あめのひ
自分で思ったよりは早く投稿できました!
七つになった。
それ自体にあまり感慨は湧かない。
昨日関わってしまったことは祖母に知られてはいないし、変わったことと言えば、言いつけの内容くらいだ。
祖母は私に、「味方を作りなさい」と言った。
小さいモノでもいいから、いざとなった時に自分を守ってくれるモノを見つけろ、ということらしい。
余ほど仲が深まったモノとは契約を交わし、黄泉路を共にすることもあるという。
それを聞いた私の頭を、ふと、昨日の白い神様がよぎった。
(…きょうはあえるかな)
そんなことを考えていたせいか、祖母の話を話半分できいてしまって、怒られてしまったのは彼には内緒だ。
◇
「雨を創った神様はね、ぼくの友人なの」
昨日と同じ場所にいた神様と並んで、傘を打つ雨の音を聞く。
彼は昨日よりずっと小さくなっていた。
なんでも、雨に濡れたくないからだそうで、絵本みたいな大きな葉っぱを傘にしている。
「すごく明るいひとでね、ぼくみたいに悩むこともなくていつも笑ってるんだ」
そう話す彼の横顔からは、今日もあまり感情はうかがえない。
昨日のお日様みたいな笑顔が見たかった。
「ふうん」
つま先で水たまりをかき混ぜつつ相槌を打つ。
…雨を創った神様って、明るいのか。
なんだか、イメージと違う、というか。
小さく首を傾げていると、足元で小さい悲鳴が上がった。
いつの間にか近づいてきた彼に、水たまりの水をかけてしまったらしい。
「あ、ご、ごめん」
あわてて謝ってハンカチを取り出し、少し考えてから傘ごと彼を掬いあげた。
脇で自分の傘を固定して、手の上の彼をそうっと拭う。
少し丁寧過ぎたようで、「うひゃあ」とくすぐったそうな声が上がった。
しっかり拭いてから肩に乗せると、彼が不思議そうに首を傾げたのが分かった。
「…わたしのかたにいたほうがぬれないんじゃない?」
そう言うと、納得したような気配が伝わってくる。
肩の上でもぞもぞと動いて腰を落ち着けると、足をぶらぶらと動かし始めた。
どうやら人の肩の上というのが新鮮らしい。
…それはいいんだけど、こっちも生き物(?)を肩に乗せるなんて初めてだから、動く感覚がどうにもこそばゆい。
私が少し身じろぎすると、彼が「どうしたの?」と聞いてきた。
「んー、じぶんからいい出しておいてなんだけど、ちょっとこしょばいなぁっておもって」
「なら下りようか?」
素直に吐露すると、彼から自分が濡れることなんて気にもしないような言葉が返ってくる。
思わず苦笑して、手をあげて彼の頭を撫でた。
「んーん、へいき。それに下りたらあなたがぬれちゃうでしょ」
「濡れるのは嫌いだけど、きみが嫌ならいいんだよ?」
「いやじゃないからいいの」
半ば強引に押し切って、彼の頭をまた撫でてごまかす。
少し不思議そうではあったけど、そんなものかと納得してくれた。
彼はとても優しいと私は思う。
昨日の言葉もそうだし、今だってそうだ。でもそのせいで昨日みたいに悲しんだりしているのかと思うと、少し胸が痛い、気がする。
そこまで考えて、ふと疑問に思った。
胸が痛いのはどうしてだろう。
こんな感情、私は知らない。
―――だが、この感情の名前を私が知るのは、もう少し先になる。
ここまで読んで下さって、ありがとうございました。
この小説は多くとも10話ほどでの完結を目指しています。