表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
63/66

62 宿

 アンデッドの警備兵の審査を無事に終え、私達はキュエルシティーの中に入る。

 その警備兵が発する声は聞いているだけで寒気がし、姿は視界に入るだけで不安になるような感じにさいなまれたが審査自体は何事もなく終わった。


 無事に入国した私達は大通りを道なりに進む。

 街中には活気が殆ど無く、時折見かける人々の表情も暗く、最低限の用事を済ませると足早に通りを移動している。

 変わりに多く見かけるのはアンデッドの警備兵だ。城壁にいた異形の者……デスナイトと呼ばれる者達と同一のアンデッドだろうか?恐らく定期的に巡回をしているのだろう。

 ふと視線を上に逸らすと遠くに城壁の上で同じように警備をしているデスナイトが見えた。

 時折すれ違う人々はアンデッドの警備兵をみると露骨に顔をそらし、駆け出すように通りすぎていた。


「意外と秩序だってますね。特に混乱とかも起きてなさそうに見えます」


「そうですね」と、エリンが言葉少なめに答える。やはり過去に滞在したことがあるだけに今の状況との落差にいろいろと思うところがあるようだ。


「エリンは何度かこの都市に来たことがあるという話だけれど、今の状況と比べてどう思う?」


「……はい、とても活気が無くなってます。日の高いうちは人々が沢山往来していましたし、呼び込みの声なども数多く聞こえていました」


 今の状況とは大違いね……。

 まだまだ恒星が沈むまでは数時間はあるというのに、まるですっかり日が落ちてしまったかのように人通りが少ない。


「恒星が沈んでしまう前に宿を探しておきましょうか」


 ヤスコの最もな意見で私達は宿を探して進む。

 そのまま大通りを進むとやがて宿が見えたらしくミーナが馬車を止めた。


「エリン様、ヨシコ様、ヤスコ様。今夜はここに泊まりましょう」


 ドアを開け食堂と受付カウンターを兼ねた一階に私達が入ると中で食事を摂っていた幾人かが私達の方に視線を移したが、それも一瞬のことでスグに視線を元に戻した。

 宿はあまり上等なものでなく薄暗く、薄汚かった。

 現実世界リアルの旅館やホテルを知っていれば間違いなく入るのがためらわれる場所だが、この惑星ホシでは一般的なのだろう。

 その床は薄汚さもあるが私達……主に私とヤスコが足を進めるたびにギシギシと嫌な音を立てる。


 これって私達の体重がこの惑星ホシの標準な人間より重いって事よね……。


 私達の骨格は金属でできているのでそのせいだろう。特に私はヤスコのボディより耐久値が高いボディを使っているためより重いと思えた。

 そして受付カウンターの奥にいた腕っぷしに自信のありそうな男が私達に声を掛ける。


「……泊りか?それとも食事か?」


 現実世界リアルで有ればとても客に対する態度ではない仏頂面で声が掛けられる。


「泊まりです。とりあえず一泊で、二部屋お願い出来ますか?」


「食事はいるのか?夕食と朝食は別料金だ」


「食事は二人分のみで、夕食と朝食をお願いします」


 宿屋の主人だろうか?その男に言われるがままミーナが料金を払うと二階の奥の部屋を指定された。

 そしてそのまま階段を上がろうとすると床よりさらに脆いのだろうか?私達……主に私だ……が足を進める度に階段が上げる悲鳴にも似た嫌な音が響き渡る。


 やだ……、途中で崩れたりしないわよね?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ