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ハウル・アンセスター  作者: ありき かい
第二章 露呈
51/57

2.


 そう、すでに三年が経っているのだ。


 それはタロウが亡くなって四年近い日々が過ぎ去ったことになる。


 ぽかりと空いた穴を気にしないようにしていたわけでも、それを口実にしていたわけでもない。

 はじめは気楽に考えていた。

 どうってことの無い、日本という国からアメリカに変わっただけさ。

 そんな風に考えていた。


 こんな自分でもちょっとした小間使い程度の役割ができると思っていた。

 潜入取材だとか密着取材は、どうしても私の正確上、合わないから違った視点で、側面でひとつの物語を語ろうとしていた。

 そのためには、やらなければならないことがあった。



 誰もが、名を欲しがる。

 誰もが、認めて欲しいと望む。

 誰もが、それらに値していると、値すると信じている。

 それは私もそうだ。

 悲しいほどに、隠しようもないほどにそうなのだ。



 ダイアナに私ができることをするとメールやらボイスメッセージで伝えた。

 しばらくは何の音沙汰もなかった。まるでそれがふつうだったかのように、連絡はなく、ロレインですらその名前を口にしようとしなかった。

 ようやくダイアナが返事を携えて目の前に現れた。

 元のようにはいかなかった。

 でも、懐かしさが緊張感を取り除いてくれた。ただ時間がなく、返事を聞くだけだった。


「それで、ケイにはタウス・プリモの話を書いてもらいたい」


 カラカラになった咥内が言葉をもつれさす。

 それへの返事は決まっているはずだった。


「考えさせてくれ」と。


 なのに、私は首だけを上下に振っていた。


「友だちだと思っているのに、おまえは汚すのか」


 私は私自身に、言いようのない憎悪を感じた。どうしようもないくらいに、吐き気を催す。

 それでいて、痛い哀しみがこみ上げてきた。

 ただただ、帰り道に相応しくない、路地裏で限界に達した感情を濁流のようにするしかなかった。




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