09 味方艦隊
辺りを警戒しながら航行する私達だったが、突如として緊急連絡が入る。
「周辺宙域を偵察していた部隊より入電です、前方宙域で我々以外の味方艦隊と敵艦隊が交戦中とのことです」
この報告に私は顔をしかめる。
前回、前々回と勝ったと言っていい戦いをしてきたとはいえ私達の艦隊には厭戦気分が広がっていた。
そして今度も勝つ保障などどこにも無いのだ。
「……俺たちの艦隊は味方艦隊を救援行動に出るぞ、隊列を保ったまま全速前進だ」
アドルも随分弱気になってきてるようね……。まぁ向こうはもう半日以上戦い続けてるようだしそれも仕方ないか……
でも指揮官が弱気を見せると艦隊の士気が下がってしまうわ、それを知らないアドルではないと思うんだけどね……
そこに入った更なる緊急連絡は、私達の士気をさらに下げさせるのに十分だった。
「偵察部隊より、後方に船速の速い艦を中心とした艦隊が接近中との事です」
相次ぐ悪い報告は私の気分をさらに盛り下げた。前方と後方から敵に挟まれていることになる。
どっちの対処をするにしてもいろいろとやりずらいのは確かだった。
「これは……敵の挟み撃ちにあったの?うまく逃げられたように思えたけど実は誘い込まれていたのかしら?」
「私達は取る手は、1.このまま前進を続けて味方艦隊との合流を優先する、2.合流は後回しにして後方の敵艦隊を撃退する、3.別方向に進路を取り戦闘せず離脱する、このうちのどれかですが……」
「まず3を取ることはありえないでしょうね、心情はともかくとしてアドルは味方艦隊との合流指示をギルドから受けているわ。それを無視することはないわね」
「とすると1か2かということになりますが……」
ヤスコと今後の方針の予測を話し合っていた所にアドルからの指示が飛ぶ。
「前方の味方艦隊との合流を優先する。合流後、まず前面の敵艦隊を撃破し、返す刀で後方の敵艦隊を撃破するぞ」
さすがアドルね……疲れているように見えても指示は的確に思えるわ。
ここで後方の敵艦隊を優先するとたとえ撃破できても前方の味方艦隊の失われる船は増えるだろうし、敵艦隊はまともに戦わず私達の足止めに徹する可能性もある。
「後方に感応機雷を発出しろ。少しでも後方敵部隊を足止めするぞ」
その指示により私の船は手持ちの機雷を全て吐き出す勢いで後方に機雷を発出しながら前方宙域に向かって行く。
そのまま味方のいる宙域にたどり着いた私達は味方艦隊を発見する。味方艦隊は明らかに劣勢であるものの、倍以上いるとみられる敵艦隊相手に善戦を繰り広げていた。