と別れるにはどうしたらいい