06 撤退
「お姉様、やりましたね!」
「えぇ……とりあえずは勝ったといっていいみたいね」
「敵が艦隊を二分して挟撃しようとしていた救われましたね、船速が速いことを生かして他の宙域にいると思われる敵が合流するまで足止めに徹していたら危なかったかもしれません」
「たしかに、もし後続部隊が来ていたとしたら危険だったわ」
「敵の指揮官はおそらく大規模戦闘が不慣れだったのでしょう。それに救われたような感じです」
「とりえず運が良いのか悪いのか……私はあまり運の良さには自信がないのだけれど。それにしてもアドルの指揮はさすがね、的確だったわ」
「運はただやってくるのを待つのではなく引き寄せるものですよ、お姉様。そしてお姉様にはその能力があるんですよ」
「あら?私にいつの間にかそんなスキルが?この世界にそんなスキルあったかしら?」
そういって私が微笑むと、
「きっと運営しかしらない隠しパラメーターかもしれませんね」
ヤスコもそう言って微笑み返して来た。
ようやく一息ついたところで指令室へジュピターから通信が入りヤスコがメインスクリーンに映し出す
「良い知らせと悪い知らせがあるぞ、どっちから聞きたい?」
「……そうね、良い知らせからたのむわ」
「ギルドは正式に退却を決定した、総退却だ。CーS6S星系は本格的に喪失される。将来的に取り戻すとしても長期間の準備が必要になるだろう」
まぁそうでしょうね…。
元々星系一つを手に入れるには多数のスパイを送り込んで星系の情報を手に入れつつ、他のギルドにもこえを掛けたうえで、タイミングを見計らい大兵力で攻めてようやく手に入る物だ。
「そう、それが良い知らせ?ギルドの対外的な地位は大きく下がるわね。それが良い知らせなら悪い知らせは何なのかしら?」
「宙域D-2ーL51にて合流予定だった艦隊は壊滅したらしい…それだけじゃない、5つある合流宙域にすべて強襲がかけられている…敵に合流宙域の情報が洩れているぞ」
「それって……スパイがいるってこと?」
「あぁ…そうみて間違いないだろう……今回の緊急ログイン要請をギルドに入って日の浅い奴らにも出したからな……案の定そいつらの中にスパイが紛れ込んでいたってわけだ」
「それで、これから私達はどうするの?即ギルドへ帰る?」
「いや、そうしたいのは山々だが……残存艦隊と合流することを指示された、ギルドとしてはこれ以上艦隊を失うことは許容できないらしいな」
「それって大丈夫なの?私達までやられない保証はないのよ?」
「俺もそう言ったんだがな……ギルドの返答は『少しでも多くの残存艦隊を率いて撤退しろ』、それ一辺倒だ」
そう言うとアドルは顔をしかめた。
「とりえず残存艦隊は宙域E-3-M52にて合流することになった。俺たちもそこに向かうぞ」
「……本当に大丈夫なの?その情報も敵に漏れているんじゃないの?」
「あぁ……まず漏れているだろうな、敵と戦闘になる事は前提で進むしかない」
「戦闘になれば多かれ少なかれ船は失われるわ、それなら確実に私達だけでもギルドにもどったほうが……」
「俺にいうなよ……俺もそう思っているがギルドの指示だ、どうにもならん」
その通信を最後にアドルの姿がスクリーンから消える。
スクリーンからアドルの姿が消えたあとも、私はしばらくスクリーンを見つめていた。