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ハウル・アンセスター  作者: ありき かい
第一章  真実
41/57

18.7


 映像はリジー・バンクスへと変わる。


 彼女が公開している情報に、“アビリティーズ”との深部関係は言及されていない。

 けれど、有名支持者とのショット画像や交流情報は頻繁に上がっている。彼女自身、宣伝塔な役割を担っているような発言を繰り返してもいる。また、相談窓口的なものですらもある。


 毎日、誰かの口から発せられる名前の上位に、リジー・バンクスが入っている。


 検索エンジンで日本語でカタカナひらがな問わずに、りを入力すると予測検索に真っ先に上がってくるし、それはここアメリカでもそうだ。Rもしくは、Lを入力すると「あなたがお知りになりたいのはリジー・バンクスでしょうか?」と。



「こうして切り取られると、なんだか……物足りなく感じるわね」


 水を差し入れしてくれてから、横で一緒に観ていたロレインは言う。その口調や表情は、期待外れな映画を観たときの人々のようだった。


「思い出は美化されるからね」


「そうね。そのときは精一杯でどうしようもないけれど、過ぎてしまえばそんなものかって思うのよね。いつしか、あの時が儚くて美しいとすらね。ドメスティック・バイオレンス効果よね」


「それってどんなの? 誰が論文とかで上げたの? 取り寄せて読める? ロレインだったら、いや待って。読めるかな、難解だったら時間かかり過ぎるな。依頼はどこに出せばいいんだろう」


「あははは! 必死すぎっ。そんなのジョークよ、ジョーク」


 ロレインはツボに入ってしまい、ずっと笑い転げている。

 私は本気でそんな検証があって、研究結果を報告されたのだと信じ切っていたのに。顔が赤くなる自覚から、ロレインの真っ白な頬をつねって仕返しをしておいた。


「ほらね? ドメスティック・バイオレンス効果はこうして広がっていくの」


 嬉しそうにそれを実証してみせて、彼女は立ち上がってお気に入りのカクテルを作りにいった。



 まるですべてを吹っ切れているように見える。

 安心できないけれど、過保護になりすぎてもいけない。

 一番厄介な時期でもある。


 だって私もそうだったから、タロウを亡くして入院をしていたときの理由はまさにそれだった。

 ロレインは医学に精通している。だからと言って、素人の私がその真似事をしても馬鹿馬鹿しい、悲惨な結果になるのは目に見えている。


 じゃあ、ただ放置していて何かあったときに涙を流して悼むしかしないのは嫌だった。勘違いだって突き飛ばされて、歯牙を見せられた方がマシだ。

 ケアされたからこそ、その恩返しをしている。ロレインはあまりハウスクリーニングを利用しないようで良かったとも思う。恩返し行動の理由にもなるし。



「ケイが言っていた人物を調べてあげなきゃね。まあ、写真映りでどうとでもできるから、さっきの人物に似ているかどうかはわからないけれど」


「“アビリティーズ”のリストアップってダイアナの会社以外に誰かしていないの? ロレインの弟さんとかさ」


 日常は戦場並みに地雷が埋まっていると遺したのは誰だっただろうか。

 それとも物語の人物が言ったのだったか。

 忘れたけれど、確かにそうだと思った。


 呆れてしまうくらいに、人付き合いの上手い人の付き合いなどを見聞きしておくべきだったと実感した。

 それを実践できなくても、会話の糸口とはどういう瞬間に得て、地雷に触れてしまいそうなときの行動はどうすべきなのかと知っておくにこしたことはない。




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